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ただいま。  作者: ダイナマイト・キッド
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アックス第151号感想

実は2022年2月から漫画の鬼・アックスの定期購読を始めています。

なので他所で書いている日記には、その都度の感想を載せています。

コッチに移すつもりはないので、もしご覧下さる方がいらっしゃればツイッターでも覗いて頂ければ…。

アックス創刊25周年おめでとうございます。

思えば小学校・中学校と私に深夜ラジオやマイナーな漫画を教えてくれた同級生が、当時ガロだったこの本やねこぢるさん、つげ義春さんの名前を口にしていたのが始まりでした。


それから興味が他に向き、再び振り向いた時にはアックスとして長い年月を経ていました。ツイッターを始めてから知った漫画「めだかのこ」と若草ヒヨスさんの絵に惹かれたのと、ラジオ好きということでフォローしてたドブリンさんの作品が掲載されていることから定期購読を始めて1年が経ちました。隔月で、忘れた頃にひょっこり届く小柄ながら分厚い冊子が毎回とても楽しみです。

昨年春にはそれまで応援していた夜野ムクロジさんが受賞し、今号で作品が掲載されるなど身近なようで異次元の深みにあるような、アックスはそんな本であります。

これからもそうであってほしいと思っております。


今号の表紙(「たま」の電車かもしれない、のイラストを描いた人かも知れない、と思ったらホントにそうだった)にも、漫画のところに夜野ムクロジと書かれていて、小さな文字列だけれどココに書かれるってのが凄いよなと。プロレスのポスターに出場者として載るようなもんだからな…。


その夜野ムクロジさん。

「セミの恩返し」

この人の描く、可愛くて意地悪で内気で夢見がちで、ちょっとむっちりした男の子が大好きで。色んなぽっちゃり男子を描くムクロジさんの中には、きっと無限のバリエーションがあるのではないだろうか。ぽっちゃり男子というやわらかな多面体の持つ個性的で、アクの強い外見や性格に振り回されず、そんな彼らを自在にストーリーに載せて歩かせ、笑ったり泣いたり傷つけたり慰めたりしている。

子供の頃に見たおぼろげな悪夢みたいに黒くて寂しい背景に、ぽっちゃり男子の笑顔が浮かぶ。これだけでもインパクト抜群である。

そこに白衣を着たオカッパの女性が登場する。正体はわからない。夢にまで見るほど印象的で、少年の脱皮を促すように現れたときには、もう町から去っている。ムクロジさんのもう一人の名物キャラは、この怪しげな女性博士だと思う。彼女のHPに載っている作品には、どちらも頻出する。両方いっぺんに出るのは珍しい気がする。

読み切りであることが目いっぱい活かされた、ムクロジさんの世界が詰まった作品だったなあ。


若草ヒヨスさん「めだかのこ」

私の好きなカワサキ君がフラれてしまう。好きになってくれてありがとう、なんて、片思いの破れた相手には「嫌い」「キモい」よりも残酷な言葉だ。でも、「私になってもいいことないよ」は、自分に向けて言うにはあまりに残酷な言葉だ。雪の降る夜に揺れ動く心を遂に傾けたリラちゃんが向かった先は……。

続きが気になるけど、答えが返ってくるのが怖い。フラれると分かってて好きだと伝える時の気持ちが隔月刊の次号、最終回に続く。

私は2話か3話くらいから読み始めたはずだけど、成長どころかきっと、ふたりとも大人になったんだ、と思っています。


ツージーQさん「ぶどう園物語」

年月を経て再会したミチロウさんとツージーQさん。変わらぬ熱狂と、変わった近況。既に所帯を持ち、住まいのある家まで酔いに延々と任せて歩く。足腰の限界と共に迎えた夜明けに、多摩川の河川敷で演奏していた暁のドラマーは一体どなた…?

終わったことにケリをつけ、かびくさい話と別れを告げるツージーQさんと、雨上がりに姿を消したムカデ。地べたを這い廻るような暮らしにも雨は降るし、それで固まる地盤もあるのか。夢を置き去りに暮らす心持をいつも忘れないでいさせてくれる大好きな漫画です。

勝手なシンパシー。


清水沙さん「スターゲイザー」前編。

いじめられっ子、仕返しを教えてくれる男、悲惨な生活、キョーイクインカイの息子(変態)、すさんだ生活な滲む町並み。一見すると荒っぽい画風だから、小ぎれいなものは小ぎれいに、薄汚れたものは薄汚れたものに見える。どもって言葉にならないけれど、友達より契約、と言いたいことは通じている。子供同士だからか、ハミ出し者同士だからか。

かくしあじの効果を味わうことになるのは誰なんだろう。


ドブリンさん「まちこ」

いつもながら明るく楽しく貧しく描かれる生活が見事で、大変ではあるけれど悲惨には見えない。隣の家の灯りで夕食の支度をする、というのは、どうやって出て来る描写なのか。

ロウソクや懐中電灯じゃなく、隣の家の灯り、というのが凄まじい。それでも暗くしない構成とキャラクターの心の動きに救われているのは、読者なのか作品なのか。

ポタージュをふたっつ入れたスープとリンゴと名前の由来。

老いた親の年齢や、自分の年齢を急に実感するとシュンとするし、頑張らなきゃなと思う…。

靴下のプレゼント、靴下に開いた穴、そこから思い出したプレゼントと、年月と、夢と母と。穏やかであたたかい時間で覆い被せた辛い記憶や、苦労の人生がじわりと滲んでくるようで。単なるほのぼのぬくもりマンガじゃないところに味わいがある気がする…。


今回は、まどの一哉さんの猿渡教授が居なくてさみしいな。


25年前か。

11歳か12歳だ。同級生が教えてくれたガロは、その後すぐにアックスになっていたんだな。遅ればせながら辿り着いたこの場所で私も一緒に年を取れたらいいな。


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