表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/49

9話:陰謀

オーパーツとか好きですか?w 私は大好きですw


(ここが領主の部屋みたいだな)


 一際立派で無駄に大きい扉の前に浮かびながら、竜矢は心の中で呟いた。

 魔術を使って中に入ろうかと考えていた所で、一人の兵士がやってきて扉をノックした。


「ルーデン様! 作戦の進行具合について、ご報告に上がりました!」

「よし、入れ」


 兵士はドアを開けて部屋の中へと入っていった。

 ラッキーと思いながら、竜矢もすかさず部屋へと潜り込む。


「失礼いたします!」

「うむ、準備はどうだ?」


 部屋の中は落ち着いた雰囲気でまとめられた、執務室のようだ。

 その一番奥、大きな窓の前に置かれている重厚な机に向かって書類を読んでいた男が顔を上げて言った。


 年齢は四十歳くらいの痩せた男で、神経質そうな目が射貫くように兵士を見つめている。

 例えるなら鷹や鷲のような鋭い印象の顔つきだが、その態度は自分が上位にある事を押しつけるような、傲慢なものだった。


「はっ! 現在、全体の進行率は八割といった所です。少々遅れている部署もありますが……」

「なに? 馬鹿者!! 遅れを出すということ自体たるんでおる証拠だ! 私がいよいよ世に打って出るというこの時に!」


「も、申し訳ありません! 該当部署の人員には、今夜は不休で進行に当たらせます。朝までには遅れは取り戻せるかと」

「急がせろ。間に合わなければ、相応の罰を与えると伝えておけ」

「は、はっ! それから、武器に関しての……」


(こいつがルーデン伯か・・・。絵に描いたようなエリート意識の塊って感じだね~、やだやだ)


 二人のやり取りでウンザリした竜矢は、部屋の中を見て回る。

 飾り用の剣が壁に掛かっていたり、分厚い本が書棚に並んでいたり、これと言って変わった物は置いていない。


「報告は以上であります!」

「うむ、下がれ」

「はっ! 失礼いたしました!」


 兵士が部屋を出てその足音が遠ざかると、ルーデンは不愉快そうに言った。


「まったく、無能な奴ばかりだ。まあ、私のように高貴な血筋に生まれなかったのだから致し方ない……。哀れなものだな」


(うーわー、どんだけ~)


 更にウンザリした竜矢だったが、ルーデンの行動に眉をひそめた。

 彼は書棚の本を二冊取り出し、それを入れ替えると右手につけていた指輪をかざして何かの呪文を唱え始めた。


(これ……解錠の呪文じゃねーか)


 指輪が緑の光を放つと、書棚がゆっくりと横にスライドしていく。そこに扉があった。

 ルーデンはその扉を開けると中へと入っていく。竜矢も一緒に入り込んだ。


 真っ暗な空間でルーデンがまた呪文を唱えると、あちこちに備え付けられたロウソクに火がついていく。

 ここは四畳半程度の広さの隠し部屋らしい。ロウソクの弱々しい光に照らされた部屋には、不気味な神像と祭壇が置かれていた。


(これは……! ルディヴァールの神像!?)


 地下神殿で見た邪神、ルディヴァールの神像がそこにあった。大きさは幼児ほどの小さな物だが、禍々しさは引けをとらない。


「偉大なる闇の創造主、永遠の暗黒を司るルディヴァールよ。ついに私がこの国を手に入れる時が来ました。どうか、どうか、あなた様のご加護を……!」


(こいつも邪神崇拝者だったのか……!)


 これでルーデンと、姫を生け贄にしようとした邪教徒との繋がりが見えてきた。

 そして、竜矢の頭に一つのアイデアが閃いた。

 上手くいけば、この事件の全貌を明かす事が出来るかも知れない。

 竜矢は早速、それを実行する事にした。


(声を変える魔術を使って、と……)


 竜矢は変声の魔術を自分に使うと、神像の頭の上に座りこんだ。


「私の欲望が成就した暁には、百人の処女を生け贄に捧げる事をお約束いたしましょう……! ですから、どうか……」

『その言葉に、嘘偽りはないな?』

「ひぇっ!?」


 途轍もなく低い声が神像から聞こえ、ルーデンは驚いて後ろに倒れそうになった。

 一瞬で蒼白となった彼は、全身を細かく振るわせる。

 そんな彼に、もう一度同じ言葉が投げられた。


『その言葉に、嘘偽りはないな?』

「お、おおお……! ル、ルディヴァール様! ルディヴァール様なのですね! 我が前に永遠の闇の中から現れて下さったのですね!!」


『その通り。我が名はルディヴァール、永遠の暗黒を司る神なり』

「おお……!! おおお……っ!!」


 ルーデンは歓喜のあまり、顔をグシャグシャにして泣き始めていた。

 眺めていた竜矢はドン引きである。


(鼻水まで垂らしてるよ……。ここまで効果があるとはなぁ)


 勿論、邪神の声は竜矢の声である。

 変声の魔術によって変化したドスの効いた低く重々しい声は、部屋の雰囲気との相乗効果で予想以上の効果を出していた。


『我が忠実なる下僕、ルーデンよ。汝、何を望む?』

「ははあっ! わ、私の望みはこの国の支配にございます! しかし、それで終るつもりはありませぬ! 力を蓄え、いずれはこの大陸の覇者となるのが最終的な目標でございます!」


『ほう、大陸の覇者とは大きくでたな。だが、我が下僕として大きな欲望を持つ事は誉めてやろう』

「あ、ありがとうございますっ!」


『しかし、お前は我が加護が無くともその欲望を叶えようとした様子。どうやって叶えるつもりだったのだ? この国の姫を我が生け贄に捧げる手助けをしたようだが、いくら高貴な血を引く者とはいえ、よもや一人で十分だなどと思っておったのか?』


「め、滅相もございません! ミルファルナ姫は言わば手付け金のようなものでございます。お気にすることなく、存分に弄び下さい!」


(こ、このクズ野郎……! 待て、落ち着け、俺)


 思わずルーデンの顔面に蹴りを入れたくなった竜矢だったが、ひとまず堪えて話を進める。


『……では言うてみよ、お前の欲望を叶える方法を。それが真に優れたものであるなら、加護を与えても良い』

「はっはい!! 私の計画はこうでございます……」


 ルーデンの話によると……。

 まず、隣国のパルフストとこのキドニアとの間に戦争を引き起こす。

 しかし、元々良好だった両国の関係に亀裂を入れるのは容易ではない。そこでミルファルナ姫を利用する事にした。


 既に裏で手を結んでいた軍事関係の大臣に進言させ、姫に国境沿いのこの街を視察させる事と、護衛を少数にする事に成功した。

 次に、ミルファルナ姫専用馬車の御者の家族をさらい、襲撃時に姫の一行を眠らせるように御者を脅迫。


 そして、自分が帰依しているルディヴァールの教団に一行を襲わせ、姫は生け贄として教団に渡し、護衛達と馬車は密かにこの屋敷に運び込んだのだ。

 あとは、王都にこの襲撃はパルフストの仕業だという虚偽の連絡をし、両国の関係を一気に悪化させるのだ。


『……ふむ。だが、それだけでは戦争に入る理由には乏しかろう』

「そこは抜かりありません。キドニアの有力な貴族のうち、既に半数は私と手を組んでおります。そして、パルフストにも私と手を組んでいる者が居りまして……」

『ほう?』


 パルフストの協力者とはダルゼット公という人物で、彼もルーデンと同じ教団に帰依している邪神崇拝者である。今日もその使者と情報のやり取りをしたとの事だ。

 竜矢は屋敷への進入時に見た、ローブを着た人物の事を思い出した。


(多分あいつの事だな……。しかし、こりゃ予想以上に大事になってきたぞ)


 ルーデンの話は続く。

 ダルゼットは、パルフストのラディナ姫をミルファルナ同様にさらう事に成功しており、ある場所に監禁しているらしい。ダルゼットの方では、ラディナがキドニアの手の者によってさらわれたと王都に報告する手はずになっている。


 これによって両国の姫君がお互いの国の者に襲撃され、行方不明になった事になる。

 そうして王都の軍が動けばしめたもの。両者の軍が対峙した時に、先走った一部の兵からの攻撃が『互いに』行われ、そのままなし崩し的に戦闘に突入させる。


 当然、先走った一部の兵とはルーデンとダルゼットの兵である。

 あとは頃合いを見て、予めそれぞれの王都に向かわせていた伏兵に手薄になった王都を急襲させる。どんなに堅牢な城壁であろうと、手を組んだ貴族達の兵に内側から開けさせれば何の問題も無い。


 王族を抹殺して王都を制圧した連絡が入り次第、ルーデンとダルゼットの兵は互いの王都の軍を側面から攻撃する。二人の兵達は本気で戦わせないように一芝居打たせる為、体力の温存も出来ているはずだ。


 万一不利になるようなら、ルーデンとダルゼットは隠し持っている『切り札』を使うという。


『切り札だと?』

「はい、私が若い頃にある古代遺跡を探索した際に見つけた、ロストパーツです。長らく使い方が分からなかったのですが、最近、ようやく判明しまして……」


(ロストパーツだって!?)


 ロストパーツ。

 それは、失われた超古代文明の遺産である。

 ロストパーツの研究者達は、作ったのは少なくとも一万年以上の昔に栄え、突如滅びた謎の文明だというのが定説になっている。


 かつての超大国、ソルガルド帝国の建国以前にもその存在は認知されていたが、はっきりした事は今もって分かっていない。

 その当時に発見されて使われたロストパーツは、どれも強大な力を持った物ばかりだったと古文書に記されている。


 魔力を増幅し魔術の効果を数百倍に引き上げる物や、全身を金属で作られた巨大な人造の魔獣、一瞬で十万の軍を発狂させた笛などが知られている。

 ソルガルド帝国の成立にもこれらロストパーツが使われたという。だからこそ大陸の統一という覇業を成し遂げる事が出来たのだと。


 しかし、威力が大きい反面、使う側も多大なリスクを背負う。

 増幅した魔力が暴走して敵味方合わせて百万もの大軍が一瞬で消滅したり、金属の魔獣は制御が効かなくなって突然大地に潜り始め、そこから灼熱の地下水が噴出して大勢の人間が火傷を負うか溺れて死んだ。


 笛などはもっと酷く、使い手が狂ってしまって軍を離脱。放浪しながら無差別に町や村の住人を狂わせ続けた。この使い手が死ぬまでに犠牲となった者の数は、二~三国の人口に匹敵するという。

 竜矢も知識として知ってはいるが、まだ見た事がない物だった。


(厄介なもんを見つけやがって……!)


 竜矢は歯軋りをしながらルーデンを睨む。

 そんな事は知らず、ルーデンの説明は続く。


 どうやらダルゼットの方も、ルーデンとは違うロストパーツを手に入れているらしい。この事は自分たち二人しか知らない最重要機密だという。

 危うくなっても、二人のロストパーツを使えば王都の軍を壊滅させるなど雑作もないこと。制圧した王都に凱旋し、自分たちが国の新たな支配者となった事を宣言する。


 その後、ルーデンとダルゼットは改めて雌雄を決する戦いを始めるつもりだという。

 これが二人の立てた計画である。


(要するに、二国同時のクーデターって訳かよ……。こりゃ、ミルファルナ姫を助けただけじゃ収まらねぇな)


 口の端から泡を飛ばして計画を熱く語るルーデンを冷ややかに見つめ、竜矢はこれからの行動を考えて言った。


『では、ルーデンよ、ダルゼットの居場所を教えるがよい』



謎の古代文明とかも好きです。最近の研究では色々と判明してロマンが薄れちゃってますけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ