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5話:赤き光の巨人

ちなみに、お台場に作られた1/1スケールのガンダムで18メートルだそうです。


「そこを右! 突き当たりを左! 三つ目の角を右じゃ!」


 竜矢の一撃で崩れた岩を完全に吹き飛ばした後、一行は神殿内の通路を突き進んでいた。

 竜矢は拳の一撃で、只それだけで岩をすべて粉砕してしまったのだ。


 もはや冗談の様なその光景にシェリカが呆然としているのを無視して、中へと飛び込んだのである。

 竜矢は空中を高速で飛び、すぐ後ろをスーニアが走って霊気を嗅ぎながら道案内をしている。


「うひぃぃーーーっ!」


 シェリカはというと、スーニアの背に乗ってひたすらしがみついていた。

 とにかく速い。

 馬の全力疾走などとは比べ物にならない、驚異的な速度だ。


 飛んでいる竜矢は、例えるなら放たれた『矢』だ。

 スーニアもシェリカを乗せているというのに、彼に劣らぬ速度で突っ走る。

 そして、行き止まりにあった朽ちかけた扉をその勢いのままで突破し、粉々に打ち砕いた。


「うわああぁぁっ!?」

「な、何だーーーーっ!?」


 扉付近にいた教徒たちが数人、衝撃で数メートルも吹き飛ばされる。

 入り口で発生した叫び声と扉の砕かれる音に、ゼウルの動きが止まった。


「どうしっ……!?

「おおらぁぁ!!」


 小さな疾風が飛来し、持っていたナイフを弾かれた。

 否、ナイフは刃の部分が完全に粉砕され、衝撃に耐えきれずゼウルの手首があり得ない方向に曲がっている。


 いや、手首だけではない。指や手の甲もひしゃげて手の形になっていない。

 手首から先の骨が、すべて砕かれてしまっていたのだ。

 驚く前に、その激痛がゼウルの口から悲鳴を迸らせた。


「ぐおああぁっ!! あ、あがぁぁぁ……! 手、手がぁ……」

「ゲス野郎が、ざまーみろ」

「なっ……!?」


 ゼウルの目の前に、ナイフと手を砕いた妖精が浮かんでいた。

 祭壇の近くには、三本の尻尾を持つ黄金の獣の姿。

 もう一人、傭兵らしき女が生け贄の少女の鎖を外そうと悪戦苦闘している。

 後ろ姿しか見なかったが、あれは逃げた曲者ではなかったか。


「よ、妖精と……マナウルフィ……!?」


 ギルヴァーの言葉が脳裏をよぎる。


(ほ、本当だったのか……!)


 後悔したが、後の祭りである。


「生け贄を捧げるなんて、くだらねぇ真似しやがって! 全員領主に突き出してやるから覚悟しな! おっと、動くとマナウルフィが黙ってねーぞ? 伝説の一つや二つ、聞いた事ぐらいあるだろ」

「グルルルル……」


 竜矢が外見に見合わぬ大きな声を上げた。スーニアが教徒たちを睨んで低く唸っているのが、脅しの効果を倍増させる。

 逃げようとしていた教徒たちの動きが止まった。


「それでいい。……鎖、外せそう?」


 竜矢は背後のシェリカに訪ねる。

 返事は芳しくないものだった。


「ダメです、凄く頑丈で……。鍵さえあれば……」

「聞こえたろ? 鍵を出しな」


 竜矢はゼウルを睨み付けて鍵を要求する。

 手を押さえてしゃがみ込んでいたゼウルは、懐を探って枷の鍵を取り出した。


「こ、これだ……」

「素直でよろしい」


 その手から鍵を取った竜矢は、祭壇へと近づいて鍵をシェリカに渡す。

 シェリカが枷の鍵を開ける間、生け贄にされかけた少女に微笑んで話しかけた。


「もう大丈夫だ。怪我してない? 痛いとこある?」

「い、いえ、大丈夫です。ありがとうございます、妖精様……」

「いや、俺、妖精じゃないから」

「え?」


 青ざめているが、気丈に答える少女の言葉に手をパタパタさせながら否定する。

 ここで、竜矢はようやく気付いた。

 彼女が一糸纏わぬ裸体だという事を。

 発展途上だが高貴ささえ漂う美しい裸身に、思わず目を釘付けにされてしまう。


「……リュウヤさん?」

「リュウヤよ、何処を見ておるのじゃ?」


「はっ、はい!? な、何を誤解しちゃってるのかな!? け、決してイヤらしい意味で見てた訳じゃないぞ! こ、これは、み、見とれてたんだ! 綺麗だったから!」


 言ってから、冷や汗をかく。

 馬鹿正直に白状してどうするのだ、と。


「リュウヤさんって……、スケベだったんですね」

「我が主ながら情けない……」

「あの、あまり見ないで下さい……」


 冷たい視線に、俺が悪者!? と叫びたくなるのを堪え、竜矢はゼウルの方に向き直った。これ以上、墓穴を掘らないようにする為でもある。


「さ、さぁーってと、あんたたちはお縄についてもらおうかな! そこの二人、こいつの服を脱がせて、それをロープ代わりにして手足を縛ってくれる? 拒否権は無いので悪しからず」


 神像の両脇に立っていたネディスとヴィーラに、竜矢はそう要求した。


「いいですよ~、縛るの好きですから~♪」

「ネディス、貴様っ……!」


 ネディスは明るく答え、スキップでもしそうな感じでゼウルへと近付く。

 ヴィーラも無表情に歩み寄り、ゼウルの体に手を掛けた。


「では失礼しますね~、リュウヤさん♪」

「……え?」


 ネディスの放った言葉の違和感に気付いた瞬間、ネディスの背中から黒い羽が僧衣を破って飛び出した。

 蝙蝠の羽のようなそれは、軽く羽ばたいただけでゼウルとヴィーラを連れて一気に天井近くへと上昇する。


「このっ逃がすかよっ!」

「させない」


 竜矢が追うのに合わせ、ヴィーラが右手を翳す。

 その手のひらに、横に一筋の亀裂が入る。

 亀裂が上下に広がると、そこに大きな目玉が現れた。それは凶悪に血走り、竜矢を睨みつける。


「うわキモッ!」


 手の中の瞳が、青い閃光を放った。


「のわっ!?」


 とっさに避けた竜矢の横を光が走り、それは何人かの教徒に当たってその体を焼き切った。まるで強力なレーザーだ。


 そして、壁際にあった小さな神像を破壊する。

 その瞬間、神殿に大きな揺れが発生した。先ほど竜矢が起こした振動を上回る、大規模な物だ。


「じゃ~ね~♪ 縁があったらまた会いましょ~ね~♪」

「生きていられれば、ね」


 次の瞬間、ネディスたちの姿は消えていた。

 転移の魔術か、その力を持った魔道具でも使ったのだろう。


「いかん! 戻るのじゃリュウヤ!!」


 その瞬間、天井が一気に崩壊した。

 大量の岩が神殿内に降り注ぎ、断末魔と共に教徒たちを押し潰していく。

 スーニアたちの頭上には、一際巨大な岩盤が落下して来ていた。


「きゃあああぁぁっ!!」

「いやぁぁぁぁっ!!」


 シェリカと少女の悲鳴を聞き、竜矢は全力で空中を駆け下りる。

 岩盤よりも速くスーニアたちの元に辿り着いた竜矢は、その力を解放した。


「う、おおおおーーーーーっっっ!!」


 竜矢の全身が赤い光に包まれる。

 その光は竜矢の形のまま大きくなり、巨大な人の姿を取った。

 身長二十メートルはあろうかという、赤く輝く光の巨人に。


 巨人は落下してくる岩盤を両腕で受け止め、それを盾にしてスーニア達の上に覆い被さり、彼女たちをガードする。

 スーニアも周りに金色の結界を展開し、破片や粉塵を防いでいる。

 揺れが鎮まっていくと共に崩壊も止まっていき、神殿は静寂に包まれていった。


「三人とも大丈夫か?」

「うむ」

「だ、大丈夫で……っ!?」

「私もだいっ!? ……あ、あ……!」


 シェリカと少女は呆然と竜矢を見上げていた。

 正確には竜矢の形をした、赤い光の巨人を。

 よく見れば、巨人の胸の中で竜矢がまったく同じポーズを取っているのが分かる。それを見て、シェリカが生唾を飲み込んでから聞いた。


「リュ、リュウヤさん……何ですか?」

「そうだよー。ちょっと待ってて……よっ、と」


 巨人は両腕で支えていた岩盤を右腕と背中で支えると、左手をスーニア達に伸ばしてきた。


「うむ。二人とも手に乗れ、脱出するぞ」


 竜矢の意図を察し、スーニアが手の上に乗るように二人を促した。


「はっはい! 立てる?」

「はい……何とか」

「いいか? んじゃあ行くぜ。スーニア、二人のガード頼むぞ」

「任せておけ」


 全員が手の上に乗り、スーニアの結界を確認すると、巨人は右手を頭上へと伸ばしていく。すると、右手に触れた岩が砂となって崩れていくではないか。


 そうして出来た上の空間に向け、巨人の体がゆっくりと上昇していく。

 五分ほど上昇を続けると、手の先が地上に突き出した。脱出成功である。

 月光が赤い光の巨人を照らし出すその様は、伝説かお伽話のような光景であった。


「あいつらは……やっぱ居ないか。チクショウめ」


 周囲を見回したが、ゼウル達の姿は見えない。とうに逃亡したのだろう。

 一方、手に乗ったシェリカと少女は抱き合って震えていた。

 スーニアが不思議そうに小首を傾げて聞く。


「どうした? 二人とも、寒くはないはずじゃが」


 季節的にまだ寒い時期だが、結界を張っているので寒くはないはずだ。

 が、二人が震えているのは別のせいであった。


「た、高いですぅ、怖いですぅ~~」

「は、早く降ろして欲しいですぅ~~」

「……なるほど。リュウヤ、二人は高い所が苦手のようじゃ」

「えっ? おっと、ゴメンゴメン」


 竜矢は左手をそっと下ろし、全員地上へと降ろす。シェリカと少女はようやく安堵のため息をつくのだった。






「何だ……あれは……」


 ネディスにぶら下げられたまま逃“飛”行中のゼウルは、突然聞こえてきた音に何気なく振り返って目を疑った。


 赤く輝く光の巨人が、地下神殿のあった辺りから地上に出てきたのだから無理もない。

 ネディスとヴィーラもそれを見て、さすがに言葉を失っている。


「……ホントに妖精だったのかしら~……」

「『神々の子孫』か……。本物なら、私たちもよく逃げられたものだわ」


 普段は無口なヴィーラも珍しく声を出している。

 と、ゼウルが声を上げた。


「いかん、我々の姿を探してるぞ!」

「みーちゃん、降下!」

「ギアッ」


 ネディスの背中に生えている翼が返事をして、急速に高度を落とす。

 実際にはネディスが翼を持っている訳ではなく、彼女の背中に翼を持った魔獣がへばり付いていたのだ。


 ジャロックというこの魔獣は、胴体は人間の赤ん坊サイズと小柄だが、大きく強靱な翼を持ち、その飛行能力は大の大人を五人は楽に運ぶ事が出来る。

 その姿は翼を大きく、体を小さくした蝙蝠のような魔獣だ。蝙蝠と違うのは、足の他に腕が四本もある事だ。


 ブラックビーストと比べ、かなり調教が困難な魔獣だ。これを従える事は、魔獣使いとしてのランクが上位にある事を意味している。

 この魔獣を操るネディスもまた、魔獣使いだったのだ。


 ちなみに彼女がこの魔獣に付けた名前は『みーちゃん』。

 およそこの魔獣には似合わない名前である。


「よし、このまま森の中を移動して予定地へ向かおう」

「はぁ~い」


 ネディスは巨人の目を逃れる為、森の中を飛ぶようにジャロックに命令した。

 それに従い、ジャロックは器用に木々をすり抜けて飛行する。


(伝説の神獣に、神話にのみ登場する妖精……! 戦乱に揺れるこの大陸に、何かが起ころうとしているのか? ……だが私は諦めんぞ、必ず我が野望を……!)


 砕かれた手の痛みを堪えながら、ゼウルは己が野望の達成を誓うのだった。



次回からUPする文章量が少し減ると思います。

流石に毎回この量はキツイもんがありますので(^^;;

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