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44話:狂える黄金の魔獣人


 時は少し戻る。


 城に残っていたミルファルナ姫は、突如現れた金属の球体と空に舞い上がった巨人の戦いに眼を奪われていた。

 一見すると巨人が不利のように見えるため、彼女は創造神・バルアハガンに竜也の勝利を一心に祈っていた。


(我らが大いなる神、バルアハガンよ。どうか、異世界からやって来た勇者、リュウヤ様をお守りください……!)


 そして、祈ることしか出来ない自分の不甲斐無さを情けなく思うのだった。




 一方、ラディナ姫と合流したシェリカとバートたち三人は王城へと辿り着き、ラディナを先頭に廊下を足早に歩いていた。

 そして、ある部屋の前で足を止める。


「とりあえず、二人はこの来賓用の客室で待機していてくれ」


 ラディナの言う客室は他国の重要な特使を迎えたりする部屋だが、それ故に中々頑丈にできている。

 滞在中の特使に、不慮の事故や災害で特使の身に怪我でも負わせればすべてその国の責任になるからだ。


 部屋に入ろうとした時、巨人が迷い星もろとも街の外へと落下した際の衝撃が王都を震わせた。

 思わず座り込んでしまったシェリカの上へと、振動で部屋の入り口に飾ってあった、人の頭くらいの大きさの花瓶がシェリカへと倒れ掛かってきた。


「危ない!」

「え……っ?」


 咄嗟にシェリカの体の上に覆いかぶさり、代わりに花瓶を頭に受けたのはバートだった。

 鈍い音が廊下に響いた後、床に落ちた花瓶は粉々に砕け散ってしまった。


「イタタ……大丈夫ですか? シェリカさん」

「は、はい……ありがとうございます、支部長さん。あ! 血、血が出てます!」


 バートの頬から一筋の血が滲み出てきていた。

 飛び散った花瓶の破片で切ったようだ。


「え? ああ、かすり傷ですよ」


 柔らかに言うバートは、笑顔にも何処となく影がある。

 やはり、妹を救えなかったことが尾を引いているのだろう。

 見た目よりも逞しいバートの腕の中で、シェリカは胸の奥が締め付けられるような感覚がした。


「二人とも大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です」


 ラディナが声をかける。

 立ち上がった二人は、そのまま客室に入っていった。


「シェリカ、そこの棚に薬箱がある。グランディ殿を手当てしてしてやれ」

「はい。支部長さん。こっちに来て座ってください」


 ソファに座ったバートに手当てをするシェリカ。

 それを横目で見つつ、窓に近寄ったラディナは姿の見えなくなった巨人と球体の事を考える。


(スーニア殿は異界の迷い星といっていたな……。リュウヤ殿は何か知っているのだろうか……? もし、リュウヤ殿が敗れたら……)


 最悪の結果を想定して背中に冷たい物が流れる。

 軽く頭を振って、考えを散らす。


(今は待つしかない、か……)


「二人ともココにいるように。脱出するような事になった時には行動を共にしてもらうぞ」

「はい、承知しました」

「姫様はどちらに?」

「ミルの所に行ってから、一緒に父上に会いに行く。色々と相談せねばならんだろうからな」


 ラディナが窓から身を離した時、青白い光の柱が空に突き刺さるように光り、すぐに消え去った。


「何だ……!?」

「な、なにか凄い光でしたね……」

「リュウヤさん、大丈夫かな……」


 巨人の胸を貫いた光とは知らず、光の残滓がチラつく空を不安気に見詰める三人だった。




 再び、時は戻る。


 巨人の胸に、ぽっかりと大穴が開いている。

 動きの止まった巨人は、その姿が空気に溶けるように薄れていく。


「あ……あぁ……ぁ、あああ、うぁあああああああああーーーーっ!!」


 スーニアの心を引き裂くような悲鳴が平原に響く。

 そして、巨人の姿は完全に消えてしまった。

 彼女は両手で自分の髪を千切れんばかりに掻き毟り、地にうずくまってしまう。

 大地にめり込んだ巨体を再び宙に浮かび上がらせた迷い星は、そんなスーニアを見下ろすように、ゆっくりとその黒目を彼女に向けた。


「ああああ!! ああ!! があああああああああああああ!!」


 スーニアの体から噴出した魔力が、無数の糸に変化する。金色の刃線じんせんと化して周囲にある地面や草を切り裂くと、それは唐突に球体へと襲い掛かった。

 だが、球体にはかすり傷一つ負わせる事が出来ない。


「ぐ、る、る……、るぅあぅあがおおおおおお……、ごおあああああーーーーっ!!」


 血走った眼で迷い星を睨み、スーニアは全力の攻撃を叩き込まんと地を駆ける。

 今のスーニアは人間と獣の中間――半獣人のような姿へ変化していた。

 三本の尻尾が服を突き破り、腰の辺りから生えて金の雷を散らす。

 鉄をも穿つ凶悪な牙と、岩をも切り裂く鋭利な爪が伸びる。


 理性をかなぐり捨て、命そのものを刃とし、自分という存在を必滅の一撃を生み出す為の道具と化した。

 だが、その攻撃をもってしても、あの迷い星には小さな傷を付ける事すら困難だろう。


 それでもいい。

 もはや自分が生きる意味は無し。

 主を守る事が出来なかった無能な従者は、せめてもの一撃を放って死のう。


 かすかに残った理性でそんな事を考え、死へと向かって疾走する。

 その脳裏に、声が響いた。


(落ち着けスーニア!! 俺はまだ無事だ!!)


「ご、あ!? リュ、ウ、ヤ……!?」


 聞き間違えるはずもない、最愛の主の声だ。

 両足に急ブレーキをかけ、立ち止まったスーニアは周囲を見渡し、主の存在を感じ取った。


 彼は今……上にいる!


「『神魔を縛る異界の鎖陣さじん!!』」


 遥か上空から響いた声は、彼にしか分からぬ異界の言葉で紡がれる。そこには、頭を下にして落下してくる黒帝の姿があった。

 呪文は球体とキューブの周囲に、無数の赤い光の鎖を出現させる。

 細い鎖、太い鎖、それらが複雑に絡み合い、虚空から虚空へと高速で流れながら出現と消滅を繰り返し、球体とキューブを雁字搦めに縛り上げる!


 キューブも球体も装甲を振動させて鎖を破壊しようとするが、鎖にはヒビどころか振動が伝わっている様子すらない。

 この鎖はあくまでも対象を縛る力場りきばを発生させるための物で、敵であるキューブたちの表面には触れていない。

 さらに羅漢緋軍拳の数倍に及ぶ強度を持ち、もはや振動だけで壊せる代物ではなくなっていた。

 キューブと球体は鎖によって完全に動きを束縛されたのだ。


「並列発動! 『神魔を惑わす異界の禍鏡まがつかがみ』!!」


 再び上空から声が放たれる。

 その呪文が終わると、迷い星とキューブの周囲に水面のように波打つ銀色のシャボン玉のような物が、鎖の内側に現れて敵を包み込んでしまった。

 鎖とシャボン玉を破壊しようとしたのか、全てのキューブから光線が放たれる。


 光線はシャボン玉に触れると、それを破ることが出来ずに乱反射してシャボンの内側を駆け巡る。

 反射して、反射して、反射して……。その挙句に光線はキューブへと直撃した。

 シャボン玉の中から一瞬の激しい閃光。その瞬間中から弾けるように爆発してしまった。

 シャボン玉の正体は、攻撃を反射する反射結界だ。


 とはいえ、正確に敵に撃ち返すのではなく、波打つ表面に乱反射する内に対象に当たるのを待つという気長な物だったりする。

 時間稼ぎとかに使おう等と、反射能力を重点的に強化して創造したオリジナル魔術だ。

 周囲の地面に破壊されたキューブの残骸が落ちて散らばっていく。


「それから、てめえはその物騒な黒目を空に向けときなっ!」


 そう叫んだ黒帝が両手を迷い星に向け、綱を操るような動きを見せる。

 迷い星を縛る鎖の動きが早くなり、その巨体がグラリ、と傾いた。

 後ろへ、後ろへと、ゆっくりと動いて行き。

 ついには黒目部分を真上にして地上に落下し、そのまま動きを鎖によって拘束されてしまった。


 迷い星からエンジン音のような低く、くぐもった音が聞こえてくる。

 拘束から抜け出そうとしているのか、迷い星が足掻いているようだが鎖はまったく揺らがない。

 完全に動きを抑えられたようだ。


 そして、黒帝の身体がスーニアのすぐ近くの地上へボトリと落ちた。

 黒帝の身体は上半身しかなく、腰から下は失われている。

 球体のレーザー攻撃を受ける刹那、悪寒がした竜也は一瞬早く巨人の身体を抜け出して上空へと飛び出していたのだ。


 ただ悪寒がしただけという理由だったが、巨人の身体を囮に残し、全力で上へと逃れたのが正解だった。

 それでもなお黒帝の下半身をレーザーで焼かれて失ったのだ。いかに間一髪だったのか分かろうというものだ。

 モゾモゾと黒帝の中身が動くと、竜也が心底焦った様子で中から出てきた。


「くっそ、ビビッたっ! 今のはマジでヤバかった!! 本気で死ぬかと思ったわ!! ふっざけやがってぇ、もう容赦しねえぞ!! ……あ? ぐえっ」

「リュウヤ~~~~っ!!」


 球体に悪態をつく竜也の身体を、いきなり掴んだ者がいた。スーニアである。

 かなり強く握っているので正直苦しい。

 だが、抗議の声を上げることは出来なかった。


「リュウヤぁ! リュウヤあぁ! 死んでしまったかと思ったではないかぁ!! なぜもっと早く戻って来んのじゃあぁ!!」

「い、いや、その……ぐ、ぐぇ……。お、思ったよりも上にジャンプしちまったもんで、ぐぉぉ……。戻るのにちょっと時間が掛かった……わ、わりぃ……ぐぬぉ」

「う、うぅ……、うええええええん!! このバカモノー! バカ主、バカ主、バカ主ぃーーーーっ! うあぁぁーーーん!!」


 号泣とはこういう事かと、苦しさでボケた頭で考える竜也。

 大粒の涙をボロボロ流しながら、竜也の身体に豪快な頬擦りをするスーニア。

 周りは戦闘の余波で破壊されている中での、中々にカオスなスキンシップである。

 何とかスーニアの手の中から抜け出した竜也は、必死にスーニアを宥める。


「わ、悪かったよ、だから泣かないでくれよスーニア」

「ヒック、ヒック……うぅ……うあぁぁぁぁん、あぁぁぁぁん……」

「スーニア~、頼むから泣き止んでくれよ~……。参ったな……」


 泣き止む気配のないスーニアに困り果てる。

 竜也を失ったと思い、暴走寸前の状態でその竜也がひょっこり戻ってきたのだ。正負の極端な感情に振り回されて、精神のバランスが不安定になっているのだ。

 実際のところ、スーニアがこんな状態になったのは初めてではない。


 以前、二人きりでの冒険者稼業の際、地下深くの古代遺跡の探索中に崩落があり、竜也が生き埋め状態になってしまった事がある。

 当然ながら、この程度のことで竜也が怪我などする筈もない。

 ただ、古代遺跡の特殊な結界が生きていたせいか念話が繋がらなかったうえ、崩れた大岩に邪魔されて合流するのに十分ほどかかった。


 竜也の力で一気に突破してしまわなかったのは、スーニアの居場所が分からなくなったので巻き込むことを恐れたからだ。

 少しずつ大岩を砕いて進み、ようやくスーニアと再開した時、竜也は驚いてすぐに彼女に声をかけられなかった。

 スーニアは泣きながら、必死に崩れた岩を素手で動かし、時には砕き、竜也を探していたのだ。その両手は傷だらけで、爪も何枚か剥がれて血まみれであった。


 本来の彼女の力なら、岩などどれだけ砕こうが切り裂こうが、そんな傷を負う事も無いはずなのに。

 慌てて止めた後、安心したスーニアは幼児のように号泣し、それから数日間、何時も以上にベッタリと竜也のそばから離れようとしなかったものだ。


 後から分かったことだが、彼女の方も居場所の分からない竜也が傷付くのを恐れたために力を抑えて竜也を探していた。

 それ故の傷であったのだ。

 わずか十分連絡がつかなくなっただけでこれである。

 本当に竜也が死んだと思った今回は、最悪の暴走状態への突入寸前であった。


 『狂える黄金の魔獣人まじゅうじん


 マナウルフィが怒りと憎悪に支配された時に変化する、最狂にして最悪。破壊と殺戮の化身である。

 とある伝承では、ある王国がマナウルフィの恋人となった男を捕らえ、人質としてそのマナウルフィを従わせようとした。

 王国を悩ませている、ある凶悪な魔獣を滅ぼせと命令したのだ。

 王国は恋人の故郷でもあり、彼自身の願いもあってマナウルフィは魔獣退治に同意した。


 神獣の力をもってしても苦戦を強いられたが、重傷を負いながらも辛うじて勝利した。

 だが、その国はマナウルフィが負けたと思い、用済みとなった恋人は無残にも処刑されてしまっていた。

 その事実を知った彼女は魔獣人と化し、その王国の王族、家臣を殺害。それでも当然のようにその怒りは収まらず、王国の全ての破壊、殺戮へと走った。


 そして、わずか二日でその国は滅びた。

 その土地に動くものが無くなってようやく正気に戻った彼女は、恋人の亡骸を抱いて何処かへと姿を消したという。

 一説では、彼女は既にその恋人との子供を宿しており、その子は比類なき力と才を発揮してある家系の祖になったという。


 あの迷い星の前では、魔獣人となったスーニアでも到底敵わなかっただろう。

 そして、理性を失った状態では満足に抵抗もできずに殺されていただろう。

 危うく死ぬ所であったのだ。

 竜也もこの事に気付いていたのと、何より魔獣人となりかけているその姿を見ては強く出られる訳もなく。

 ひたすら宥めることしか出来なかった。


(泣く子と地頭には勝てぬって、工藤に雑学クイズで出されたこと有ったっけ……。正にそれだわ……)


 地球で過ごした頃を思い出しつつ、自分が泣きたくなる竜也だった。

 そして、『泣く子』の部分で唐突に思い出す。

 遊びに来た親戚の幼児が駄々をこねた時、プリンを出したらピタリと泣き止んだことを。


(泣く子には甘いお菓子が有効!)


 竜也は即座に行動に移す。


「そ、そうだ!! スーニア、帰ったらクレープ作ってやるよ! 心配かけたお詫びにさ!」


 ピクン、とスーニアの身体が反応した。


「ぐしゅ……スン……くれぇぷ? グスッ……、あの薄い皮で、色々包んで食べるやちゅ?」

「そうそう! ほら、ステリさんの所で色々作ってみただろ? また作ってやるよ! 切った果物入れて、ヨーグルトクリームたっぷりかけたやつ! 美味かっただろ?」

「……うん」


 竜也は魔術の師、ステリ・マグノワイヤーの家で魔術修行をしていた頃、地球の味を再現できないかと少し試したことがあった。

 さすがに味噌や醤油は製法が分からないので断念したが、主にスイーツの類はこの世界にも存在する物で代用できたので成功した物があったのだ。

 その一つがヨーグルトクリームを使った、フルーツ入りクレープであった。


 スーニアにも食べられる動物性の物となると、卵やミルクくらい。後はミルクから作られるバターやヨーグルトなどの乳製品。

 地球で見た料理番組や、ネットの深夜に見てはいけない掲示板(美味そうな料理画像など)でのうろ覚えの知識を元にそれらを使って作り上げた、数少ない成功例だ。


 ステリの受けも良かったし、スーニアにとっても、自分も食べられる物を竜也が苦労して作ってくれたという事が何より嬉しい事だった。

 冒険者稼業の中では作る時間が削られてしまい、最後に食べたのは三ヶ月以上も前だったりする。

 スーニアの食指が動かない訳がない。


「……分かった、約束じゃぞ」

「おう、フルマルティのクッキーも一緒にな」

「……うむ」


 やっと泣き止んだスーニアが微笑んだ。

 その姿が半獣人から人間モードへと変化していく。

 完全に落ち着いて理性を取り戻した証拠であった。


(ふぅ……何とかなったか……)


 ホッと安堵のため息を内心でつく竜也だった。

 さて、戦いの最中にこんな悠長なやり取りをしていて大丈夫なのか?

 四つのキューブは自分の攻撃を跳ね返されて破壊され、新しいキューブも出現してはいない。

 迷い星は変わらず鎖に拘束されたままであった。


「それでリュウヤよ、これからどうするのじゃ? この怪物は相当に頑丈じゃぞ」

「ん~、そうなんだ、よ……? んっ……! くっ、こいつっ……!!」

「どうした!?」


 急に竜也の表情が険しくなった。

 同時に迷い星からの音が大きくなった。そのボディも蠢動し始めている。

 鎖の拘束が軋みをあげ始めた。

 迷い星がパワーを上げて本格的に拘束を解こうとしているのだ。

 竜也の方も結界に魔力を注ぎ込み、破られまいと力をこめる。


 だが……!


「くっ……! 駄目、だ……! 破られるっ!!」


 ガラスが割れるような音と、巨大な金属同士がぶつかり合って破壊されたような轟音が響き渡った。

 神魔を縛る異界の鎖陣と、神魔を惑わす異界の禍鏡。

 二つのオリジナル魔術が同時に破壊された音だ。

 自由の身になった迷い星は、三度、宙へと浮かび上がった。


「リュ、リュウヤ……もう逃げた方が良いのではないか……?」


 ここへ来て、スーニアの心に恐怖心が芽生えたようだ。

 無理もない。竜也のことを最もよく知っているのが彼女であり、その力の強さも知っているのだ。

 竜也が本気で行使した魔術。それも既存の魔術など比べ物にもならない、彼のオリジナル魔術を破られた。


 それがどれほど恐ろしいことなのか、竜也本人以外では一番よく分かるのだ。

 竜也の背筋にも冷たい物が流れる。

 だが、逃げるわけにはいかなかった。

 既に迷い星は王都の住人を敵と認識しているらしい。

 ここで竜也が逃げれば、まず間違いなくパルフスト王都に攻撃が向くだろう。


『ではの、また会おうぞ小僧。お前だけなら生き残れるじゃろうからな』


 あの老魔術師の言葉は確かに真実である。竜也だけならば生き残れる可能性は高い。

 だが、竜也に逃げる気は毛頭無い。

 老魔術師の思い通りになど、腹が立つのでさせてやるものか。

 ましてや無関係な人間を巻き込みたくもない。

 それに、逃げたらスーニアとの約束を守れないではないか。


「スーニア、言っても無駄だろーけど、いざとなったらお前だけでも……」

「嫌じゃ」

「ですよねー。……ほんじゃあ、お前、俺の中に入ってろ」

「……え? 中?」

「はああっ!!」


 竜也は一瞬でオーラを展開し、再び巨人を発現させる。

 さっきと違うのは、胸の位置に浮かんでいる竜也のすぐ下にスーニアも一緒に居るという点だ。

 竜也はスーニアと共に戦うことを選んだ。そして、その居場所にもっとも安全な所を選んだのだ。


「こ、これは……! 巨人の、中か……?」

「ああ。お前ならここからでも刃線やそのロストパーツを使えるだろ。ラディナ姫が貸してくれたんだろ? それ」

「知っておったのか」


「例の謀反騒ぎの時に姫さんが持ってたんだよ、そん時に聞いた。さっきの盾もそいつの力だろ? 補助を頼むぜ」

「……うむ!」


 良い笑顔で頷くスーニアに笑みを返し、竜也は迷い星を睨む。

 今は双方共に、地上から百メートルほどの低空に浮かんで対峙している。

 最初に動いたのは、巨人だった。


「仕切りなおしだな――第二ラウンド開始だ!」



うぅむ、時間が欲しい……。


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