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31話:ギルドにて

ちょっとシェリカのターン。

短いです、すいませんorz



 春先のうららかな日差しの中、パルフスト王都の街を鼻歌交じりで歩いて行くシェリカの姿があった。

 今、彼女はギルドへと向かっている所である。

 先日、王城へと差し入れを持って行った時に聞かされた、竜矢とスーニアの出会いの話について色々と考える。


(あの二人を捕まえちゃうなんて、どんな魔術師なんだろうな~。そんな凄腕なら噂くらい聞きそうなもんだけど、聞いた事ないなぁ。あ、でもリュウヤさんは強くなる前か。はぁ~、それにしてもスーニア様の人間の姿……可愛かったなぁ~!)


 話を聞いた後、スーニアが人間になった時の姿を見たいと、ミルファルナが懇願したのだ。

 最初スーニアは渋っていたのだが、竜矢が『まあいーじゃんか、お前の人間の姿を見たら皆驚くぜ? 可愛いから』と言った途端、あっさり了承した。

 無意識だったのだろう、三本の尻尾をそれはもうブンブンと勢いよく振っていた。

 実に分かりやすい伝説の神獣である。


 そして、人間になった姿を見て、竜矢を除いた全員がその美しさと愛らしさに魅了されてしまった。

 とある民話では、マナウルフィが美女になった姿を見て、三つの国の王が一目惚れをした。

 彼女を妻にしようとして互いに争い、ついには戦争に発展してそれぞれ疲弊しきったところを大国に攻め込まれ、三国ことごとく滅ぼされてしまったという。

 正に傾国の美女だ。


 スーニアはまだ子供の姿だが、それでも全員、この民話を無条件で信じてしまえる程だろう。

 特にミルファルナは、彼女をお持ち帰りしたくて挙動不審に陥っていた。シェリカは彼女の口から、涎が落ちかかっていたのを目撃している。

 もちろん持ち帰りなど無理なので、急いでスーニア用の子供服をシーナに命じて用意させていた。

 二、三日中には、特別注文の子供服が王城にどっさり届く事だろう。

 王の隠し子が現れたのか等と、噂が立ったりしなければ良いのだが。


 そんな事をつらつら考えているうちに、ギルドのパルフスト支部へと辿り着いていた。

 質実剛健を地で行くような、飾り気の無い木造三階建ての建物だ。

 外にも中にも、人目でそれと分かる連中がたむろしている。

 よく見れば、冒険者的な仕事を主に行う者と、傭兵業を主にしている者とで格好が少し違うのが分かる。


 前者は荷物が自然と多くなる。任務が長期になる場合もあるので、野宿の為の道具一式などが必要だからだ。

 対して後者は、武器、防具、その他最低限の必需品のみの物が多い。戦う事に専念できる為だろう。

 無論、あくまでも傾向的なものではあるが。


 彼らのような者たちは、かつて『自由人』と呼ばれていた。

 生きるも死ぬも、すべて自己責任で自由気ままに生きていた事からそう呼ばれていたのだ。

 それから百年以上の時がたち、少しずつ傭兵、冒険者と分けて呼ばれるようになってきた。

 あと数十年もすれば、傭兵と冒険者は完全に区別して扱われる事になるだろう。

 そんな連中の間をシェリカは器用にすり抜けると、受付へと辿り着いた。

 もう顔馴染みになっている受付の女性に声を掛ける。


「メリアさん、こんにちわー」

「あら、シェリカちゃん、いらっしゃい」


 二十台半ばと思われる、長い銀髪を背中でまとめた垂れ目気味の美人さんである。ちなみに言い寄ってくる男も多いのだが、恋人がいるので例外無く撃沈している。


「今日は新しい依頼探し?」

「ううん、頼まれて来たの。はい、これ委任状」

「じゃあ、拝見するわね」


 委任状はギルドに何らかの事情で来られない人物が代理人に渡す物で、『この人は自分の代理人です』と証明する為に必要な書類だ。

 書いた人物の魔力の波動を記録できる、特殊な魔術紙を使っていて、ギルドでのみ製造、販売を行っている代物だ。


 これはギルドに登録した人間にだけ売り出されている。

 メリアは机の引き出しから確認用の魔術式が刻まれた金属板を取り出すと、委任状をその上に乗せる。

 すると、その上に登録された人物の名前がホログラムのように浮かび上がった。


「えっ?」

「えっ?」


 それを見るなり、メリアが驚きの声を上げた。

 つられてシェリカも声を上げてしまった。

 小首を傾げてメリアを見る。


「どうかしました?」

「シェ、シェリカちゃん、この委任状って……」

「リュウ・サカザインさんと、スーニア・マナウルさんとの連名委任状ですけど

……?」


 竜矢とスーニアがギルド登録の際に使った偽名を言う。


「『破撃はげき黒帝こくてい』と『金色こんじき魔神姫まじんき』!! この二人と知り合いだったの!?」

「……へ?」


 素っ頓狂な声を上げたメリルに、間の抜けた声を出すシェリカ。

 反応が出来ずにいるうちに、声を聞いた連中が回りに集まって来ていた。


「おい姉ちゃん、あの二人のこと知ってんのか?」


 筋肉が身に着けている鎧を弾け飛ばしそうな、スキンヘッドの大男がシェリカの頭上から声を掛ける。


「ふぇ、あの……え?」

「知ってんなら、居場所を教えてくれよ! あいつらは俺の命の恩人なんだ、礼の一言も言わせずに消えちまってよ、ずっと探してたんだ」

「俺らもだ、知ってるなら教えてくれ!」

「私たちのパーティーに何度も勧誘したのだが、聞く耳持ってくれなかった。彼らの知り合いなら口添えしてくれないか?」

「リュウ様がこの国に来てるの!? 何処!? 早くお言いなさい!!」

「サカザインさんの恋人になりたいッス! 男ですけど愛に性別は関係無いッス!」

「ス、スーニアたんに、こ、このラブレターを渡して欲しいお!」


 命に関わる仕事を生業にしている屈強な連中が、男女問わずにシェリカに詰め寄ってくる。

 暑苦しいを通り越して、シェリカは本気で命の危険を感じる。一部の別な意味で危ない連中のお陰で感じる危険度も倍増だ。


(二人とも一体何やってたんですかーっ!! 聞いてませんよこんなのーっ!?)


 心の中で竜矢たちへの文句を叫ぶシェリカだった。



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