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17話:それぞれの暗躍

実験的に、行間を適度に空けてみました。

この方が読みやすいという方、前の方が良いという方、良かったら意見を聞かせて下さい。


「なに!? ルーデン伯とパルフストのダルゼット公が謀反だと!?」


 キドニア王国国王、レグリオスは就寝中に起こされて受けた報告を聞き、声を荒げた。

 報告をしたのは勿論、ミルファルナである。彼女は王族のみに伝えられている城内の抜け道を使い、レグリオスの寝室までこっそりやって来たのだ。


 彼女の側には護衛団一同と、白甲冑姿の竜矢が立っている。竜矢は出せる最高に近い速度で一気に飛んだ為、ものの数分で王都に帰還を果たしたのだった。


 幸いにして、飛行中に誰も失神などせずに辿り着くことが出来た。全員顔を真っ青にして、少々ふらついているが。

 それが返って事態の深刻さを強調する演出的効果をレグリオスに与えていた。


「はい、私は危うい所をこちらのリュウヤ様と、マナウルフィのスーニア様に助けていただきました」

「マナウルフィ!? ……冗談などではない、のだな」

「はい」


 レグリオスは伝説の神獣の名を出され、目を丸くする

 普段なら愛娘の冗談と受け取っていたかも知れないが、尋常ならざる事態にすぐにそれを信じた。


「それで、リュウヤ様が色々と策を考えて下さって、それを行って貰おうとこうして誰にも悟られぬように戻ったのです」

「策とな?」


「えっと、王様、それについてはボアズさんから説明を聞いて貰えますか? 俺は急いでラディナ姫たちをパルフストに送り届けなきゃならないんで」


 隣国のラディナ姫の名まで出てきた事に、レグリオスは目を丸くする。

 ただ、あまり余裕が無さそうな雰囲気を即座に読み取っていた。


「……あまり時間的余裕がない、そういう事か?」

「ええ。ぶっちゃけると二日しか余裕が作れませんでした。連中の動きを考えると、その辺りが限界と判断しまして」


 竜矢がルーデン達をぶつけ合う為に指定したのは二日間だったが、これにはちゃんとした理由があった。


 あまり長い時間を挟んでは連中に冷静になる時間を与えてしまう、かといって短すぎても王都の側が対応しきれない。ルーデン達に、早く対処しなければ相手に出し抜かれるという不安を煽る必要もあった。


 自分の力を使うことも考えて出した時間、それが二日間だったのだ。


「俺はラディナ姫たちを送った後、スーニアと二手に分かれて、ルーデンとダルゼットの屋敷の見張りをするよ。ボアズさん、あと頼みます」


「ああ、任せておいてくれ。リュウヤ殿も気を付けてな。……もっとも、心配する必要はあまりないだろうが」

「えーちょこっと位は心配して下さいよー」


 軽く笑いあった後、姿を消した竜矢は寝室の窓から再び夜空へと飛び上がって行った。


「ではボアズ、策の説明をしてくれ」

「はっ! まず、陛下には軍を……」


 王の寝室で小さな話し声が翌朝まで続いていたが、それに気付いた者は誰もいなかった。






 竜矢は一旦妖精の一服亭に戻ると、ラディナとリーラを連れてパルフストへとやって来た。ミルファルナ達と同じように王族しか知らぬ抜け道を使い、王の寝室へと忍び込むことに成功する。


 しかし、寝室にいたパルフスト王国のクロフォード王はベッドの端に座り込んで眠ってはいなかった。隠し扉から入ってきたラディナたちにも気付かずに、項垂れて小声で何かを呟いている。


 ラディナが静かに声を掛けると、信じられないというような顔をして立ち上がった。


「ラディナ! よくぞ無事で戻ってくれた!」


 クロフォードは寝室から忽然と姿を消した最愛の娘をきつく抱き締めた。その目には光る物が溢れ出している。早くに妻を亡くした彼はラディナを溺愛しており、行方不明になったと聞いて心労から酷く憔悴していた。


 何日も眠れぬ夜を過ごしていたのだろう、その目の下にはくっきりとクマが出来てしまっている。顔も疲れ切ったように痩せてしまっていて、それを見たラディナもまた涙を抑えることが出来なかった。


「父上……ご心配をおかけして申し訳ありませんでした……。グスッ……ただ今、戻りました……!」

「よい、無事に戻ってくれただけで私は満足だ。お前が姿を消してから、どれだけ神に祈ったことか……。きっと祈りが通じたのだな、バルアハガンよ心から感謝致します……!」


 親子の感動の再会に、竜矢も思わず目頭が熱くなる。

 リーラに至っては、ハンカチが涙と鼻水で盛大に濡れてあまり役に立たなくなっていた。


「父上、心して聞いて下さい。此度の事件、ダルゼット公が謀反を企てた事に関わりがあります」

「な、何だと!?」


 涙を拭いつつ、驚愕するクロフォード。


 彼自身、ラディナが忽然と姿を消しても何の痕跡も残っていない等、王宮に満ちる異常な事態に不穏な空気を感じていた。愛娘が行方不明になった事で冷静な判断力を欠いていたせいもあるが、それが何なのかまでは測りかねていたのだ。


 ラディナの説明で有力貴族達の半数が謀反に荷担している可能性があると聞き、クロフォードは溜め息をつきながら天井を見上げた。


「何という事だ……!」

「父上、こちらが私たちを助けてくださったリュウヤ殿です。キドニアのミルファルナ姫を助けたのも彼です」


「そうか、君がな……。リュウヤ殿、国王として、そして何より父親として心から礼を言う。本当にありがとう」


 深々と頭を下げるクロフォードに、竜矢は慌てたように手を振って頭を上げるようにお願いする。


「王様、礼は全部片付いた時で構いませんよ。今は謀反を潰す事だけ考えましょう」

「そうか……。それで、君が策を考えたそうだが?」


「父上、それについては私から。彼はこれからダルゼット公の屋敷を見張りに行って貰います」


 策の説明をラディナに任せた竜矢は城を飛び立つと、スーニアと思念通話で連絡を取った。竜矢はダルゼットの屋敷を、スーニアはルーデンの屋敷を見張る事で、不測の事態に備える事になる。


(しかしリュウヤよ、お主も物好きじゃな。ここまで首を突っ込む必要があるのか?)


 スーニアが少々呆れたような思念を送ってくる。

 竜矢は性格的にのめり込むタチである。例えばゲームなどをしても、一度クリアーしても隠し要素などを片っ端から探してしまう。


 その延長線上なのか、実生活においても一度関わった事柄は最後までやり通さなければ気が済まない。自分でもそんな性格に時々呆れる事がある竜矢は、スーニアに苦笑しながら答えた。


(関わっちまったからなー、途中で放り出すのも寝覚めが悪いしさ。お前には悪いが、最後まで付き合わせてくれよ)

(わしは構わんがの。お前の居る所がわしの居場所じゃ)


 スーニアは竜矢に依存する傾向が強い。

 こういった言動も、命を救ってくれた彼に対するスーニアの決意の現れと言える。竜矢の為なら全てを敵に回してでも戦うという覚悟をしているのだ。


(……ん、ありがとよ)

(礼の必要など無いぞ、わしはお前の従者なのじゃからな)


 スーニアはこう言うが、竜矢としても知り合いが誰一人としていないこの異世界で、家族と言っても良い程の存在となったのが彼女だ。竜矢の方も、彼女が危険な事になれば全力で守ると決めている。


 お互いに、無くてはならない存在となっているのだ。


(ま、全部片付いたら少しのんびりしようぜ。王都で何か、美味いもんでも食い歩くか)

(そうじゃの、それは楽しみじゃ)


 二人は思念通話を切り上げると、それぞれの目的地へと移動していった。






 その二日後、ルーデン率いる千人の私軍と、ダルゼット率いる千二百の私軍が国境に広がる平原で対峙した。


 その光景を、離れた山の中腹で見つめている人物がいた。薄汚れた灰色のローブを纏ったその姿は、かなり歳を取った老人だ。顔や手の皺の数と深さは、一体どれだけの年月を掛けて刻まれたものか見当も付かないほど多い。


 竜矢とスーニアが彼を見たら、即座に臨戦態勢に入っていただろう。彼は竜矢を召喚した謎の老魔術師であった。その顔は、何処か楽しそうに笑みを浮かべているようにも見える。


 と、背後の茂みが音を鳴らして揺れると、そこから三人の人物が姿を現した。


「大教祖様、こちらでしたか」

「ゼウルか」


 振り返った老人の前には、竜矢たちによって壊滅された邪教の教祖ゼウルと、彼と共に逃亡した二人の尼僧であった。

 今は三人とも平民のような服を着ている。


 どうやらこの老人はゼウルたち邪教徒の頂点に立つ人物だったようだ。彼らは逃亡後、老人と合流して行動を共にしていた。


「ここから見物なさるお積もりで?」

「うむ、あの二人が戦う事になるとはのう……。予定とは少し違ってしもうたが、あやつらのロストパーツの力を見るには絶好の機会じゃて」


 大教祖と呼ばれた老人は皺だらけの顔を綻ばせ、楽しそうに笑った。

 それを見た三人も釣られて顔に笑みを浮かべる。ただし、それはこれから流されるであろう大量の血を期待しての歪んだ笑みだ。


「それはそうとゼウル、手の具合はどうじゃ?」

「はい、大教祖様の治癒魔術で、もうすっかり元通りです。ありがとうございました」


 手を動かすゼウルを見て、うむうむ、と老人は満足そうに頷いた。

 しかし、ここに魔術に詳しい者が居たら首を捻っていた事だろう。


 老人は竜矢との戦いで、彼の魂を破壊する為に『魂魄の咀嚼』という邪神魔術を使っている。そして治癒魔術は神聖魔術に属する魔術で、本来ならばこの老人が扱う事は出来ないはずだ。


 彼は竜矢と同じく、別系統の魔術を扱う事が出来る希有な存在であったらしい。そんな事は一切気に留めず、彼らは布陣している軍を眺める。


「それにしても~あの時の妖精さん、大教祖様が召喚した異世界人って聞いて、びっくりしましたわ~」

「……あのマナウルフィも、大教祖様が捕らえていたとか……。流石です」


 不意に、尼僧の一人、ネディスが老人を見ながら言った。ヴィーラもそれに続いて、老人を称えるように言葉を繋ぐ。

 心なしか無表情なヴィーラの頬が赤く染まっており、ネディスの瞳も熱を持ったように潤んでいた。


「苦労したんじゃがのう、フラれてしもうたわい。なに、いずれまた捕まえるがの」

「あら~、それじゃ、私たちが傷心の大教祖様をお慰めいたしましょうか~?」

「大教祖様がお望みならば、いつでもお相手いたしますわ」


「お前たち……自分が良い思いをしたいだけではないのか? 大教祖様にご無理を言うな」


 熱っぽい視線を老人に向ける二人に、ゼウルが呆れたような言葉を掛ける。


「ふぉっふぉっ、構わんよ。それでは今夜頼むとしようかのぉ……楽しみにしとるぞい」

「はい~♪」「喜んでお相手させていただきます」


 歓喜に濡れたような顔で喜ぶ二人に、小さく溜め息をつくゼウル。


(仕方のない二人だ……。しかし、衰えというものを知らんなこのお方は)


 もっとも、だからこそ自分もこの老人を尊敬し、付き従っているのだが。

 いつの日か彼を越える事、それがゼウルの野望の一つであった。

 戦場となる平原を見下ろして、彼はこれから見られるであろう惨状を想像し、胸躍らせていた。



邪教トリオと謎の老人再登場。

そして老人がメッチャ元気という事が判明w


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