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小さな悩み

村人紹介

リア 天真爛漫とはこの子のためにある言葉なのだろう。エルフではやや珍しい赤髪である。

ミル リアとは反対でおとなしめの女の子なのだが、皆と居るときは活発で明るい一面を見せてくれる。天然でギャップ萌え少女。

ぼくたちの姿を見て安堵の表情を浮かべる大人たち

しかし大人たちの目にはぼくは映っていなかった。

それも当然だろう僕は村から追放されている身なのだった。

皆それぞれ、家族に連れられていく

母さんはどこだろう、いや居るはずがないんだ。

思考がまとまらない。

皆とはもう遊ぶことはできないだろう。

これからどうしたらいいのだろう。

何か伝えないと、そう思った。

バイバイ。また会おう。ありがとう。お疲れ様。じゃあね。またね。

正しい言葉が分からなかった。

視界が揺らいでいた。必死に言葉を捻り出した時には

ぼくはたった一人だった。



 母に抱きしめられた。独りでに帰路についていたようだ。事情はもう伝わっているのだろう。

「あなたは、私の息子。立派なエルフよ

ご飯も冷めてしまうし、明日は大事なお出かけの用事があるから、今日は早く帰ってぐっすり寝なさい」

ぼくは少し考えすぎてしまう癖がある。

だからだろう母は家に着くまで他愛ないことを絶え間なく話続けてくれた。

母の優しさ故だろうか、それとももう会えないみんなを思ってか涙が止まらなかった。

それでも考えてしまう。

迷宮でなく外で弓の練習をしていたら

あと少し早く迷宮の仕組みに気づいていたら

迷宮の仕組みになんて気づかなかったら

自分の見た目について。

なぜ人族のような見た目に産まれてしまったのか。

もし自分がみんなと同じように生まれていたら

自分の生まれる場所を外見を少しでも選べていたら


生まれを否定することは自分だけでなく母までも否定することになる

そう思い至った所で思考を止める。


家に着いた。ご飯を食べて、体を拭く。明日の身支度を済まし、横になる。


人には日にち薬が効くという。時が解決してくれるというやつだ。

エルフは長寿がゆえに記憶力が非常に高い。

忘れることも処世術だろうに、なんという欠陥だろうか。

今日の出来事を反芻してしまっている内にぼくは眠りについた。



その日は久しぶりに母に起こしてもらった

あんなことがあっても1日は変わらない

水を汲みに行き、置き網にかかった魚を捕まえる。その日は水遊びをすることなく家に帰り

朝食兼昼食をとった。


母に連れられて出かけている道中でどこに向かっているのかと母に尋ねた。

「あなたが生まれた時のことは昨日のことのように覚えているわ。」

昨日のことは忘れたいのだけれど比喩に突っ込むというのも野暮だろう。

ふと迷宮の方を見ると周りの森が崩れて岩肌がさらされていた。

中に居るときは分からなかったがあれだけの規模の土砂崩れだったら

出口が埋まらなかっただけでも僥倖だったのだろう。

「お友達のみんなとまた遊びたいんでしょ」

表情に出てしまっていたのだろうか。

「世界は広いんだから、何も方法がないってわけじゃあないのよ。」

そんなことを言う、嫌でも期待をしてしまう。

「あなたも知ってるでしょ、エルフは大人になる証明としてに成人の儀を行う。

成人の儀で優れた成績を収めた者はエルフの使者として公に村の外に出ることを認められるの」

僕は別に村の外に出たいわけじゃないんだ。そう言いたげな僕の意図を汲んだように母は続ける

「成人の儀は多くののエルフの村が集まって行われる。そこで実力を示した者を無下にはできないわ。

目標が決まったらあとは努力をするだけよ。これから向かうところはそのことにも関係あるんだから」

簡単に言ってくれるものだ。

母はこの村の出身ではないようだし、他の村人が使えない回復魔法が使える。

なんでもこなす天才肌なのだ。村の外に出るエルフが必ず使者だけということは無いのだろうが

使者でしたーなんてことを言われても不思議ではないのが恐ろしい

「えっと、何の話だったかしら。そうそう生まれた時のあなたは小さな体でとっーーても可愛かったわ、思い出しただけでにやけちゃうわね。

その当時色々あってね、体調を崩していた時に出産が重なってしまったのよ。

私もアルも命の危険だったのだけれど、彼女の魔法のおかげで助かったの。

今日はその彼女、アルを取り上げてくれた魔女に今から会いに行くのよ。」

うーん魔女については、あまり興味は湧かないけど。怖いし。

母の昔を知る人というのは村には居ないので

それについて聞けることもあるだろうと言い聞かせて歩みを進める。



山奥にひっそりとたてられた小屋にいたのは如何にも魔女な老婆ではなく、少女だった。

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