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迷宮では迷うことが命題です。

エルフ村人紹介

アバン エルフとは名ばかりで筋骨隆々の青年と言い表すのがふさわしい。せめて脳は筋肉でなければ良かったのだけれど。


ミッド 端正な顔つきとは彼のことを言うのだろうというほど整った美しい美少年、きれいなエメラルド色の髪色をしている。


 頭がクラクラする、ここはどこなんだ?

徐々に視界がはっきりしてくる。

こういう時は落ち着いて状況を整理しよう。

眼前にはぼくが起きたことに気づいたらしい2人がこちらを見て駆け寄ってくる。

ぼくは周りを見渡す、隣では人形のような顔立ちの女の子が横になって寝ている。

その柔らかそうな頬を突いてやろうと思ったのだが遮られてしまった。

「ちょっとアル大丈夫なの?聞ーこーえーてーるー?」

そんな耳元で叫ばなくても、あと起きたばかりの体を揺らすのをやめてほしい。

聞こえてるよリア。

リア...?

ああそうだ今目の前で頬を膨らませながら立て板に水のごとく話しかけてきているのがリアだ。

よく見れば目は潤んでいるし感情がせわしない奴だな。

「リア、アルを離してあげて。アルもそう言ってるでしょ」

隣でリアを諭しているのはミッド。

見た目通りクールで同じエルフとは思えない美少年っぷりだ。

ただこちらを見る目が少し怖い気がするのは気のせいだろうか。

いやこの眼差しは明らかに嫉妬の類だろう、こんな閉鎖された村での恋沙汰とはなんて恐ろしい。

あくまで気づかないふりをして、ぼくを揺らすリアの手を抑える。

「アーバーンー、リアが起きたよぅー」

耳元でリアが叫ぶ。もうわざとやってんじゃないかと思う。

その声を聞いて奥からぼくたちより一回りは大きいんじゃないか?エルフってこんな種族だっけ?と

思わざるを得ない青年がやってきた。アバンだ。

そう思っているうちに目の前まで近づいてきて両肩を掴まれた。その後は以下略だ。

ちょっとしたカルチャーショックに参ってしまいそうだった。

ミルが起きそうになかったので、とりあえず今後どうするかについて話し合うことにした。

アバンとリアは話にならなかったので結局ぼくとミッドでの話し合いではあったのだけれど。


 兎にも角にも状況把握、ここはどうやら洞窟というよりは迷宮のようだ。

ぼくたち5人はこの迷宮(山の麓に位置している)から少し離れた川の近くの村で生活している。

20人程度の小さな村ではあるが、エルフは長寿であり子供を持つことも稀であるため

エルフとしては平均年齢は低い村なのではないかと推測する。

同年代の僕たちはいつもここを遊び場として魔法やら弓やらに励んでいたわけだが

突然の地鳴りとともに床が動き出し気づくと出口は閉じられていた。密室の完成だった。


 話し合いの結果、

探索組(アバン、アル、リア)と出口を探す兼待機組(ミッド、ミル)での2手に分かれることにした。

本当は全員で探索に出たいところではあったのだが、目を覚まさないミルを置いていく訳にもいかず、

水、食糧難といった差し迫った問題もあったので直ちに行動に出ようという意見でまとまった。

チーム分けについてもアバンとリアを連れての探索は一抹の不安、

いや安らぎを一欠けらも感じられないのだけれど、

医学の知識のあるミッドがミルを看ておくべきだろうということで

この編成に落ち着いた。



 案の定ぼくたちは盛大に迷ってしまっている最中であった。

迷宮といえば迷うというのはいかにも職務を全うできているような気もするが、

正しくは閉じ込められている、だろう。

迷宮は立方体の部屋のようなものが将棋盤のように並んでおり

なにかしらの仕掛けがあるらしく魔法を打ち込むと部屋が回転し前の部屋に進める。

打ち込まないといけない魔法の回数はランダム?である。

ということは分かってきた。

進み続けて突き当りまで来たところでどうするか悩んでいるところであった。

横ではアバンが壊れたように水魔法を打ち続けている。

「っつたく、仕方ねえな」2,3歩壁から遠ざかるアバン。

理解が追い付かなかった、ぎしぎしと揺れる立方体の部屋。

嘘だろこいつ突進かましやがった。

「ちょっとアバン危ないでしょー、壁の雰囲気(ふいんき)も違うんだから行き止まりだよー」

それを言うなら雰囲気(ふんいき)だがそれはいいとして。

今までは左側の壁だけ模様が違ったのだが、この部屋では前面にもその模様が見えるので

行き止まりというのはその通りだろう。

「ああ、そうなのか?でもどうするんだよ、ここまで来たみたいに魔法を撃っても、力ずくで押してみても開かねえんだから。」

「押してダメなら引いてみたらいいんだよっ」

どうして気づかなかったのだろう。

魔法を打ち込むと部屋が回転し前の部屋に進める、のではなく

魔法を打ち込んだ方向に部屋が回転する、のだった。

なんというか、ものすごく恥ずかしい気持ちだった。

目の前の女の子が手を振ってきたので振り返したら、相手はぼくじゃなくて後ろの子だった時くらいだ。

なんというかリアにそれを指摘されたのも相まっているのだが

これについてはリアが、実は案外鋭いということにしておこう。


 進んで来た方向に水の魔法を打ち込む。

この世界に引き戸?いや開き戸だったかがあったかは突っ込まないとして

部屋が回転した先には通ってきたはずの水浸しの部屋があった。

急いできた道を戻るぼくたち、入口であり出口となる初めの部屋にまでたどり着いた。

ミルも目を覚ましたようだった。

「先には何かあったのか?、それとも何か問題が?」

ミッドに先ほどあったことを委細漏らさず話すというのは憚られたので、

ここはリアに手柄を譲ってやろう。

誇らしげに説明をし始めるリア。

「そこでリア探偵は言ったのですよっ、簡単なことだよワトソン君、その...」


話が長い。

ぼくは魔法を出口に向かって打ち込む

「ああっ、まだ決め台詞が残ってるのにっ」

今のは決め台詞ではなかったらしい

回転する部屋

徐々に外の光が入り込んでくる

良かった、日が落ちる前に帰ってこれた。

母さんに怒られたらたまったもんじゃないからな。

そんなことを思っていた。

光に目も慣れ、眼前に広がっていたのは

村の大人たちの姿だった。

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