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徒桜  作者: 七星瓢虫
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「春の推理2022」


「「桜の木」素敵!」と、挑戦しようと思いましたが

生憎、灰色の脳細胞を持ち合わせていない自分には無謀な「お題」でした


なので、唯の「お話し」です

「桜の樹の下には」


「「私」が埋まっている」

「「少女時代」の「私」が埋まっている」


何処何処迄も

何時何時迄も続くかのような、花弁(はなびら)散る桜並木を行く

彼女が自分の呼び掛ける声に振り返る


清らかで凛凛(りり)しい


「「さん」付けは止めて」


「でも、僕より年上じゃない」


「尚の事、止めて」


(すこぶ)る冷めた目を寄越すが生憎、慣れた


「氷の女王」の異名宜しく

大学構内、肩で風を切って歩く彼女の姿が懐かしい


「「年上の女房は金(鉄)の草鞋(わらじ)を履いてでも探せ」て、言うじゃない」


「「価値のあるモノ」」


到頭、外方(そっぽ)を向く彼女が唇を尖らす


「「金(鉄)の草鞋(わらじ)で尋ねる」のは「価値あるモノ」」

「「年上の女房」じゃない」


如何でも好い四方山(よもやま)話に

如何でも好い蘊蓄(うんちく)を傾け始める


無口な彼女が多少、饒舌になる時間が好き

失笑しつつも一人、惚気(のろけ)


此の何気ない会話が

此の(のち)の、一世一代の「告白」への伏線になっている事


其の様子だと全く気付いてないんだろうなあ


此の日と決めた

此の日と決めた瞬間(とき)から自分は夜しか眠れない(笑)


春生まれの彼女が

春の「恩恵を浴する」最高/最強の局面


知らず知らず拳を握り締める自分を余所に

通り掛かりの子ども()と一緒に舞い散る花弁(はなびら)を掴まえようと

無邪気に身体を弾ませる彼女が笑い声を上げた


基本、「氷の女王」は(おんな)子どもに優しい


恋人である(筈)自分でさえ滅多に拝めない

彼女が惜しみなく披露する泡沫(うたかた)の笑顔に身も心も蕩けそうだ


(そもそも)、「氷の女王」相手に小細工等

無意味とばかりに無計画で(のぞ)む自分も大概(たいがい)だが

其れでも「夜桜」だけは予定していた


していたが無理だ

到底、此の胸の高鳴りを無視する事は出来ない(語彙力)


「結婚してください」


自分の「言葉」は彼女の耳迄、届いただろうか


取り囲む、(はしゃ)ぐ子ども()の声に

桜並木を行く、「名無しの群衆(モブ)」の喧騒(けんそう)に掻き消される事なく


自分の「言葉」は彼女の耳迄、届いたのだろうか


「一秒」が長く感じる


(ようよ)う、子ども()の一人が花弁(はなびら)を掴まえたのか

彼女の手を取るや否や飛び跳ねる


無論、「氷の女王」も一緒に飛び跳ねる

釣られたように他の子ども()も飛び跳ね狂喜乱舞し始める


其の騒ぎに気付いたのか

各各の名前を呼ぶ、先で待つ両親 ()の元に一斉に駆け出す


真逆(まさか)、名残惜しいのか


彼女に手を振り(じゃ)れ合う子ども()を見送るのは構わないが

中中、此方を振り返らない理由は一つ


如何やら自分の「言葉」は彼女の耳迄、届いたらしい


(つと)めて気取られないように

深呼吸をする彼女の背中を今直ぐ、抱き締めたい


抱き締めたいが今は其れ所ではない

啓示の如く(ひらめ)いた、此の思い付きを実行すべく行動に移す


()うして意を決して振り返る

彼女の出端(でばな)(くじ)く形で、ずいと握り拳を突き付ける


当然、戸惑いながらも目を落とす手の平

其処に揺れる、花弁(はなびら)を見止め泡沫(うたかた)の笑みを浮かべた


矢張り、「氷の女王」の笑顔は畏れ多い

其れとも自分が「小者」なのか


思いの外、舞い散る花弁(はなびら)を掴まえるのは難しくて

「実は拾いました」と、白状してしまいそうだ(最低/最弱)

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