魔法少女バッド♥️エンド~不幸体質の青年が魔法少女と出会って不幸レベルが増大したけど彼女のお陰で生きていけます~
僕の名前は『飆 完太(つむじかぜ かんた)』17歳。
成績はクラスの中の下。成績表はほとんどBだけど数学だけがA。部活に所属していない完全完璧な帰宅部です。
そんな一般的な高校2年生の僕の家には最近やって来た新しい家族がいるのです。
今日のおやつはプリンです。
僕は3時のおやつをいただくために、2階へと上がっていきます。僕の部屋は2階にあるのです。
そして、僕はいつも通りドアを開けてしまいました。
僕の部屋ですから、ノックして入る必要もありません。ちょっと前までは……。
部屋の中では僕よりも3つほど歳の離れた小柄の少女が着替えを行っていました。
しかもふすまを開けた僕にはバッチリ見える立ち位置です。
「あッ」
「あッ」
目と目が合います。数秒間の静寂。
そして彼女は叫びました。
「イヤアアアアアアアアアア!!」
「ごめん。着替え中とは思わなくて。大丈夫見てないから。太陽光すごい。プリンです。置いときますね。失礼します!!」
確かにノックしなかった僕が100%悪いです。僕は一刻も早く自分の部屋から飛び出そうとしました(この間、2秒)。
しかし、時すでに遅し。僕は運命から逃れられることができなかったのです。
「警察です」「強制わいせつ罪で逮捕します」「3時20分逮捕」
僕は警察官に手錠をかけられてパトカーに乗り込みます。
そして裁判。
「有罪です!!」
「裁判長。有罪だけではダメです。死刑です!!」
「う~ん。じゃあ判決は死刑で」
こうして僕はトントン拍子に死刑宣告を受けてしまうのでした(計10分間の出来事)。
─────物語・完!!!
こうして物語が終わりそうだった所を彼女は自らの権限を使用してねじ曲げてくれました。
お陰で僕も死刑判決のまま牢屋に閉じ込められずに済んだのです。
「……開けるときはノックして!!」
僕が疲れ果てた状態で自分の部屋に帰ると、彼女はもう着替え終わっていました。
「いや、ほんと。すいませんでした。許してください。あとねじ曲げてくれてありがとうございました」
「私の嫌いな物。私をイラつかせる物。子供。つむじかぜ」
「それは旋風ですか? 飆ですか?
いえなんでもないです。すいませんでした!!」
僕は涙を流しながら彼女に謝罪します。
そうして、僕は自分の部屋のドアをバンッと閉めました。
彼女はある日、僕の家のお風呂場から現れました。
さらに驚くべきことに、彼女は魔法の国からやって来た魔法少女だと言うのです。
お風呂場に魔法少女? 魔法少女なんているわけがない?
誰だってそう思います。僕もそうでした。
しかし、本当に魔法少女だったのです。
(当日は我が家で初めて家族会議が行わました。結局、両親の願い事を叶える魔法を交渉として彼女は受け入れられてます)
もちろん、自分が魔法少女だと言い張る証拠に彼女は今も謎の魔法のステッキを持っています。
彼女の名前は『高貴神 王政』。
彼女は僕のために魔法の国からやって来たらしいです。
僕の不幸体質が酷い運命のため、それを調整するためにやって来たそうです。
しかし、彼女がやって来た影響で僕の不幸体質がさらに悪化。
魔法少女が現れた影響なのでしょう。“運命が僕に与えようという不幸度が増大した”のです。
では、簡単に説明してみましょう。不幸体質が悪化した例を紹介します。
犬に噛まれる→脱走したライオンに噛まれる
ヤンキーに絡まれる→ヤクザに沈められる
野球ボールが頭に落ちる→白亜紀を終わらせるくらいの巨大隕石が町に落ちる
たまに地球が滅びるくらいの不幸もやって来ますが。
彼女はそんな結末でも、魔法で何度も何度も現実をねじ曲げてくれる魔法少女なのです。
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文化祭。
それは僕らの高校には絶対に毎年行われる行事です。
1年は初めてのドキドキ文化祭、3年は受験前のアタフタ文化祭。そして僕ら2年生は楽しめるワクワク文化祭。
僕と高貴神ちゃんは僕の通う学校への通学路を歩いていきます。
「文化祭ー文化祭ー」
高貴神ちゃんは文化祭の歌(自作)を歌いながら楽しそうに通学路を歩きます。
「文化祭。楽しみなの?」
いつも以上にテンションが高い高貴神ちゃんに僕はふと尋ねてみました。
すると、高貴神ちゃんは穏やかな天使のような笑みを返してくれました。
「だって文化祭って名前だけでもワクワクするでしょ」
「そうかな?」
「魵火災って字が素敵」
「海老に何の怨みが!?
文化祭だよ。文化の祭!!」
「…………殻付きの海老って食いづらいと思うの」
「それは同感」
などという下らない会話を行いながらの通学路ですが、そうなのです。文化祭なのです。
本日は僕の高校の文化祭。
僕のクラスも出し物を行うのです。
思えばこれまで色々な苦労がありました。
今でも走馬灯のように思い出せますが、どんな問題でもクラス一丸となって努力してきました。
そんな苦労の日々も今日が本番。
絶対に出し物を成功させたいのです。
そんな時です。
もう学校も目の前といった地点の交差点。信号機はもうすぐ青になるので僕らはそれを待っていました。
すると、交差点の向こうにいる1人の女子高生がこちらに向かって手を振ってくれています。
(あれは安芸ちゃんだ!!)と僕は一目で分かりました。
『羽々国 安芸』ちゃんは隣にいる魔法少女とは違って普通の人間の女の子です。
少し茶色がかった髪色のロングヘアー、目はちょっとタレ目で美しい小顔、その愛くるしい瞳は聖母のように全てを優しく見守ります。
僕のクラスの中では隠れアイドル的存在の委員長です。
「おはよう飆君ー」
なんと安芸ちゃんが僕の名前をお呼びになられたのです。横断歩道の向こう側で僕ごときの名を口になされたのです。
「……? ねぇ飆君? 話聞いてる?
なぜ甲殻類はあんなにも食いづらい形をしているのか?
私がこれから仮説を話すのだけれど。私が思うに」
甲殻類? 隣の魔法少女の話が耳に入ってきません。
(今日はなんて幸運の日なんだ!!)と僕は心の底から安芸ちゃんと朝から会えたことを嬉しく思いました。
思ってしまったのです。僕に幸運など訪れるはずもないのに……。
信号が変わると僕は安芸ちゃんのもとに横断歩道を渡りながら走って向かいます。
そして……。
軽トラックに跳ねられてしまうのでした。
──────物語・完!!
危うく異世界転生しかけるところでした。異世界ファンタジーで暮らしていく羽目になるところでした。
「…………痛ッ……また助けられたみたいだ。ありがとう高貴神ちゃん」
「大丈夫? モザイク規制レベルだったけど」
「君のお陰で大丈夫。それよりも安芸ちゃんは?」
「最初は絶叫してたけど、運命をねじ曲げて元気になった飆君を見ると安心して先に行っちゃった」
「そっか……」
怖い思いをさせてしまったのは僕としては本当に反省会を開きたいレベルなのだけど。
もう先に行っちゃったというのはなんだか少し寂しい。
それが当たり前と言われればそうなのかもしれないですが。
結局、僕の運命がねじ曲げられても、いつも隣にいるのは高貴神ちゃんだけだ。
死んですぐの不安な僕の側に誰かがいるってのは本当に感謝しているんです。
「でも、羽々国ちゃんっていい子なのね。私すっかりあの娘が気に入っちゃった」
「どうして? 高貴神ちゃん?」
「20分くらい前に近くの店でクリームソーダを奢ってもらったわ」
「ッ!?
助けてもらって僕としてはすごい感謝してるんだけど。1つ言わせてもらっていいかな?
もっと早くねじ曲げてくれよ!!」
「タダでねじ曲げてあげてるんだからいいじゃん!!」
「怒られた!?」
2人がクリームソーダを買いにいっている間に置き去りにされた僕。
なんだか哀れです。自分がかわいそうに思えてきます。
そんな中、高貴神ちゃんが座り込んでいる僕に手を差し伸べてきてくれました。
「ほらほら、早く行こう?」
「ん? あっそうだね」
てっきり(珍しいな。元気付けてくれるのか?)なんて思ってしまいましたが、直ぐに思い出します。
そういえば、すっかり忘れていました。
僕らは文化祭に向かうのです。
楽しい出店や楽しい出し物、僕の2年生としての文化祭。
きっと羽々国ちゃんにもう一度会うチャンスもできるでしょう。
僕は死んだばかりの肉体に酸素を送り込むようにして大きく深呼吸をします。
そして心の中で決意を固めるのです。
今年の文化祭の出し物も絶対に成功させてみせよう!! いざ参ろう僕らの文化祭へ!!
と思っていた矢先。地面のマンホールの蓋が外れており、落下した僕はあっけなく死亡してしまうのでした。
───────物語・完!!