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おじさん募集中  作者: しいな ここみ
第一章:デキるおじさん
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デキるおじさん Part6

 私は縁側でスイカを手に持ち、秋の近づく空を眺めながら、呟いた。


「地球がおかしくなってますね」


 今年は6月にヒグラシが鳴くのを聞いた。

 今はもう10月なのに秋がようやく近づいている。

 そのうち真夏に雪が降り出すかもしれない。


「そんなことよりおめでとうございます」

 はなさんは緑茶を啜ると、柔和に頭を傾げ、

「あなたはデキるおじさんになりました」

 ピコピコーンと口で電子音のファンファーレを鳴らしてくれた。


「ありがとうございます」

 私はお礼を言うと、はなさんに聞いた。

「それで、私は何をすればいいんです?」


「何もしなくていいんですよ」

 はなさんはにっこりと、秋の空を見上げながら、言った。

「はなさんの側にいてくれたらそれでいいです」


 私もにっこり笑い、一緒に秋の空を見上げた。


「おーい! デキるおじさん!」

 そう叫びながら、はなさんの五歳の娘、みつりが空の向こうから飛んで来た。

「勝負しようぜ!」

 みるみるうちに急降下で接近して来るみつりに、私は左手を前に掲げた。

「うっ!」

 私の展開したシールドに阻まれ、みつりの動きが急停止する。

「やるじゃないかデキるおじさん。これで私たち、仲間だな。スーパー戦隊ヒーローだ。さあ、敵を倒しに行こうぜ」


「敵なんていませんよ、どこにも」

 はなさんは娘に教えた。

「さあここへ降りて来て、座って。あなたには桃のネクターでも作ってあげましょうかね」


「コーラがいい!」


「コーラは残念ながら作れません。似たようなのなら作れるけど、まずいですよ」


「じゃ、ネクターでいいや!」

 みつりはそう言うとはなさんと私の間に座り、待った。


 私は傍らに置かれてあった大きな桃を持ち上げ、口に入れると、ネクターにしてコップに吐き出した。

 みつりはそれをウンコでも見るような顔をしてかたまってしまった。




「地球でも直しに行きましょうか?」

 私は再び空を見上げながら、はなさんに言った。


「いけませんよ」

 はなさんはお茶を啜りながら、答えた。

「それは人間の立ち入っていい領域ではありません」


「ですが、人間がしたことなら、人間が直すべきものなのではないでしょうか?」


「私達が滅びるなら、それが運命です。人間が自然に手を出したからこうなったのですよ。あなたが自然を直しても、自然は知らないところであなたの行為によって傷つきます。人間が自然をなんとかデキると思うのは、人間の傲慢です。あなたは自然を知り尽くしているつもりですか? はなさんのことすら何も知らないくせに」


「そうですね」

 私はそう言うと、スイカを皿の上に置いた。

「ではまず、はなさんのことを教えてください」


「はなさんは、はなさんですよ」

 にっこり笑った。

「自分でもよく知らないのです」


「じゃあ、私が知って行ってあげましょう」

 彼女が縁側に置いた手に、私はてのひらを重ねた。

「だんだんと。いいですよね」


「はい」

 はなさんは動きを止めて、視線だけで私を見た。

「いいですよ」



 縁側から眺める景色は緑と赤や黄色と白が混じり合い、モネの描いた風景画のように淡く、目を鮮やかに染める。

 ゆっくりと、ゆっくりと『今』が流れていた。



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