デキるおじさん Part2
「ではまずここを飛んでみてください」
ビルの屋上で、はなさんは隣のビルの屋上を指差しながら、言った。
ビルとビルの間は30mぐらいあり、隣のビルのほうが1mぐらい高い。
「無理ですね」
私は生唾を飲み込み、1mぐらい上を見ながら答えた。
「っていうか冗談はやめましょう」
「デキないんですか?」
はなさんが挑発するように言う。
「デキないですね」
私は流されない。
「じゃあ、あなたはデキないおじさんなんですね?」
はなさんがさらに煽る。
「デキないおじさんには価値がないとでも?」
私は流されない。
「そんなことはないですけど」
はなさんはにっこり。
「それならあなたはクビというだけです」
そう言われて、私の中の何かが燃えはじめた。
何かとしか言えないが、その何かは激しく燃えはじめると、一瞬で私の理性を炎で包んだ。
「とあーーッ!!!」
私は、飛んだ。
30mのビルの隙間を。
1メートル上へ。
何かがそうさせたのだろうか?
隣のビルの屋上の手すりは遠かった。
足先すらかすりもせず、私は遥か下の通行人たちめがけ、落ちて行った。
「ふふふ」
通行人たちは笑った。
「この時を待っていた!」
まるでガイル少佐のサマーソルトだ、
通行人たちはくるりと上下逆になると、私の靴底を靴底で捕らえた。
「ドッキング完了。射出します」
そう言うと通行人たちは、みんなで私を放り上げた。
「メリーベル! お空へ放り上げるよ!」
どっぎゅーん!
私は元いた屋上に華麗に着地すると、はなさんに言った。
「どうせVRだろと思っていましたが、違ったんですね」
「ガチですよ」
はなさんはにっこり、
「あなたをデキるおじさんにするためなら何でもします」
私はごくりと生唾を飲んだ。
これからどんな試練が待っているというのだろう?
デキるおじさんになるためには、あとどれだけの
「合格です」
「えっ?」
「あなたには明日からデキるおじさんをやって貰います」
「えーっと」
私は答えた。
「まだ無理です」