恋するおじさん Part1
はなさんが馬場さんと結婚すると聞いて、私が笑えるわけがないだろう。私は『なんでもデキるおじさん』だ。宇宙へ飛んだ。一応宇宙服に身を包み、トイズストーリーのあのヒーローのように、足の裏からジェットを吐いて。
私は『なんでもデキるおじさん』だ!
はなさんと結婚もデキなければならないのだ!
追いついた。アダムスキー型の円盤がゆうるりと宇宙空間を浮遊している。あれに乗っているに違いない。はなさんは、馬場さんと、あの中で何をしているのだろうか?
嫌な場面が頭の中に浮かんだ。私はそれをかき消すため、円盤に乗り込もうとした。しかし入口がわからない。つるんとしていて、開きそうなところがない。仕方ないのでコンコンとノックをすると、窓から美女が覗き、姿を現した。
はなさんではなかった。
「あ。すみません。家を間違えました」
私がそう言うと、紫色の美しくカールした長髪の美女は、ふっと笑った。
私がはなさんを求めて宇宙空間を飛んでいると、さっきのUFOが後をついて来た。たまたま行き先が同じなのかな?と思ったが、どうやらそうではなさそうだ。私が左へ曲がると、それを見てUFOも左に曲がって来る。私が上昇すると、UFOも垂直方向へ動き、ひょんひょんひょんと音を立てながら、ついて来る。
「何か用でしょうか?」
私は思わず立ち止まった。
するとUFOのハッチが開く。なるほどそんなところから入れるのか、意外だった、と思いながら、招かれるままに私は中へ入った。
中はあったかく、空気があった。
テーブルには紫色のワインが置いてあり、紫のバラが活けてある。
等身大のおばさんの人形が置いてあった。紫色のワンピースを着ており、長い紫色の髪が顔の半分を隠し、胸には『月影千草』と名札が貼ってあった。
「紫はお好きですか?」
そう言いながら、さっき窓の中に見た美女が歩いて来た。
「うーん。欲求不満の色とか言いません?」
と、私は素直な感想を返した。
「こんな広い宇宙の片隅でお会いできたのも何かの縁ですわ」
紫の髪の美女はそう言うと、新しいグラスに紫色のワインを注いだ。
「乾杯いたしません?」
「すみません。運転中のアルコールは……」
そう言いかけた私の顎を掴むと、美女は無理矢理ワインを流し込んで来た。
私はのけぞりながら「ああっ……!」と声を発し、後ろへよろめいた。
「飲んだわね?」
美女の目つきが変わる。
「飲んでしまったわね?」
美女の目つきが、まるで脱皮したての蛇の、中身のなくなった目だけのようになり、私を不気味に見つめた。
「あなたは……?」
目の前がくらくらする。
性欲が異常に昂りはじめる。
「ふふふふふふふ。私の名前はレディー・ムラサキ」
美女はそう言うと、手を背中に回し、長い紫色の髪を持ち上げた。
「私の星には男性がいないの。だから、子供が産めないのよ」
聞いたことがあった。そういう星が、どこかにあると。
確かその星の名前は……ココミック星。では、この女性は、ココミック星人なのか。
やばい! 詳しくは知らないが、ココミック星人はヤバいやつらだと聞いている!
「ここに……」
レディー・ムラサキはくるりと背中を私に向けると、後頭部の髪を、左右に開いた。
「あなたの子種をくださいましっ!」
開いた後頭部に、まるで車の給油口のような穴が現れた。傍らに『ここに入れてね♡→●』と日本語で書いてある。
私はこんなことをしている暇はないのだ。
早く行かなければ、はなさんを永遠に奪われてしまう!




