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【SS】勇者「俺の知らないところでイベントが進んでる」

勇者♂「お前が、魔王軍幹部ジャアクウガだな!」


ジャアクウガ「ふふふ、たった4人で我が砦に攻めてくるとは!」


ジャアクウガ「愚かにもほどがあるぞ、勇者!」


ジャアクウガ「周りをよく見ろ! 貴様らは既に我が眷属によって囲まれている!」


勇者「なっ……しまった!」


戦士♂「ジャアクウガ……遂に、貴様と相まみえることができた」


戦士「10年前、貴様に切り落とされたこの右腕が! 貴様を打ち滅ぼせと疼いていやがるぜ!」


勇者「ん?」


僧侶♀「戦士さん! 周りの魔物は私たちに任せて下さい!」


魔法使い♀「アンタらの因縁の決着に、絶対に邪魔は入らせないから!」


戦士「みんなっ……! 恩に着るぜっ!」


勇者「待って待って待って! ちょっと待って!」


戦士「どうした勇者! 俺はもう我慢の限界だ!」


勇者「……因縁ってなに? え、なんか僧侶も魔法使いも事情を知ってる空気なんだけど」


勇者「というか、切り落とされた右腕? 何それ?」


勇者「じゃあ、いま現在、戦士の右肩からぶら下っている物ってもしかして?」


戦士「ああ、義手だ……」


戦士「つい先日、伝説の鍛冶職人から譲り受けた、究極鉄鋼カラクリ『アルティメットライトアーム』だ」


勇者「え? え? 俺だけ? 知らなかったの俺だけ? そんなイベントいつの間に進んでた?」


勇者「アルティメットライトアーム? ネーミングセンスわっる! どうかしてるんじゃねえか、その鍛冶職人」


戦士「勇者! 今はこんな話している場合じゃないぞ! 目の前にいる敵のことを忘れるな!」


ジャアクウガ「……」


ジャアクウガ「!」


ジャアクウガ「ははは! 話は終わったのか!? 最期の会話だ!せいぜい楽しむがいい!」


勇者「……ほらあ、空気読んで待っててくれてるじゃん!」


勇者「僧侶、魔法使い……いつから知ってたの?」


僧侶「半年ぐらい前かな?」


魔法使い「そうね、それぐらいだったかしら」


勇者「いつよ!? いつそんな話した? 何で、俺だけ知らないの!?」


僧侶「え? 野営してる時に焚火を囲んで……勇者様もいたよね?」


魔法使い「ええっと、いた? かな」


勇者「疑問形じゃーん! 知らないよー! 全然知らなかったよー!」


勇者「教えてといてー、そういうの」


勇者「知ってたらさ、こっちも空気読んで二人の対決盛り上げる空気作るからさー」


戦士「す、すまん」


勇者「もう次から気を付けてねー」


僧侶「わ、わかったわ」


魔法使い「ええ、ごめんなさい」


勇者「ごめんね! ジャアクウガ! 話し終わったから!」


ジャアクウガ「ふははは! 今度は貴様の首を切り落としてやろう戦士よ!」


戦士「いくぜ! みんなっ!」


みんな「応っ!」



酒場


勇者「いやあ、戦士お疲れ!」


戦士「ありがとう勇者、お前らのサポートのおかげだ」


勇者「もう、隠し事はなしだぞ!」


戦士「別に隠していたわけじゃなかったんだが」


勇者「ほら、僧侶、魔法使いも飲んで飲んで!」


勇者「せっかくだから聞かせてくれよ! みんなの生い立ち!」


戦士「それは構わないが……俺の話は、もう、みんなには話してるしなあ」


勇者「『みんな』ね」


戦士「ああ! すまんすまん! そうだな、今日は全部語ってやるよ勇者!」


勇者「ああ! 楽しみだ戦士!」



魔王軍大幹部ダイアーク「くらえ! 極大闇魔法ダークネス!」


戦士「ぐああああっ!」


勇者「戦士っ!」


勇者「僧侶! 戦士に回復魔法を!」


僧侶「はいっ」


僧侶「すぐに治します。回復魔法キュア―!!」


戦士「ぐっ……ありがとう僧侶」


僧侶「感謝の言葉なんて必要ありませんよ」


僧侶「貴方が死んだら、お腹の子が父親を失っちゃいますからね」


勇者「すとおおおおおおおおおおおおおっぷ!!!!!」


ダイアーク「ん?」


勇者「ごめん、ちょっとだけ時間をくれ」


魔法使い「な、なにしてるのよ勇者! 敵に背を向けるつもり!」


勇者「経験上、魔王軍の人たちは融通が利く! 黙っていろ魔法使い!」


ダイアーク「わ、儂はかまわんぞ」


ダイアーク「魔王軍大幹部として、儂は全力の貴様らと戦いたい」


ダイアーク「憂いがあるなら、今のうちに解いておくがよい」


勇者「ほらな」


魔法使い「……」


勇者「お腹の子ってなんだよおおおおおおおおおおおお!」


勇者「聞いてねえよおおおお!」


戦士「えぇ……」


僧侶「この間、報告したじゃないですか……」


勇者「いつだよ! こんなビッグイベント忘れるわけねえだろ!」


魔法使い「いつだったっけ?」


僧侶「何言ってるんですか、この間の飲み会ですよー」


戦士「ジャアクウガを倒した後の打ち上げだな」


勇者「え? なにそれ? 本当に俺が忘れているだけ?」


魔法使い「あ、思い出した! そうそう、あの時ね」


僧侶「でしょう? 言いましたよね私?」


戦士「……いや、報告したのは二次会でだった気がする」


戦士「勇者は……いなかったな」


勇者「え? 二次会? え?」


魔法使い「ああ、そうか二次会だ、二次会」


僧侶「そうでした」


勇者「あ、あれ、涙が」


勇者「だって、酒場で……疲れたから今日はもうお開きにしようって」


戦士「いや、確かにあの後宿屋に戻ったんだが、寝付けなくてな」


戦士「ちょっと夜の散歩に出かけたら、僧侶と魔法使いに出会って」


僧侶「私も寝付けなくて」


魔法使い「私は、飲み足りなかったから遊びに行こうと」


戦士「それで、せっかくだからって3人でバーに」


勇者「ああ、そういうことねっ! それなら仕方ないかなっ!」


勇者「ってなるかヴぉけ! 問題の本質はそこじゃない!」


勇者「その後でも、いくらでも報告する機会があったでしょ!」


戦士「いやすまん。ついうっかり、報告を済ませた気になっていた」


僧侶「ごめんなさい、勇者様」


勇者「……おめでとう」


勇者「魔法使い、お前は俺に黙っていることとかないよな?」


魔法使い「な、なによ! 何もないわよ!」


勇者「そうか……ダイアークっ! 待たせたな!」


ダイアーク「ふははは、お腹の子ともども冥途に送ってやろうではないか!」


勇者「その子は、俺たちの未来の希望だ絶対にやらせはしない! 戦士! 僧侶! 魔法使い! いくぞ!」



みんな「応っ!」



探偵事務所


勇者「すみません、突然、こんな依頼を」


探偵「いえいえ、勇者様の頼みです。私にお任せください」


勇者「とりあえず、魔法使いだけで構いません。彼女の動向を探ってください」


探偵「勇者様の知らないところで起きているイベント等ですね、ご安心を」


探偵「これでも、腕には自信があるんです」


勇者「金には糸目をつけません、よろしくお願いします」



武闘仙人修練館


武闘仙人「よくぞ、きた勇者一行よ」


武闘仙人「古来よりの盟約に従い、諸君らに人類最強の武術」


武闘仙人「神龍拳の究極奥義を授けよう」


勇者「ああ、よろしくお願いします!」


武闘仙人「では、勇者様はこちらへ」


勇者「え? 他のみんなは?」


武闘仙人「勇者様へ授ける奥義は秘中の秘、たとえ、勇者様の仲間と言えど見せるわけには参りませぬ」


勇者「あ、そうなのか、じゃあ仕方がないな」


武闘仙人「安心なされ、他の方々にも神龍拳の奥義をお教えしますゆえ」


武闘仙人「格段のパワーアップは約束されたようなものですじゃ」


戦士「そう心配するな勇者、俺たちは俺たちでちょっと鍛えてくるだけだ!」


僧侶「私たちも、勇者様に負けず修行に励みます!」


魔法使い「まあ、たまには体を動かすのもいいかな?」


勇者「そっか、じゃあ皆も頑張れよ!」


みんな「応っ!」



勇者「……」


武闘仙人(なんと見事な座禅。精神が完全に研ぎ澄まされておる……これなら)


勇者「ふぅ、先生……わかりました」


武闘仙人「答えを聞こう」


勇者「強さとは、膂力や技術に頼るだけのものではない―――強さとは心」


勇者「何事にも動じぬ、揺るがぬ心。それこそが、神龍拳究極奥義」


武闘仙人「見事じゃ……! もうお主に教えることは何もない!」


武闘仙人「魔王を倒し! 世界に平和をもたらすがよい!」


勇者「はいっ! 先生!」



魔王城


魔王「……我を倒しに来ただと?」


勇者「ああ! 貴様に滅ぼされた町や村の恨みはらさせてもらうぞ!」


戦士「先手必勝!」


戦士「神龍拳奥義 極炎! 演舞竜殺!!」


勇者「ええっ!!??」


僧侶「神龍拳奥義 極氷! 寒寒諤諤!!」


勇者「かんかんがくがく!?」


魔法使い「神龍拳奥義 極雷! 来々軒!」


勇者「ラーメン屋っ!!」


魔王「ぐ、ぐおおおお!!」


勇者「待ってえええええええええええ!」


勇者「なんだよ! お前らその奥義!! 超、強いじゃん!」


魔法使い「何言ってるの勇者! 貴方こそ究極奥義! 極光拳を放つチャンスよ!」


戦士「そうだ! 見せてくれよ神龍拳の究極奥義!」


僧侶「あの厳しい修行の日々を思い出して! 勇者様!」


勇者「わかった! 神龍拳究極奥義! 極光拳!」


魔王「……」


勇者「はい! でません!」


勇者「だってそんなに厳しい修行してないものっ! ずっと座禅組んでただけだものっ!」


勇者「なんだよ! お前らだけ格好いい奥義授かりやがって!」


魔王「なにをやっているのだ」


勇者「俺が知りたいよ! 何やってんだよ俺! もう心がスキップスキップランランラン♪だよ!」


魔王「と、とりあえず、回復を……」


???「させるかっあ!! 閃光斬り!!!」


魔王「ぐあああああっ!」


魔法使い「あ、アンタは!」


探偵「待たせたな、魔法使い!」


勇者「何してんのお前ええええええええ!!!」


探偵(お久しぶりです。勇者様!)


勇者(いや何しに来た!!!)


探偵(ご安心を! 私と勇者様の雇用契約は口外していません!)


勇者(そういう問題じゃねええええええ)


探偵「魔法使い! もう俺は偽ることをやめた! お前を愛している!」


魔法使い「なっ!? 突然、なによっ!?」


探偵「お前は俺が守る! さあ、かかってこい魔王!」


魔法使い「アンタってやつわ!///」


勇者「もうやだ! 何があったの! 知らないイベント勝手に進めないで!」


魔法使い「な! 私たちの間にイベントなんて……まだ起きていないわよ!」


探偵「ああ、そうだな! 俺たちの物語は今から始まるのさ!」


魔法使い「探偵っ///」


魔王「ぐ……何なのだ貴様らは」


魔王「そもそも、なぜ私を倒そうとする……一体、我が貴様ら人類に何をしたというのだ」


戦士「しらをきるつもりか魔王!」


僧侶「貴方のしてきたこと許されませんよ!」


魔王「側近はおるか!」


側近「は。御傍に!」


魔王「一体、何が起きている」


側近「逆恨みというやつです魔王様、我らが魔王様が世界に君臨しようとしているのに嫉妬しているのです」


魔王「誰がいつ、世界に君臨しようとした?」


側近「いえ我らが魔王様の御心をお察しして、世界征服を進めておりました」


魔王「……聞いていないんだが」


勇者「……」


魔王「だいたい、こいつら何で玉座の間まで来てるんだ?」


魔王「魔王軍幹部達はどうした?」


側近「既に、そこにおる勇者達に滅ぼされております」


魔王「聞いていないんだけど!」


側近「魔王様の、余計な心配をかけまいと」


魔王「え? みんな死んだの? ジャアクウガは?」


側近「残念ですが」


魔王「ダイアークは?」


側近「先日四十九日を迎えました」


魔王「報告してよっ! 上司だよ! 我、上司だよ!」


側近「すみません」


勇者「……魔王」


魔王「勇者……我とともに来い」


勇者「なにを」


魔王「我は、我の関せずところで進んでいく物語に飽いた」


魔王「この怒りをどこにぶつければいい」


勇者「……そうだ、その気持ちすごいわかるぞ」


勇者「俺は勇者のはずなのに。物語の中心のはずなのに」


勇者「あるのはいつも、疎外感ばかり。俺は! 主人公なのに!」


魔王「我もだ勇者! いまこそ我らが立つべき時!」


勇者「世界平和? 知ったことか!」


魔王「世界征服! 知ったことか!」


勇者&魔王「世界をぶっ壊してでも、世界の、物語の中心に躍り出てやる!!!!」


戦士「勇者! なんてことだ!」


勇者「ふはは、ふはああっはっはっはっは!」


勇者「力が漲る! 力が漲るぞおおおおおおおおお! これが闇の力! これが邪悪の力!」


魔王「そう、それこそ邪神より与えられるダークパワー」


魔王「この力をもってして、思う存分暴れようぞ! 勇者よ!」


勇者「応っ!」



あの日、俺たちは勇者を失い


新たな敵と相対することとなった


≪闇・勇者≫世界に闇をもたらす存在


邪神より力を授かった、二人目の魔王


だが、俺たちが必ず目を覚まさせてやる!


なにより平和を愛した男を取り戻してやる!


戦士「みんな、ポータルは持ったな?」


僧侶「ええ! いつでも裏世界に旅立てるわよ!」


魔法使い「邪神さえ封印すれば、失われた過去が戻ってくる!」


探偵「そして新たな可能性が生まれれば世界は救われる!」


側近「早く行きましょう! 待ちくたびれましたよ!」


戦士「待ってろ邪神! お前を倒して世界に平和を取り戻す!」


闇・勇者&魔王「ちょっと待てええええええええ!」


おわり




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