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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女コミカライズ連載開始!
第五章

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73話 フィリアの冒険者への道

 俺はフィリアの身体をそっと離すと、その目をまっすぐに見つめた。


「フィリア様に、大事な話があります」


「だ、大事な話?」


 フィリアが顔を赤くして、ちらちらと俺を上目遣いに見る。

 なにか勘違いさせてしまったかもしれない。


 大事な話というのは、ネクロポリス攻略の名目上の指揮官の一人にフィリアが選ばれたということなんだけれど。

 俺は手短にそのことをフィリアに伝えた。


 フィリアは息を呑み、それから俺に尋ねた。

 

「ネクロポリスって、すごく危険な場所なんだよね?」


「そうですね。おそらく通常の冒険者集団が挑んでも、一瞬で全滅すると思います」


「そんなところにわたしが行くのは、怖いよ」


「クレオンたちも、フィリア様とイリス殿下の安全確保については考えているとは思いますが……」


 皇女たちの警備が万全といえるだろうか?

 

 首尾よく敵を倒せているうちはいい。クレオンは帝国最強の騎士の一人だし、それ以外の攻略メンバーも実力者揃いだろう。


 それでもネクロポリス攻略に失敗する可能性は高いと俺は見ている。

 そうして救国騎士団が撤退にうつったときは、皇女たちを守っている余裕などなくなるだろう。


 フィリアが表情をくもらせる。


「クレオンって、ソロンを追い出した人のことだよね。わたし、そんな人に守られるのは嫌だな」


「ありがとうございます」


 俺は微笑んだ。

 フィリアが不安そうに俺を見つめる。


「ソロンは、わたしと一緒に……」


「もちろん、俺もフィリア様の護衛としてついていきますよ」


 フィリアがぱっと顔を明るく輝かせた。


 遺跡攻略に投入されるのは、救国騎士団の中核メンバーだけではない。

 他にもかなりの数の冒険者をかき集めてくるらしい。


 だから、そこに俺が参加することは不可能じゃない。


 クレオンは首を縦に振らないかもしれないが、フィリアの希望だといえば通るだろう。


 俺は遺跡攻略の主要メンバーとしては役に立たない。

 剣技、攻撃魔法、防御、回復、支援のどれをとっても、俺は中途半端だからだ。


 けれど、逆に言えばどの面でもほどほどのスキルがあるから、いざとなったらフィリアを守りながら撤退するときには役立つはずだ。


 それに俺の強みはもう一つある。


「ソロンだったら、わたしを見捨てたりしないものね」


 フィリアが嬉しそうに言った。

 そのとおり。


 他の冒険者と違って、俺はフィリアの師匠だ。


 だから危険な局面でも、皇女を置いて一人だけ逃げたりはしない。


「とはいえ、俺の力だけでフィリア様を守れるとは限りません。もっとも良いのはフィリア様が自分の力で自分を守れるようになることですよ」


「でも……そんなの急に無理だよ」


「もちろん、俺やクレオンみたいに手慣れた冒険者のように遺跡を歩くことは難しいと思います。ですが、身を守るといっても、そのレベルはいろいろです。たとえば……」


「たとえば?」


「そうですね。ちょっとした遺跡のトラップに引っかからないようにするとか、あるいは遺跡の瘴気に当てられて体調を崩さないようにするとか、そういうことです。こういったことができるだけでもだいぶ安全度は違ってきますから。それに簡単な防御魔法も使えるようになってほしいですね」


「ソロンがそれを教えてくれるの?」


「もちろんです」


「やった!」


 フィリアが弾んだ声で言い、ガッツポーズをとる。

 喜んでくれるのは嬉しいけれど、ネクロポリス攻略は二週間後に迫っているらしい。

 

 それまでにフィリアに十分なレベルの訓練を積ませるのは、簡単なことではなさそうだった。


 フィリアが俺の目をのぞき込み、きらきらと目を輝かせる。


「今からさっそく授業をする?」


「そうしましょう。善は急げ、といいますからね。ですが……」


 俺はぽんとフィリアの頭に手を置いた。

 そして、微笑む。


「まずは着替えてください」


「はーい」


 フィリアが元気よく返事をして、立ち上がった。

 俺が部屋から出ていこうとすると、フィリアに引き止められた。


「ソロンがわたしを着替えさせてくれてもいいんだよ?」


「それはクラリスさんに頼んでくださいね」


「残念」


 フィリアが心底残念そうな顔をしたので、俺はちょっと悪い気がしてきた。

 いや、十四歳の女の子を裸にして、下着を着せるなんて俺がやるわけにはいかないんだけれど。


 だいたい、フィリアはお姫様だけれど、性格からしてドレスとか手間のかかるものでないかぎり自分一人で着替えることのほうが多いと思う。


 俺は言った。


「俺がしてあげられるのは、魔法の訓練や勉強の方法ですからね」


「あとは、バスタオル姿のわたしを抱きしめたりとか?」


「そうそう。……いや、それは違います」


 フィリアと俺はくすくすっと笑いあった。

 それからフィリアがひらひらと俺に手を振った。


 それを合図に、俺は部屋を出た。

 初級レベルの攻撃・防御魔法を教えて、遺跡に共通して必要な知識の一部を教えたら、俺はレニン神殿の遺跡にすぐにでもフィリアを連れて行くつもりだった。


 俺がついていれば、レニン神殿ぐらいの簡単な遺跡だったらまず危険なことはないだろう。

 そうすれば、いよいよフィリアは冒険者の道を一歩踏み出すことになる。

 

 並行してネクロポリスのことも調べないといけない。

 昨日作業していてわかったけれど、やっぱりこの屋敷にあるような普通の本ではぜんぜん役に立たない。


 俺は決めた。

 帝立トラキア大図書館に行こう。


 帝国の威信をかけて、何百万冊という本がそこには集められている。


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