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7話 皇女フィリア

 目の前の少女はメイドの振りをしていたけれど、本当は皇女なんだという。

 理解した俺は顔がさあっと青ざめていくのを感じた。

 洗練された振る舞い。銀色の髪が特徴的な驚くほど美しい容姿。それに不自然なほどの明るさ。

 たしかにこの少女はメイドではなく、高貴な身分だと思ったほうが自然だ。

 少女は慣れた様子で、広い部屋の奥へと進み、そこにある赤い豪華な椅子に腰掛けた。

 俺は慌てて部屋のなかに入り、少女の前にひざまずいた。


「どうしたの?」


「……殿下。どうかさきほどまでのご無礼をお許しください」


 俺はかすれた声で言った。


「無礼? ソロンは何も失礼なことはしていないよ?」


「しかし、皇女殿下と知らず、目下に対するような態度で話してしまいました」


「わたしが『メイドのリア』だって名乗ったからでしょ? なら、ソロンの責任じゃないよね?」


「そうはおっしゃいますが……」


「ごめんね。困らせちゃったかな?」


 申し訳なさそうに、フィリア殿下が上目遣いでこちらを見ている。

 俺は深呼吸した。

 皇女殿下が怒っているわけじゃない。誰かに見られているわけでもない。

 なら、不敬罪になるとか、深刻に考えなくてもいいはずだ。

 俺は首を横に振った。


「困ってはいません。少し驚いただけです。でも、どうしてこんな嘘をついたんですか?」


「あなたがどんな人か知りたかったの。わたしは皇女だから、みんな緊張しちゃうし、本音では喋ってくれないし」


「でも、メイドに変装すれば、相手の本当の姿を知ることができるというわけですね?」


 フィリア殿下は小さくうなずいた。

 無邪気に見えて、いろいろ考えている子なんだな、と思う。

 そういう理由なら、嘘をつかれたのもそれほど怒る気にはならない。

 俺はにこりと笑って、皇女殿下に尋ねた。


「それで、私がどんな人か分かりましたか?」


「優しくて謙虚な人だなって思った。すごく強いのに、偉そうにしないんだね。知り合ったばかりのメイドのお願いも、聞いちゃうんだ」


 ぴょんっと、飛び跳ねるようにフィリア殿下がこちらに身を寄せる。

 フィリア殿下は瞳をきらきらと輝かせ、俺をまっすぐに見つめている。


「わたしがソロンのことを英雄だって思っているのは本当だし、会えて嬉しいって思ってるのも本当だよ?」


「私はそれほど立派な人物ではございません。しかし、殿下にそう仰っていただけるのは身に余る光栄です」


「そんなに固くならなくていいのに。もっと普通に喋ってくれていいよ。『メイドのリア』と話すときみたいに」


「しかし……」


「これからソロンはわたしの師匠になるんだから。『メイドのリア』との約束、守ってくれるよね?」


「皇女殿下のご命令とあらば喜んで。そもそも私は殿下の家庭教師となるべく、この場に参上しているのですから」


 そう言うと、なぜかフィリア殿下は少し不満そうな顔をした。なにか機嫌を損ねるようなことを言ったかな。

 しかし、すぐに殿下は明るい笑顔に戻った。


「よろしくね。ソロン。あなたに教えてもらえること、楽しみにしているから」


 フィリア殿下は綺麗な手を俺に差し伸べた。

 握手しよう、ということみたいだ。

 俺は一瞬ためらってから、右手を差しだして、握手に応えた。

 

「殿下のご期待に添えれば良いのですが」

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[気になる点] メイドらしからぬ弁えていない態度をしておいて人となりが分かるもなくない?それに求めていた英雄本人だと分かってるのに試すような真似をするのも違和感がある。
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