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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる  作者: 軽井広@北欧美少女ノベル5巻が8/25から発売!
第七章

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189話 冒険者デビュー


 翌日、俺とフィリアはネクロポリスへと到着した。

 白壁の古代の宮殿が目の前にそびえ、その庭園跡を、俺たちは歩いている。


 フィリアは純白と青の美しい冒険者服を身にまとっていた。

 手にはリンゴの木の杖を握りしめている。俺が贈ったものだ。


「前はたくさんの人たちと一緒だったけど……今日は二人きり、だよね」


「そうですね。それが不安なところですが……」


「きっと大変だと思うけど、でも、ソロンと二人きりで冒険に来れて嬉しいな」


「俺もですよ。だいぶ時間がかかってしまいましたが、約束でしたからね」


「うん。約束だったものね」


 いつか師匠の俺と弟子のフィリアの二人で、遺跡に行く。そして、遺跡の攻略方法を実地で教える。

 そう約束していたのだ。


 いろいろあって先延ばしになってしまったし、それに、ほんとはもっと手頃な遺跡に来るはずだったのだけれど。


 今回、俺とフィリアは二人のみで、第四層までとはいえ、最難関遺跡の一つ、ネクロポリスを進まないといけない。

 前回と比べれば、フィリアはかなり成長したし、普通の冒険者じゃ扱えないような高度な魔法も操れる。

 ただ、例えば、魔王の力を利用する大魔法「王の炎(シャーエ・ショーラ)」は、そう何度も使えるわけではない。

 フィリアの魔力量だって無限というわけじゃないからだ。

 本格的に遺跡に挑むのも、フィリアは初めてだし、まだまだ未熟な面がある。


 実際、屋敷の少女たち――クラリスやリサ、ライレンレミリア、ルシルたちみんなが心配していたが、特にソフィアは俺たちのネクロポリス行きをかなり不安に思っているようだった。

 というより、力尽くでも止めようというぐらい強く反対していたのだ。、

 目的地の「死の影の谷」は冒険者二人のみしか入れないし、その秘宝を手に入れるにはフィリアの参加が絶対に必要だった。


 だから、ソフィア自身は冒険についていけないから、不安なのだと言っていた。、


「でも、最後には認めてくれたよね?」


「まあ、そうですが……」


 フィリアがソフィアになにか耳打ちし、その途端、ソフィアは顔を赤くして、反対するのをやめてしまった。

 フィリアはソフィアに何を言ったのだろう?

 

 気になったが、二人とも教えてくれなかった。

 

 ともかく、こんな危険な行動に出たのは、アルテとフローラの双子を助けるためだった。

 特にアルテのほうの病状は命の危険もある状態だ。


「そう。わたしたちが成功すれば、二人を助けられるんだよね」


「そのとおりです」


「うん」


 遺跡に入り、人類の居住区である第一層を通り過ぎ、第二層に入る。

 第二層はかなり昔に攻略が完了していて、道も整備されている。


 とはいえ薄暗いし、洞窟のようでいながら、無機質な石の壁が広がっているのも不気味だ。


「フィリア様、ランプをお願いします」


「はーい」


 俺がこないだ教えたとおりの手順で、フィリアは灯油ランプを点灯した。

 常に魔法を使って明かりを灯していては、魔力がもったいない。


 魔物もまったく出てこなかった。直下の第三層も前回の作戦で全域の攻略が完了している。だから、魔物が下の層から上がってくることも少ないんだろう。


 と思っていたら、曲がり角の向こうから、大きな生物の影が現れた。

 黒色の狼のような魔物。眼が黄色く爛々と光っている。


 魔石狼。ネクロポリスの固有種。

 体内の中心部に魔石を宿した強敵だ。


 フィリアがびくっと震える。


「あれって……」


「はい。前回のネクロポリス攻略作戦のとき、リサさんを襲った魔物ですね」


 そして、間一髪のところで、俺が倒した魔物だ。

 なかなかの強敵だが……今のフィリアなら倒せるかもしれない。


「さて、フィリア様の冒険者デビューと行きましょう。あの魔物を倒してしまいましょう」


「わ、わたしにできるの……?」


「もちろんです。前衛の俺が斬り込んで弱体化させ、フィリア様に止めを刺していただくきます」


「それって、倒せてもソロンの力のおかげじゃないの?」


 俺は微笑んで首を横に振った。


「これが前衛と後衛のあるべき役割分担ですから。俺が弱らせ、フィリア様が仕留める。どちらも必要なことです」


 もちろん、俺一人でも倒すことができないこともないだろう。

 だが、前回はそれなりに苦戦した。


 フィリアとコンビで戦えば、楽に倒せるはずだ。

 そう言うと、フィリアは顔を輝かせた。


「そっか。……ほんとに、わたしがソロンの力になれるんだ」


「さあ、冒険者としての、魔術師としてのフィリア様の力を見せてください」


 俺は言い終わると同時に、宝剣テトラコルドを鞘から抜き放った。

 そして、魔石狼に斬り込み、その頭部を吹き飛ばす。


 だが、それでは魔石狼は死なない。

 その生命力の中核となっている魔石を破壊する必要がある。


 俺は深々と宝剣を魔石狼に突き刺した。

 ここで魔石を破壊するのに、前回はかなり時間がかかり、危ないところだった。

 

 だが……。


「フィリア様! このタイミングで中火力程度で炎魔法を撃ってください!」


「了解!」


 フィリアはリンゴの木の杖を高く掲げ、「炎よ!」と叫んだ。

 その瞬間、フィリアの眼が一瞬、赤く輝いた。


 杖から放たれた炎は渦を巻き、その場の温度を急激に上昇させる。

 ……中火力でいいと言ったのだけれど。

 フィリアは力の加減を誤ったのか、かなりの勢いの炎を生み出し、それが奔流となって魔石狼を襲った。

 俺は慌てて後ろへと飛び退った。


 フィリアの炎魔法に飲み込まれ、魔石狼の体が溶けていく。

 やがて中央の魔石が露出し、それも粉々に割れた。

 

 フィリアはきょとんとした表情でくびをかしげた。


「勝った……の?」


「やりましたね。これでフィリア様も冒険者としての一歩を踏み出した、というわけです」


 俺の言葉にフィリアは青い瞳を見開き、そして嬉しそうに微笑んだ。


「うん! ソロンのおかげだね!」


「ありがとうございます。後は魔力のコントロールを上手にできるようになると完璧ですね」


「はーい」


 フィリアは俺の言葉にうなずくと、ごきげんな様子で、前へと小さな足を踏み出した。

☆あとがき☆

いよいよ第四層へ!


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