179話 ソフィアとデート?
アルテの体を元通りに治し、フローラを目覚めさせる。
それを実現するには、まずはそのための方法を知らなければならない。
ということで、俺はソフィアと話をすることにした。
ソフィアは教会の聖女だし、回復魔法を得意とする魔術師だ。
なにか良い策があるかもしれない。
二人きりで話したかったから、夕食後に俺たちは連れ立って屋敷の廊下を歩いていた。
もう時刻は夜九時を回っている。
ソフィアはそわそわしていた。、
「そ、ソロンくん。こんな時間に……どうしたの?」
ソフィアは淡い水色のワンピースという私服姿だった。
緊張した様子で、翡翠色の瞳で俺を見つめる。
「ちょっとアルテたちを助ける方法について話したくて」
「あっ……そっか」
ソフィアは複雑そうな表情を浮かべたが、素直に俺についてきた。
やがて俺たちは屋敷の二階の端に来た。
そこには天井に向けて木製のはしごが立てかけられている。
ソフィアが首をかしげ、金色の髪がふわりと揺れる。
「これってなに?」
「はしごだよ」
「えっと、それは見ればわかるけど……」
「まあ、試しに登ってみてよ」
俺がにこにこしながら言うと、ソフィアは不思議そうにうなずいた。
そして、はしごに手をかけ、急に頬を赤くした。
なにか言いたそうにもじもじしている。
俺は理由に気づいて、頭を下げた。
「俺が先に登るよ」
「うん……その……下着が見えちゃうから。……それとも……わたしの下着、見たかったりする?」
俺は慌てて首を横にふる。
ソフィアはちょっと残念そうに「そっか」とつぶやくと、俺に道を譲った。
俺が先に登り、ソフィアを後から引っ張り上げる。
つないだソフィアの手は、フィリアほどではないけれど、小さかった。
ソフィアは驚いた様子だった。
はしごの上は屋敷の屋根だったからだ。
「屋根の上に上がれるようにしてみたんだよ。景色も良さそうだし」
俺は腰を下ろし、空を見上げた。
ソフィアもつられて顔を上げる。
帝都とはいえ、郊外はもう真っ暗で、まばらな家の明かりが見えるのみだ。
代わりに、頭上には満点の星空が広がっている。
「綺麗……」
ソフィアが小さく、嬉しそうにつぶやいた。
そして、星は空だけにあるわけじゃなかった。
遠く向こうに見える帝都中心部のなかで、ひときわ大きく輝く物がある。
魔法学校の青い星。サファイアでできた魔法学校の象徴だ。
俺とソフィアがかつて一緒にいた場所でもある。
「風が気持ちいいね、ソロンくん」
「気に入ってもらえたようで何より」
「ここってまだ、皇女殿下やクラリスさんは来たことがない?」
「そういえばそうだね。最近登れるようにしたばかりだから」
「そっか。ソロンくんとここに来るのは、わたしがはじめてってことだね」
ソフィアはくすっと笑った。
そして、俺のすぐとなりに座る。
互いの体が触れ合うほどの距離で、ソフィアの暖かさが伝わってくる。
「ソロンくん……」
ソフィアが俺を向き、小さな声で俺の名前を呼ぶ。
その整った顔が俺のすぐ側にあって、みずみずしい唇も目と鼻の先にあった。
俺は思わずどきりとする。
ソフィアはそんな俺の内心を知ってか、その頬はほんのりと赤かった
「ソロンくんと出会うのだって、わたしが一番はやかったもの。フィリア殿下よりも、クラリスさんよりも、ルーシィ先生よりも」
「魔法学校の一年生だったときだから、もう九年前だよね」
「あのときのわたしは九歳の子供だったけど、いまは違うの」
たしかに目の前のソフィアは、もう子供じゃない。
十八歳のすらりとした美しい女性だった。
「だからね、こんなふうに夜に二人きりで呼び出されると……デートなのかなって勘違いしちゃんだよ?」
ソフィアは柔らかく微笑み、翡翠色の瞳で俺を見つめた。
【あとがき】
久々にソフィアのちゃんとした出番が……。
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