166話 神父との戦い
すでにレティシアやルシルたちは戦闘できない状態になってしまった。
ガポンの魔王の力の前に、なすすべもなく敗れたのだ。
いま、ガポンを倒し、ルーシィを助けられるのは、四人のみ。
俺、聖女ソフィア、軍人のクレア、そして皇女フィリアだ。
ソフィアの聖女としての力が切り札ということになる。
そして、フィリアも俺のために魔力を供給してくれている。
「ソロン、わたしの力を使って」
「くれぐれも無理はしないでくださいね?」
前回、ガレルスと戦ったときは、フィリアは魔力を俺に与えすぎて寝込んでしまった。
今回は中級の支援魔法を習得したから、より効率よく俺を強化できるはずだし、前回みたいなことにはならないとは思うけれど。
「わたし、ソロンのためだったら、少しぐらい辛い思いをしても平気だよ?」
「ありがとうございます。でも、俺が平気じゃないですから」
もし俺のせいで、フィリアが取り返しのつかないようなダメージを負ったら……。
考えただけでもぞっとする。
魔王の子孫の魔力は無尽蔵なわけではなく、すべてを奪えば廃人化してしまう。
「でも、ソロン。いま勝たなけいと、ルーシィも助けられないし、わたしたちがお屋敷に戻ることもできないよ」
「そうですね。だからといって、フィリア様を犠牲にしたりはしません。フィリア様も、ルーシィ先生も、ソフィアもクレアも、みんな無事に戻るんです」
フィリアは青い瞳で俺を見つめ、そしてリンゴの木の杖をかまえ、俺に強化の魔法をかけた。
体に不思議な力が宿るのを感じる。
同時に、ガポンが光の弾を再び放った。
俺は宝剣テトラコルドでそのすべてをはじき返した。
二度目ともなれば、相手の攻撃も予測がつく。
なにより、フィリアの援護を受けているから、敵の攻撃の威力が高くても対応できるのだ。
ガポンが感心したような顔をする。
「ほう。避けきったか」
「神父の攻撃は単調だからね」
実際、今の所、ガポン神父は大理石で作った神像を配下として戦うか、青銅の杖から光の弾を撃つか、二つの攻撃手しか使っていない。
もともとガポンは魔術師ではないし、仮に魔王の力を手にしたとしても、使えるスキルは限られてくる。
なら、その弱点に、俺たちは勝機を見つけることができるはずだ。
ガポンは俺の言葉に答えず、代わりにフィリアとソフィアを見比べるように目を動かした。
「聖女と、魔王の子孫、か。どちらも今後の計画に役立つかもしれんな。魔王は七体いる。その復活のための犠牲と依代は多ければ多いほどいいのだから」
「フィリア様やソフィアを犠牲にするなんてことは、させないさ」
「そう言っていられるのも、今のうちだけだ。……魔法剣士ソロンよ!」
ガポンが杖を床に触れさせると、大理石の巨像が一瞬で造成され、俺たちに襲いかかった。
俺とクレアがそれぞれ剣でその攻撃を防ぐ。が、大理石の神像も前回戦ったときより強くなっているようだった。、青銅の杖の力の影響なのか、それともガポン神父が魔王の力の扱いになれたのか。
さらに光の弾の攻撃が大量に重ねられる。
この攻撃をかわしつつ、神像を倒し、ガポン神父自身までたどり着いて攻撃を加えないといけない。
はたしてできるんだろうか。
俺は神像の一体を斬り捨てたが、次に来る光の弾が防げるか怪しい。
避ける、という選択肢はなかった。俺の後ろにはフィリアとソフィアがいて、俺に守られているからだった。
さっきはソフィアが魔法障壁で俺を守ってくれた。
だが、今は神像を倒すことに精一杯で、しかも魔法を使った直後だから、障壁を張ることができない。
「ソロン!」「ソロンくん!」
フィリアとソフィアの悲痛な声がする。
俺は直撃を覚悟した。
だが、ガポン神父の攻撃は俺に届かなかった。
「大丈夫ですか、ソロンさん?」
俺の目の前にはクレアの後ろ姿があった。
水晶剣を振るい、敵のすべての攻撃を薙ぎ払ってくれたのだ。
さすが聖人の武器だけあって、その力は絶大なものがある。
「ありがとう。助かったよ、クレア」
「ソロンさんと一緒に戦えて、お礼を言ってもらえるなんて、嬉しいですね。夢みたいです」
冗談めかしてクレアは言い、そして、水晶剣を高く構えた。
その剣先はまっすぐにガポンに向けられていた。
「魔王の力と聖人の力、どちらも借り物であることは相違ありません。でも、わたしは正しく力を使い、神父は誤った使い方をしています」
「私は国のため、いや、神のしろしめす全世界のために魔王の力を利用しているのだ。私情で動いている君とは違う」
「わたしは……大事な人のために力を使っているんです!」
そしてクレアは前へと踏み込み、水晶剣を振るった。
☆あとがき☆
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