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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女2&キミの理想のメイドになる!
第六章

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148話 槍術士レンと聖騎士クレオン

 俺が屋敷の入口へと行くと、救国騎士団団長クレオンと槍術士レンがいた。

 馬車用の車寄せの下に並んで立っている。


 クレオンはいつもどおり白い騎士の制服を着ていた。

 美形の騎士として有名なクレオンが夕焼けを背に立つと、なかなか絵になる。


「救国騎士団の団長様が、こんな郊外のちっぽけ屋敷になんの用かな」


 俺が皮肉っぽく問いかけたものの、クレオンは冷たい無表情のままだった。


「ちっぽけ、ということはないだろう。皇女フィリア殿下と聖女ソフィアをはじめに、アルテたち騎士団幹部まで大勢の女性を住ませているんだから」


 考えてみれば、この屋敷には聖ソフィア騎士団の元幹部のほぼ半数が住んでいる。

 といっても、アルテたちは重傷で魔法が使えず、かつての能力は失ってしまっているけれど。


 残りの聖ソフィア騎士団の幹部は、ほぼ救国騎士団に所属しているはずだ。

 その一人が槍術士レンだ。


「久しぶりだね、レン」


「はい。懐かしいですねえ」


 にやりとレンは笑った。

 レンは小柄な身体に軽装の防具しか身につけていない。


 レンは騎士団幹部のなかでは最年少だ。

 中性的な整った顔立ちをしていて、紅顔の美少年という表現がぴったりくる。


 が、レンは実際には少年ではなく少女であり、もともとは男嫌いの賢者アルテの側近の一人だった。

 そのアルテがクレオンに粛清されたことについて、レンはどう思っているのだろう。


 少なくとも、レンは今でもクレオンの仲間として行動しているようだった。


 レンの右手には自慢の魔槍ルーンが握られていた。

 ルーンは呪われた赤い長槍で、これを操ることができるのはレンしかいない。

 

 レンの手がくるりと回る。

 次の瞬間、レンの魔槍が俺の喉元をめがけて飛び出した。

 とっさに俺は飛び退ると、宝剣テトラコルドを鞘から抜いた、


 レンの魔槍が赤く輝き、ふたたび俺に襲いかかる。

 宝剣テトラコルドがそれを弾き返し、激しく火花を散らした。


 レンは槍を引いて再度の攻撃に転じようとしたが、その動作にわずかに隙があった。

 俺は機会を逃さずに宝剣を一閃させると、レンは危うく魔槍を取り落しそうになりながら後退した。


「へえ、冒険者をやめて、こんなところでのんびり過ごしているから、腕がなまったかと思いましたけど、そんなことないんですね!」


「腐っても元副団長だよ。レンよりはずっと戦闘経験だって長い」


「一対一、という意味ではたしかに万能型のあなたに分があるかもしれません。ま、騎士団のなかで戦っていく上では、ボクのような攻撃特化型に比べると価値が遥かに落ちますが」


 レンの魔槍ルーンは、その呪力によって遺跡の奥深くに眠る魔族にも致命傷を与えることができる。

 それは人間でも同様だ。

 

 レンの槍が赤く輝いたとき、それが俺の皮膚をかすめれば、死に至る可能性がある。

 俺はクレオンをちらりと見た


 クレオンはその場を動かず、無表情に俺たちを見つめている。


 止める様子もなければ、かといってレンに加勢するわけでもない。

 クレオンはなにが目的でレンに俺を襲わせているんだろう?


 ともかく、早急に勝負をつける必要がある。

 レンは押されているから、このまま畳み掛けるように攻撃しても勝てるかもしれない。


 それが正攻法だろう。

 だけど、俺が求めるのはもっと確実な勝利だ。


 レンの槍がもう一度赤く輝く。

 俺はそれを見てから、剣を構えたまま屋敷の車寄せを離れて、庭へと移動した。


「へえ、逃げるんですか?」 


「そう。勝つためにね」


 レンは俺を追って、屋敷の庭に出た。

 それがレンの失敗だった。

 

 俺は宝剣を軽く一振りした。

 その瞬間、庭の地面から緑色のツタが這い上がった。


「なっ……っ! きゃあっ!」


 レンが悲鳴を上げる。

 その華奢な身体はツタに絡め取られ、身動きができなくなっていた。


 俺はやすやすとレンの手から魔槍を取り上げた。


 以前のアルテ襲撃の件もあったから、いまや屋敷には様々な罠がかけられている。

 その一つがこのツタで、ソフィアの協力を得て屋敷中にめぐらしているのだ。


「卑怯ですよ」


 レンが俺を睨んで非難するが、俺はその抗議に苦笑してしまった。


「いきなり他人の屋敷にやってきて、槍を振り回す女の子に言われたくはないな」


 そして、俺はクレオンを振り返った。


「で、本当に何の用? レンに俺を攻撃させた理由は?」


「君の実力を見ておきたかった」


「俺の実力? そんなもの、クレオンなら、百も承知だと思ったけど」


「いや……前よりも力が上がっている。技術はもともと高いわけだが、魔力や身体能力の面で、だ」


「それは……」


「皇女フィリア殿下の力だな」


 俺は黙った。

 クレオンの指摘は当たっている。


 俺はフィリアと魔力回路をつなげ、その力を借りた。

 だが、それは何の副作用もなく手に入る力ではなく、フィリアの身体に負担をかけている。


 クレオンは腕を組んだ。


「とはいえ、僕がこの屋敷に来た理由は、別にある。君がいま、喉から手が出るほど欲しいはずの情報を持ってきた」


 俺はクレオンと目を合わせた。

 クレオンはまっすぐに俺を見つめていた。


「ルーシィ先生が捕らわれている場所を教えよう、ソロン」


 クレオンは不思議な微笑みを浮かべた。

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