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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女2&キミの理想のメイドになる!
第六章

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145話 ソロンの特技

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 ともかく、俺たちは魔導書解読の作業にとりかかった。

 魔導書をばらして、俺の屋敷の居間のテーブルの上に置く。


 そして、俺はたち八人は同時に作業にとりかかった。

 解読の方法は、ルシルが教えてくれる。

 古代アレマニア語の辞書のようなものを使いながら、一定の規則に従って作業していく。


 単語を拾ってつなぎあわせていくような感じだ。

 だから、誰でもできるといえばできるのだけれど、作業のスピードに差はある。


「難しい……」


 フィリアがつぶやいた。

 たしかにフィリアはあまりこういう細かい作業が得意なタイプではない気がする。

 クラリスとエステルも同じみたいで「うーん」と言いながら苦戦している。


 意外にもリサは緻密な作業が得意みたいで、ライレンレミリアも黙々と進めていた。


 七人の女の子のなかで、一番作業が速かったのは、ソフィアだ。

 ソフィアははものすごく速く正確に仕事をこなしていた。

 さすが魔法学校を首席で卒業した秀才だ。


「でも、ソロンくんのほうが速いでしょう?」


 ソフィアがさらりと言う。

 たしかにソフィアより俺のほうが作業スピードは速い。


「まあ、現代アレマニア語なら、一応わかるから」


 文字こそ現代のものと違うが、慣れてくれば現代アレマニア語の文字と一対一で対応している。

 そして、単語は共通する物がかなり多い。

 帝国と同じく、アレマニア・ファーレン共和国も長い伝統と文化を持つ国なのだ。


「ソロンって外国の言葉がわかるの?」


 フィリアに不思議そうに尋ねられ、俺は微笑んだ。


「いくつかは、話せますね」


「いくつも!?」


「といっても、かじった程度のものもありますが。ただ、俺の故郷はアレマニア・ファーレンとの国境近くですから」


「だからアレマニア語は得意ってこと?」


「俺の主家だった公爵家は、共和国との貿易も手掛けていましたし。周りにもたくさんアレマニア出身の人がいましたからね」


 今、俺の故郷は大共和戦争との最前線になりつつある。

 公爵家の人たちが心配だけれど、今は帝都を離れるわけにもいかない。


「南の国の言葉は話せる?」


「カロリスタ王国とシンラ王国のものなら、片言ですができます」


 そう言うと、フィリアは目を輝かせた。


「わたし、南の国に行ってみたいの」


「どうしてですか?」


「帝国とはぜんぜん違う風景が広がっているって本で読んだから。変わった建物とか砂漠とか!」


「俺も何度かしか行ったことがないですけどね。でも、いつか一緒に行きましょうか」


「うん!」


 フィリアは嬉しそうに笑い、そしてまた真面目に作業へと戻った。

 三時間ぐらいかけて、俺たちは魔導書の解読を終えた。


 解読といっても、単語を当てはめて、書き起こしたメモの集まりを作っただけだ。

 でも、これでも魔導書を使うには問題ない。


 魔導書の内容で組み立てられる魔術を俺は確認した。


 たしかにこの魔術は普通の魔術師には使えない。

 ルーシィが産み出しただけあって、その効果は絶大なものだった。

 どれか一つ能力を極限まで高めるというタイプではないが、魔力の量、魔力の魔法攻撃への変換効率、魔法攻撃への耐性など、行動の速さなど、あらゆる能力が上がるのだ。


 この魔法の援護を受ければ、俺も救国騎士団と互角に戦えるかもしれない。

 俺は魔法剣士で様々な手段を用いて戦う。

 だから、多くの面で能力が上がるこの支援魔法とは相性がかなり良い。


 その代わり、この魔法を使うには莫大な魔力が求められる。

 たとえ聖女ソフィアといえども、魔力が足りないだろう。


「つまり、わたしでなければダメ、ってことだよね?」


 フィリアがふふっと笑った。


「そう。フィリア様でなければダメなんです」


 魔王の子孫であるフィリアの魔力量がなければ、この魔導書の魔法は使えない。

 でも、それは危険な賭けだ。


 フィリアが魔力量を使いすぎれば、その体には負担がかかる。

 ネクロポリス攻略のときに魔法を使ったフィリアは寝込んでしまった。

 もしかすると、この魔法を使うことでフィリアはもっと深刻な状態になってしまうかもしれない。


「ソロンがそうならないようにしてくれるんでしょう? なら安心だよ」


「もちろんそのつもりです。ですが、たとえその問題が解決したとしても、フィリア様に戦いに参加していただかなければなりません。そのこと自体がフィリア様を危険にさらしてしまいます」


「大丈夫。ソロンが守ってくれるんだもの」


 フィリアは俺の服の袖をつまみ、そして俺を上目遣いに見つめた。

 そう。

 フィリアは俺を信じてくれている。


 でも、俺はそこまで自分を信じ切ることができない。

 フィリアを成長させ、そしてルーシィを救出し、屋敷のみんなを守る。


 そのすべてを成功させることができるかどうか。

 俺が不安になって目を伏せると、フィリアはそれに気づいたのか、優しくささやいた。


「ソロンは、いろんなことができるよね」


「俺がですか?」


「いろんな国の言葉を話せるし、料理も得意だし、なんでも知っているし。それに魔法も使えて、教えるのもとっても得意だもの。何でもできるソロンだから、きっとどんなときでも解決策を見つけて、わたしたちを助けてくれる。そうでしょ?」


 フィリアはじっと俺を見つめた。

 

 そうだ。

 余計な考えは振り払わないといけない。


 いまできることをやるしかない。

 そして解決策を見つける。

 そうすることでしか問題は解決しない。


「フィリア様の言うとおりですね。ありがとうございます」


「どうしてソロンがお礼を言うの? お礼を言うのはわたしだよ?」


「フィリア様のおかげで、少し元気が出たからです。さあ、フィリア様。さっそく中級魔術の勉強をはじめましょうか」


「うん!」


 フィリアはうなずき、柔らかく微笑んだ。

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