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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女2&キミの理想のメイドになる!
第五章

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105話 天に輝くはすべて星

 俺はフィリアにうなずいてみせた。


 リサにフィリアを託し、俺はもう一度宝剣テトラコルドを構えた。


 敵のサウルは大規模な魔法陣を無数に展開している。

 けど、これを作り、維持して機能させるためには相当の魔力が必要となる。


 大蛇ウロボロスをはじめとする有力な魔族を捕食したといっても、サウルの魔力が底なしというわけではないはずだ。

 そう信じたい。


 ともかく、魔法陣を破壊すれば、そこから放たれる光魔法の攻撃を防ぐことができるし、サウルの魔力を削ることができると思う。

 相手は聖霊の加護を受けているから、そのとおりにうまくいくかはわからないが。


 サウルが水晶剣を高く掲げ、魔法陣を発動させようとしたそのとき。

 フローラがその指先から断続的に炎魔法を放ち、サウルを攻撃した。


 あえて杖を使わないのは、切り札の占星魔法のために魔力を温存しているからだろう。

 もちろんサウルにはほぼダメージを与えられないから、注目をひきつける効果しかない。


 サウルは左手をすっと前に出すと、フローラの炎魔法を手のひらで握りつぶした。

 そして「へえ」とつぶやく。


「君も悪魔の血を引いている……いや、違うな」


 サウルはフローラを見て、小さくつぶやいていた。

 

 どうしてサウルは、一瞬とは言え、フローラが悪魔の血を引いているなんて言い出したんだろう?

 そんな話は聞いたことがない。


 フローラはアルテの双子の妹で、れっきとした侯爵令嬢だった。

 侯爵が悪魔の血を引いているとは思えない。

 フィリアの場合と同じように母親が愛人ならありえるかもしれないが、フローラは侯爵の正式な妻の娘のはずだった。

 もし悪魔の血を引いていればそもそも魔法学校にも入学できない。


 ただ、サウルがフローラの血筋を誤解した理由は気になった。


 サウルがフローラに気を取られてるうちに、アルテがふたたびヤナギの杖から強烈な攻撃魔法を打ち出していた。


 サウルは左手をかざしただけでそれを防いだが、若干の隙が生まれた。

 そのあいだにクレオンがサウルめがけて踏み込む。


「魔法陣を発動させるな! 攻撃を途切れさせないようにするんだ!」


 クレオンの掛け声と同時に、双剣士カレリアが飛び出す。

 救国騎士団のメンバーがそれに続く。

 

 たしかにたたみかけるように攻撃を続ければ、サウルを足止めはできるだろう。

 だが、中途半端な攻撃を重ねても、サウルは傷一つ負わない。いずれこちら側の攻撃だって止まるだろうし、そうなれば魔法陣が発動してしまう。


 そう。

 中途半端な攻撃ではダメなのだ。


 フローラは黄色の三角帽子を深くかぶり直し、さっと長い杖をローブから引き抜いた。

 そして、それを高く掲げ、よく通るきれいな声で詠唱をはじめた。


「天に輝くはすべて星。地に流れるは蒼き血潮。巡行する星々の理に従い、地上の我らは力を得ん。……堕ちよ!」


 魔法陣が展開されている天井近くに、巨大な裂け目が生じる。

 そこからまばゆい黄金色の光が差し込む。

 赤々と燃える大量の隕石が占星魔術によって擬似的に創出され、サウルの魔法陣めがけて降り注いだ。


 これがフローラの切り札の占星魔法だった。

 占星術師の戦いでの最も重要な役割は、天体の軌道上の位置を計算し、その力を利用した超巨大型の魔法攻撃を使うことだった。


 普通の遺跡だったら最後に待ち構えているような強大な敵ですら、簡単に倒せてしまうほどの破壊力を誇る。


 一撃の火力の高さという意味では、クレオンもアルテもソフィアもフローラにはかなわないだろう。


 けれど占星による攻撃魔法は一度使うと、かなりの時間、魔力は一切使えなくなってしまう。

 回復魔法や簡単な攻撃魔法も含めて、だ。

 一度の戦闘で使えるのは一度きりだし、周りの協力が不可欠で、そういう意味では制限が多くて使いづらい魔術だった。


 ただ、今回はフローラの魔術は有効に機能した。

 サウルの展開していた無数の魔法陣は、フローラの堕とした隕石によって一掃されていく。


 魔法陣は半分ぐらいまで減った。


 クレオンたちの猛攻によって、サウルは足止めされていた。

 だから、フローラが魔法陣を破壊していくのを止めることはできない。

 ……はずだった。


 サウルは水晶剣を大きく振った。

 その斬撃はクレオンが受け止めたが、同時に剣から魔法攻撃がばらまかれる。

 クレオンたちはそれを避けようとして、一瞬の間が生じた。


「やれやれ」


 サウルは微笑むと、指をパチンとならした。

 天井の魔法陣の一つが青く輝き始めた。

 まずい。


 雷のような明るい青い光が、フローラめがけて落ちていく。

 フローラは攻撃魔法を展開している途中で、さっきみたいに攻撃を避けるわけにはいかない。


 クレオンたちはサウルの足止めのために離れた位置にいて、フローラを攻撃からかばうのは不可能だ。


 フローラの周りには護衛として何人かの剣士がいるにはいる。

 ただ、攻略隊参加者とはいえ、その実力はクレオンやカレリアには遠く及ばなさそうだ。

 

 だいいち、サウルの攻撃が来るのを見て完全に怯えているし、フローラを守れるかといえばおそらく無理だろう。


 だけど、ここでフローラがやられてしまえば、まだ多く残っている魔法陣を消すことが難しくなり、攻略隊は敗勢濃厚となる。


 俺はいざというときにフィリアを守れるように、やや後ろに下がっていたから、フローラと比較的近い位置にいた。

 

 だから、反射的にフローラの前へと飛び出したけれど、本当だったらあんな攻撃には立ち向かいたくない。

 宝剣テトラコルドがあの攻撃を受け止めきれるかどうか。


 幸い、さっきの光魔法の攻撃よりは威力は低そうだけれど。

 

 危険な賭けだが、やってみるしかない。

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