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予定未定決定

「うわぁー、人がたくさん居る」


 思わず声に出して周囲を見回す。

 我ながらお上りさんみたいだと思う。

 でも、仕方ないだろ?

 ここに来てから三人(かのじょたち)以外の人を見たのは初めてなんだから。

 因みにゾンビはノーカウント。

 悲しい話だけど。


 二人が言った通り町の人達には皆、頭に角や獣耳(じゅうじ)が生えていた。

 尻尾に関して言えば結構個人差が有るようだ。

 シスターみたいに、隠しているだけかもしれないけど。

 見慣れない町の様相に、人々。

 改めて自分が知らない場所にやって来たのだと、実感が湧いてくる。


「ほら、キョロキョロしてないで行くよ」


 そんな僕に一声かけると、シスターはスタスタ先へ進んでいく。

 僕は慌てて彼女の後を追う。

 因みにスズさんは、あの後すぐに別れた。

 村の状況を早く知らせたいらしかった。


 シスターに連れられて、とある宿で一息ついた。

 宿、というにはちょっと狭苦しいし、あまり清潔ではなかった。

 でも朝から歩き通しでクタクタな僕は、文句を言う余裕もない。

 糸の切れた人形の様に、四肢をだらしなく投げ出した。



「あんた、これからどうするわけ?」

「どうするって?」


 暫くして、唐突にシスターは切り出した。

 それに対して、僕は首を傾げる。

 シスターは溜め息をつくと、苛立たし気に再度口を開く。


「私に着いてくるのかって事よ」


 なるほど。

 確かにさっきの村とは違い、ここは多くの人が生活している。

 スズさんが所属している様な国の治安維持団体なんかもある。

 彼女の口利きで保護してくれる可能性もあるのだろうか。

 そう考えると、無理してシスターについていく必要はないのかもしれない。


「うん。一緒にいく」


 それでも僕はそう答えた。


 確かにここで、誰かの保護下に入った方が安全だろう。

 でも、それはこの世界で暮らしていく場合の話だ。

 自分の世界に戻る為には、色々回って手懸かりを探すべきだ。

 だからシスターについていくのは、今は最善だと思う。

 それに他の人が、僕の話を信じてくれるとも限らないしね。


「そう。勝手になさい」


 彼女は顔を背けてそう言った。


「それでシスターはこれからどうするの?」


 多分、ダイアーって人を探すのだろう。

 それにしても、予定ではあの村に居る事を想定していたみたいだし……。

 当てが外れた以上、どう動くのかは気になった。


「さぁ? 次の当てもないけれど」


 まるで気にしてないように彼女はそう言った。

 何を理由に探してるのか知らない。

 でも、あまりにも無計画に思える。

 やっぱり村に居たアイツに問いただした方が良かったんじゃないかなあ?

 と言っても、シスターが乗り気じゃない以上どうしようもない。


 うーんと頭を捻ると、一つの案が思い浮かんだ。


「そうだ! スズさんに聞いてみるのはどうだろう」


 彼女は王国騎士団に勤めているらしい。

 それがどういうものか、具体的なことは知らない。

 でも普通の人よりは、いろんな情報を知ってるんじゃないだろうか。


「まぁ、悪くない案ね」


 シスターは顎に手を当て、そう呟いた。


「じゃあ明日早速スズさんに会いに行こう」


 意気揚々と語る僕を、シスターは何故だか複雑そうな顔で眺めていた。

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