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猫踏兎蹴1

「で? 改めてこれからどうするんだい?」


 サニャは泣き止んだ僕の頭に手を乗せると、他の皆を回し見た。


「どうする? というのはどういう事ですか?」

「そのままの意味だよ。これからどこに向かうかって話」

「良く分かりませんが、今目指している場所には行かないのですか?」


 言葉の意味が理解できずにセンリンは首を傾げる。

 サニャは呆れた様子で肩を竦めた。


「元々そこに向かうのは、シャルが元の世界に帰る手掛かりを探す為だっだろう?」

「な、成程。そうだったのですね」

「そうなんだよ。だけどそれも意味の無いものになった。だから改めてって話さ」


 センリンは「成程」と何度も呟きながら頷く。

 理解しているかどうかは彼女にしか分からない。


「取り合えず、目的地は変えずに先に進んでもいいんじゃない?」


 シスターは顎に手を当てつつ自分の考えを口にした。

 サニャはそれを聞いて意外そうな顔をする。


「それはどうしてだい?」

「正直、あの女の言うことをそのまま信用する気にはならないわ」

「名前マデつけといとてヨク言うわねコイツ」

「うるさい。どちらにせよ、何かしら得るものはあると思うわ」


「私は反対だな」


 シスターの物言いにサニャは力強く口を挟んだ。


「これ以上、シャルを無意味に連れ回すのは反対だ。素直にこの世界での居場所を探すべきだよ」

「あら、子宝に恵まれない名家の知り合いでもいるのかしら?」

「それも一つの手だろうね。ただあまり家柄が良くてもペルシア様の耳に入りやすい」

「それこそ論外ね。適当な里親でも募るつもり? 飼猫が子供を産んだのとは違うのよ」

「チョッ! チョット二人ともオチツキなさいよ」


 予想外に苛烈になる話合いにスズさんが待ったをかける。

 シスターは彼女の顔を見て、小さく舌打ちをした。


「マァ、でもワタシはドッチかと言えばサニャにサンセー」

「持って回るね。じゃあどっちでもない意見を聞こうか?」

「ワタシは第三騎士団(うち)で預かるのがイチバン良いと思う」


 少し言い淀んで口にした言葉をシスターはバカにした様に鼻で笑う。


「はっ! この期に及んで、しゃあしゃあと良く言えたものね」

「ウッサイ! こっちのツゴーで行場がないのよ。ワタシ達がメンドー見るのがスジだわ」

「それで問題が無いなら最初からこんな話になってないのよ」

「ペルシア様だって、コイツの存在はキチョーだし、悪いようにはならないわよ」


「タブン」と力無くスズさんは最後に付け加える。

 シスターは話にならないとばかりに溜息を吐いた。

 サニャもあまり乗気では無さそうに肩を竦める。


「私もそれは反対だね」

「オマエね! サッキから裏切る気マンマン過ぎやしない?」

「どうとでも取ってくれ、ただ今の状況でシャルを差出すのは人道的にも反対だよ」

「ハイハイ、どうせワタシは冷血女でハクジョーものデスヨ!」


 スズさんはあからさまに拗ねた様子で背を向けた。

 そんな彼女に呆れつつ、シスターは残った二人に視線を向けた。


「あんた達は?」

「シャル君次第ですかね。結局は彼の事です。それを尊重します」

「同意、私、センリンに」

「まぁ結局の所、それが筋だろうね」


 二人の意見にサニャは同意する。

 それを見て、シスターが僕に視線向けた。


「そうね。シャルル、どうする?」


 確かに理屈で言うならば、スズさんやサニャの意見が正しいと思う。

 帰る場所がない以上、それを作る方向に向けるべきだ。

 だけど――


「その、もう少し考えても良いかな」

「まぁ、いきなり自分の今後を決めろって言われても困るだろうし、気持ちの整理も必要さ」


「良いだろう?」と確認されシスターは鼻を鳴らす。


「そうね。じゃあ今日は一先ず休憩しましょうか」


 シスターの言葉を皮切りに、僕達は宿を探しに足を向けた。

 皆の背中を後ろから眺めつつ、僕はどうするべきかを決めかねていた。

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