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猫耳剣士3

「さてどうしようかしら?」


 シスターは両手で鎖を伸ばすと小さく呟いた。

 (ゾンビ)犬の数は、目視できるだけでも五匹はいる。

 彼女の鎖は巨大化させれば一撃必殺の威力だ。

 だけどここは、沢山の木々が生えている森の中。

 巨大な鎖を振り回すには不向きに見えた。

 かといって小さいままでは、あの数を相手取るのは難しいだろう。


 僕の魔法で燃やす事はできる。

 だが、高さもなく素早い獣が相手だ。

 確実に命中させるのは難しい気がする。


 下手をすれば山火事になって、そちらの方が危険だ。

 他の魔法で対抗するか? 当てやすくて、かつ一撃で複数相手も仕留められる物?

 ダメだそんな都合のいいものはない。

 まして四八方にいる敵が相手だと、どうしても味方(シスターたち)にも被害が出かねない。


「お前、何とかしなさいよ」

「ハァ? ナニソレ」

「お前に構ってる間に取り囲まれたのよ? どうにかするのが筋でしょ」

「オマエが勝手に絡んで来たんでしょうが!」

「ちょっと二人共、喧嘩してる場合じゃ」


 次の瞬間、何かが僕の体に巻きついて引っ張ぱりこんだ。

 一瞬の浮遊感を得て、僕はシスターの胸へと収まった。

 彼女は即座に僕を脇に抱える。

 僕が先程までいた場所には二匹の腐犬。

 だがそれも、直ぐ目の前まで飛びかかってきていた。


「シルバーチェーン!」


 叫ぶと同時に鎖が側方の木に巻き付いた。

 すると途端に鎖は縮み、巻き付いた木へと引き寄せられる。

 どうやら大きさだけでなく、長さも操れるみたいだ。


 しかし、移動した直ぐ近くに別の腐犬が控えていた。

 息もつかせず僕達に飛びかかる。

 だけどシスターは素早く鎖を巻き付け、別の腐犬へと投げて叩きつけた。

 二匹は直ぐに立ち上がり、僕達を睨み付ける。


 その時、辺りにチリンとベルの音が鳴り響いた。

 音に釣られるように、二匹は視線を外す。

 視線の先にいたのはスズさんだ。

 彼女がチョーカーに付いていたベルを鳴らしたみたいだった。


 スズさんは腰のサーベルに手をかけた。

 すると同時に姿が消える。


 何かを切り裂く音が聞こえて目を向ける。

 そこには僕達の目の前に居た二匹が、首から胴を切り取られていた。

 そしてすぐ隣には、サーベルを構えた彼女の姿。


「イイわよ。ヤッてあげる」


 涼やかな声でそう言うと、細身のサーベルを一振りした。


「コイツらが町まで来たらタイヘンだし、国民を守るのもシゴトみたいなものだし……ネ!」


 語尾と共に彼女は地を蹴った。

 一足で遠くの一匹の首を跳ねると、そのまま木に足をつけて再度跳ねる。

 木から木へと飛ぶように、直線上に居る犬の首をはねて回る。

 あっという間に、腐犬達を切り裂いて、元の場所へと足を下ろした。


 スズさんは剣を収めて小さく息を漏らすと、髪を払って揺らした。


「す、凄いや! スズさん!」


 僕は感激のあまり、彼女の元に走りよった。

 両手で彼女の手を包み、上下に揺らした。

 暫くポカンと、僕の様子を眺めていたが、直ぐに自信を帯びた表情へと変わる。


「マ、マァねー? 私にかかればザッとこんなものよね」

「うん! 凄いスピードであの数をあっという間だったもん」

「デッショー? 二等剣士とは言ってるケド、ジッサイは一等でも遜色ないって言うかー」


 自慢気に語る彼女の後ろで、何かが動いた。

 傷が浅かったのか、うち損じた腐犬だった。

 スズさんは得意になっていて、それには気付いていないみたいだ。


「危ない!」


 飛びかかると同時に、僕は咄嗟に魔法で炎弾を飛ばした。

 腐犬は炎に包まれると、地面に落ちて転がり回る。

 シスターは巨大化させた鎖で炎ごと叩き潰した。


 スズさんは驚きの表情で、それを見ていた。

 顔には冷汗が見える。


「大丈夫? スズさん」

「あ、えぇ……アリガトウ」


 バツが悪そうに彼女は礼を言う。

 その様子にシスターが鼻で笑いを漏らした。


「成程? その詰めの甘さが二等たる所以ゆえんって訳ね」

「あー! ウッサイわねぇ! チョット油断しただけでしょ」


 悔しそうに叫ぶ彼女の声が、周囲に響くのだった。

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