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復讐の盗賊3

 盗賊の男は縄で縛られたまま、僕達を先導する。

 端からみれば奇妙な光景で、衆人の視線を感じる。

 だけどスズさんが騎士団だと分かると、大半の人達は直ぐに納得して視線を外していた。


 こうして見ると、騎士団所属の人間が居るというのは色々な意味で心強い。

 実際はお姫様の私設団体だし、制服も微妙に違うらしい。

 でも一般の人からすればそんな見分けはつかないだろう。

 先ほどの揉事も、彼女がいるお陰で通報はなかったみたいだし。


「オラ、キビキビ歩きなさいヨ」


 スズさんはなんだか愉しそうに、男の足を急かしている。

 男はその度に苛立った顔を見せるが、逆らうこともできず黙々と足を進めていた。

 暫く歩いていくと、人気ひとけが次第になくなって行き、周囲もドンドン寂れていく。

 誘拐した人間を監禁しているのだから、誰も寄り付かなそうな場所になるのは当然だ。


 だけど分かっていても、やっぱり薄気味悪い物だ。

 僕が落ち着きなく視線を漂わせていると、センリンが僕の手を握ってきた。


「大丈夫ですよ。いざとなれば私もスズも居ります」

「私も」

「おっと失敬。ソーラも居ます」


 ソーラは不満そうに頬を膨らませると、僕の空いてる手を握った。

 別々の感触が両手から伝わってくる。

 それが幾らか僕の気持ちを安心させてくれた。



 さらに進んでいくと、遠目にはおよそ人が住んで居なさそうなボロボロの家屋が建っていた。


「あそこだ。もう良いだろう? 解放してくれ」


 男は首を後ろに向けてそう懇願するが、スズさんは遠目に家屋を睨んでそれを却下した。


「別にもう良いのではないですか? 場所もわかったのですし」

「ダメよ。盗賊のジョーホーなんてコノ目で見なきゃシンヨーできないわ」


 センリンの言葉を切って捨てると、スズさんはソーラクに目で合図を送った。


「分かったよ、最後まで案内すりゃ良いんだろ!」


 ヤケになって男は進もうとする。

 だけどスズさんはそれを止めた。


「んだよ! 行くのか行かねぇのか、はっきりしろ!」

「ウッサイわね。チョット待ってなさいよ」


 がなる盗賊を涼しい顔でいなしながら、僕達は暫く立ち止まる。

 突如ソーラがスズさんの元へと歩いていった。

 猫の視線を受けて鼠は小さく首を振る。


 するとスズさんはサーベルに手を掛けると、柄で男の腹部を殴打した。

 苦痛の声をあげて蹲る所を、追い打ちとばかりに蹴り上げる。


「てめぇ! 何しやがる!」


 地面に転がりながらも、男は大声で威嚇する。

 しかしスズさんは汚物を見るようにその姿を見下した。


「コッチのセリフよ。よくも騙してくれたモンだわ」

「な、何の話だ! 言い掛かりにも程があらぁ」


 とぼける男に、彼女は顎をしゃくってソーラに合図をする。


「見てきた、この子、居なかった、ラル」


 前に出てきたソーラは辿々しくそう語る。

 彼女の腕には魔法で作った鼠が這っていた。

 どうやら先にソーラに偵察させていたみたいだ。


「沢山、仲間、代わりに」


 さらにソーラは続ける。

 きっと自分のアジトに誘き寄せて襲うつもりだったんだ。

 男は悔しそうに牙を剥き出しにすると、大きく後ろに跳び跳ねた。


 力ずくで縄を引きちぎると、姿に違わない大きな唸り声を上げた。

 それを合図に周囲の家屋から多くの仲間達が姿を現す。

 あっという間に僕らは、男達に囲まれてしまった。


「何ですお頭……ってこいつら!」


 仲間を代表して、火傷の跡が残る大男が前に出る。

 しかし僕達の姿を見て、親と同じように表情を変えた。

 その男の顔を見てスズさんは嬉しそうな顔をした。


「アァ……、オマエは覚えてるわ。アノ時の借り、ちゃんと返してなかったカラネ!」


 不敵に笑うスズさんに、火傷跡の男は気圧されて後退する。

 しかし、それを虎男が大声を上げて叱咤する。


「テメェラビビってんじゃねぇ! あの時の礼にタップリなぶってやりなぁ!!」


 その言葉に盗賊達は武器を手に取り、己を奮い立たせた。

 屈強な男達が一斉に叫ぶその様は、かなりの迫力が感じられる。


「ホラね。こんなヤツの言うことなんてコンナモンよ」

「うるせぇ! さっきの分も含めて倍返しさせて貰うぜ! 野郎どもメチャクチャにしてやれ!」


 虎男の合図に盗賊達は一斉に襲いかかってきた。

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