表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/117

再会と(後編)

シスターside

「で、なんのつもり?」


 あの子が眠った後、私はスズを外へと連れ出した。

 理由は言うまでもない。

 開口一番、私の質問を彼女は鼻で笑った。


「よくオメオメと顔出せたわね。ってコト?」

「と言うより、懲りずにまた? て所かしらね」


 私の視線から逃げるように、スズは(こうべ)を垂れた。


「信じなくてイイケド、別にアイツを取り返しに来たワケじゃないワ」

「ハッ、良く言う」

「ベツに信じなくてイイって言ったデショ」


 スズは自嘲気味にそう吐き捨てた。

 私もこいつが罪悪感を抱かず後悔もしてない、とまでは思わない。

 だからと言って、それを理由に騎士団を抜けてきた。

 なんて思ってやるほど、物分かりも良くない。


「それじゃあ、取敢えずその理由でも聞いてみましょうか」

「ベツに、新しく任務をウケタってだけよ」

「内容は……あぁ国家機密だったかしら?」


 ここぞとばかりに笑ってやる。

 しかしスズは動じずにそれを聞き流した。


「ナンドも言うケド、オマエにはシンヨーされなくたって構わないワヨ」


 彼女はそう言うと、視線をついと宿に向けた。


「私には、ね。随分と御執心だこと」

「ッサイワネ!」


 スズは浅黒い肌を染めながら、私に背を向けると肩を怒らせて歩いていく。

 しかし私はそれを呼び止める。

 どちらかと言うとこちらが本題なのだ。


()()()()の奴等は動いてないわけ?」

「ゲンジョー、オマエ達には干渉しないホーシンよ」


 立ち止まり、不快そうに振り向いてそう言った。

 王国騎士団ともあろう連中が、なんとも弱気な事だ。

 正直言って素直には信じがたい。


「マァ、フツーなら引捕らえて処刑モンだけどネ」


 姫様ままごとの私設騎士団とは言え、武力集団が本拠地に単身で乗込まれて逃がしたのだ。

 そんな情けない話で自尊心の高い彼女が、正規の騎士団に協力を申し出せる訳もない。

 されど自分達だけで処理するには人手が足りなさすぎる。


 結果あの件は内密に処理し表沙汰にはしない、という形で収まったらしい。

 確かに王族の、ましてや私設の騎士団を作るようなお姫様だ。

 その気位の高さを考えればなくはない話だ。

 しかしだからこそ、ただで引き下がるとも考えにくい。


 となれば、潜り込ませやすいスズを一先ずの監視役にした、と言った所か。

 これ以上踏み込んでもこいつは答えないだろうし、まぁ致し方ない。

 本来なら力ずくで追い出すか、吐かせるべきなんでしょうけどね。

 あいにくそれを実行するには、連れ合いが幼稚すぎる。


 何より私が趣味じゃない。


「ホカに聞きたいコトは御座いませんカシラ?」

「えぇ結構、お手間を掛けさせて感謝至極に御座います」


 嫌味たらしく訊ねるスズに、同様に返してやる。

 スズは鼻を鳴らすと、今度こそ歩いていった。


「お話は終わりましたか?」


 スズが居なくなったのを見計らってセンリンが屋根から降りてきた。

 私は視線を動かさず小さく非難の声を上げる。


「聞耳が趣味とは意外ね」

「生まれつき長いもので。まぁ、喧嘩にならず幸いです」


 そう言って朗らかに笑った。

 しかし、コイツがここに居るとなると部屋はどうなっているのか?

 まさか寝ているあの子一人ではあるまい。


「ソーラクは?」

「部屋に居ますよ」

「そう、なら良いわ」


 私の答えにセンリン小さく吹き出した。


「……なにかしら?」

「いえいえ、何だかんだで似た者同士なのですね」


 私は舌打ちをしてセンリンを睨む、がどこ吹く風といった様相で受け流される。

 良く見れば彼女の肩には白い鼠が乗っていた。

 全く、どいつもこいつもお節介な事だ。


「……お前はあの猫を信用するわけ?」

「ふむ? 前も言ったと思いますが」


 センリンはそう言ってスズが歩いていった方向に視線を向ける。


「何かある。にしても、スズの彼を想う心は本物です。私はそれを信じていますので」

「はっ! 残念だけど私はそう単純には構えられないわね」


 どれだけ態度で見せようが、一度ああなった以上は素直に信用は出来ない。

 特にあの子は、あいつに対しての警戒心が既に薄れている。

 結局はまだ子供だ、自分の信じたい方向に心が舵を取る。

 だからこそ、私が代わりに警戒しなければならない。


「まぁそう邪険にせずとも、どうせ連れて行くのでしょう?」

「結果的にはね。でも何故そう思うのかしら」

「どうせスズは勝手について来ますし、いざとなればその時。ですよ」


 どこかで聞いたような事をセンリンは得意気に口にした。


「お前聞こえてたわけ? 本当、良い神経してるわ」

「? 何がです?」


 とぼけた顔で首を傾げる彼女を見て、私は思わず苦笑した。

 やれやれ本当に、どいつこいつも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ