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第三騎士団1

スズside

 王国騎士団は王都周辺を守る、第一騎士団。

 そして王都から離れた地域に配備される第二騎士団の二つからなる。

 なので、第三騎士団というのは本来公には存在しない。

 では私の所属する団体はなんなのか。

 簡単に言ってしまえば、お姫様の私設部隊だ。


 国王様の実子、その三女であらせられるペルシア様。

 彼女が独自に作った物だ。

 なので国や市民を守る為、というよりペルシア様の個人的な活動の為に動かされるのが現状だ。

 だが、騎士団を名乗っている事もあり、彼等の仕事を手伝う事もある。

 とは言っても、お姫様の民衆へのパフォーマンス位にしか連中は思ってないでしょうが。

 そういうこともあり、私達の王国内での立場は大変微妙な物だったりする。



 王宮の近くにある大きな屋敷、そこが私達第三騎士団の拠点だ。


「ふぅん? これがラルの研究結果か」

「ハイ、恐らくは」


 私の返事を聞くと、大業な椅子に座りながら、ペルシア様は興味深そうに私の横に視線を向けた。



 ペルシア様が主動で行っている魔法の研究。

 その協力者である、魔導士ラル。

 彼の研究成果を受け取る事が、私の本来の任務だった。


 途中で出会った二人から、村の惨状を知った事でラルの生存は絶望的だと感じていた。

 だけど、その二人の内の一人。

 耳や尻尾、羽すらも生えてない特異な体。

 私よりも幼いのに、高度な魔法を用いる謎の技量。

 私はもしかすると、彼こそがラルの研究成果なのでは? と疑いを持った。


 最寄りの町にて、鏡交信でその事を報告すると、その少年を王都まで連れてくるように、と言われた。

 少年は愛想の悪い牛女と行動を共にしていたようで、そいつの目的地を王都に向ける様、出任せを言ったら簡単に事が進んだ。



「それにしても、まだ幼いな」

「報告を受けた限りでは、それでも一級魔術師を軽く凌ぐ魔法を扱える様ですが」

「ほぉ? それは事実なのかしら?」

「はっ! シュガー様も魔法を目にしたそうですが、現在の水準を遥かに上回るそうです」


 本来は私が進んで報告すべき事なのだが、サニャが勝手に喋ってくれるので助かる。


 私はなるべく隣を見ないように視線を下に向けていた。

 先程から、アイツの泣声が耳について離れない。

 今はもう泣いてはいない……と思う。

 少なくとも声はあげてない。

 あれから、一度もアイツの顔は見ていない、いや見ないようにしていた。


 だから今、アイツがどんな顔でサニャに捕まっているのか、私には知るよしもない。

 もしかしたら、私を睨み付けてるのかも知れない。

 そう思った途端、胸がキュウと痛くなった。


「スズ!」


 唐突にサニャに呼ばれて顔を上げる。

 思わず横に顔を向けそうになるが、寸前で堪えた。

 どうやら何度か呼ばれていた様だ。


「シュガー様の見立てでは間違いないのだな?」

「は、ハイ。ワタシ達に比べて、筋肉リョーが驚くホド未発達なのに対して、魔力のセーセー機能は三倍はあるトカ」

「三倍!? 簡易的な検査でもそれだけの可能性が?」


 ペルシア様は驚きで目を見開いた。

 こんなの経過報告で伝えたんだからサニャが答えればいいのに。

 心中で舌を打つ。


「体のコーゾー的には、ベツの種と見てマチガイ無い、ラシーです」

「ほお、見目には耳と尾が無いだけにしか見えんのにな」


 興味深そうにペルシア様は視線を這わせる。

 すると途端に口角を上げた。


「しかし本当に尾も羽もないのかしら? 試しに脱いで見て貰える?」

「えっ! い、嫌だよ!」


 ここに来て、初めてあいつが口を聞いた。

 しかしペルシア様は、顎でサニャに指示を送る。


「えっ! 嘘でしょ、ちょっと!」


 すぐ隣で必死に抵抗する声が聞こえた。

 でも、力でアイツが敵うわけ無い。


 私は頭を下げ目をつむる。

 必死に歯を食い縛り、隣で助けを求めるアイツの声に必死に耐えた。


 服を剥いた後もペルシア様は何かを言っていたけど、まるで頭には入って来ない。

 私は心中で破裂しそうな何かを押さえつけるので精一杯だった。

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