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屍肉喰らい3

 ふと周囲の喧騒に気がつく。

 町の人達が僕達を遠巻きに取り囲み、経緯を観察しているようであった。

 よく考えれば、町中でこんな大暴れしたんだ。

 何も知らない人からすれば、堪ったものじゃない。


 ここに来てから、どうも荒事ばかりだ。

 その所為で、この世界では()()()()のが普通だと思っていた。

 けれどどうやら、日常に暮らす人達からするとやはりそうでもないらしい。


 そんな野次馬達を掻き分けて、数人の武装した集団が僕達の前に現れた。

 シスターは鎖を構え、センリンは腰に手を当て余裕の表情だ。

 唯一、スズさんは顔に手を当て、バツが悪そうに頭を下げていた。


「王国騎士団の者だ。お前等か、町中で騒ぎを起こしてるという連中は」


 一人の男が前へ出て、僕達を回し見る。

 訊ねてはいるものの、ほぼ断定している様な口ぶりだ。

 まぁその通りではあるんだけど。


「先程迄の事を言うのならば、その通りで……いったぁい!」


 悪びれもなく正直に答えるセンリンの足をシスターが踏みつけた。

 足を抱えて痛がる兎を横目に彼女は舌打ちをする。

 目の前のやり取りを不審に感じながらも、騎士団の人達は剣に手をかけた。


「一先ず、同行願おうか。抵抗するなら相応の対応はさせて貰おう」

「へぇ、やる気?」

「チョット! バカ! 無駄にコトを大きくしないでよ」


 不敵に笑いながら鎖を構えるシスターに、スズさんは飛びついて抑える。

 彼女を引き剥がすと舌打ち交じりに、シスターは矛を収めた。


 こうして僕達は騎士団に取り押さえられた。




「ッタク! もー、ホンット、疲れた」


 スズさんは悪態をつきながらしゃがみ込んだ。

 あの後、スズさんが騎士団所属という事もあり僕達は比較的簡単に解放された。

 と言ってもスズさんが必死に説明した末、渋々といった感じであるらしいけど。

 特命の任務中に死体人形を用いた犯罪者と偶々出会い、犯行を未然に防いだ。

 という事で話を通したらしい。


「ダイアーが、お尋ね者じゃなければマジでヤバかったかも」

「はぁ、元々犯罪者だったのですね。あの男」

「死体をシテキに活用するのはフツーに犯罪ダカラね」 


 そう言ってスズさんが立ち上がる。

 確かに冷静に考えれば、死体を操り人形にするなんて倫理的に問題だ。

 そう言えば、シュガーさんの家で僕達を襲った男も似たような魔法を使っていた。

 彼はダイアーの仲間みたいだったし、そういう集団の一味なのだろうか。


「屍姦好きの変態共が」


 不愉快そうに吐き捨てるシスターに僕は首を傾げる。


「シカンって?」

「アンタは知らなくてイーの!」


 なんだか物申したそうにシスターを睨むスズさん。

 当の彼女はその様子を鼻で笑って返した。


「それにしても、オマエ、フクシューが目的だったのね」

「あら、復讐は何も生まない。なんて有難いお言葉をくれるのかしら」

「ベッツに、好きにすれば? 反対だったらサッキ止めてたし」


 肩を竦めてそう漏らすスズさん。

 シスターは「そう」と短く返した。


「私は反対ですね! 止めましょう。ええ」


 意気揚々と言うセンリンを横目で見て二人は同時に溜息をつく。


「オマエって、ホント場を弁えないわね」

「はぁ、申し訳ないです?」


 そんな二人の会話の中、僕はシスターの前へ行くと頭を下げた。


「ご、ごめんなさい」


 謝罪は先ほどの事だ。

 つい手を出してしまった。

 出すべきではないのだと分かってはいたけど、我慢が利かなかった。

 だけならまだしも、それが原因で危機に陥るなんて情けない話だ。


 シスターは一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐに素に戻り僕の頭に手を乗せた。


「別に手を出すなとは言ってなかったし、アレの言う通りモタモタしてたのが悪いわ」


 そう言ってスズさんに顎をしゃくる。

 彼女はまだセンリンと何かじゃれていた。

 それを見て小さく笑うと「それに」と言葉を続ける。


「前も言ったけど、その気持ちは決して間違いではない筈だから」


 彼女は優しく僕の頭を撫でた。

 シスターと出会ってまだ日は浅い。

 でもその頭の温もりは、とても懐かしい気持ちにさせてくれた。



「ソレでオマエ、これからドーするの?」


 スズさんは腰に手を当ててシスターにそう訊ねる。

 彼女は元々、王都でダイアーの目撃例を聞いたからここまで来たんだ。

 王都の直前で対象を見つけ、あまつさえ逃げられた。

 もう彼女が王都まで行く理由は薄い。


「一応ついて行くわ」


 だけどシスターはそう答えた。


「次の行方は分からない以上、まずは情報が集まりやすい王都に行くのも悪くないわ」

「ソ。マァ、もう目と鼻の先だしね。アンタも?」

「え? う、うん」

「私も同行しましょう」

「オマエは聞いてない」


 センリンは口を尖らせて拗ねる。

 かくして僕達は王都へとようやく辿り着こうとしていた。


 ただ、僕に訊ねた時のスズさんの瞳がとても悲気だったのが少し気になった。

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