魔女と死霊使い1
国の魔導士に封魔の腕輪を外して貰う為、僕達は森の中を歩いていた。
「つか、なんでオマエも着いてくるワケ?」
ジトリとした目でスズさんは先頭をあるくセンリンを睨む。
「そんなに言ったらセンリンが可哀想だよ」
「ナーンカ仲良くなってるし、マァイーケド」
スズさんはそう呟いて、フンとそっぽを向いた。
因みに呼び捨てなのはセンリンがそうして欲しいと言ったからだ。
「まぁまぁ、見送り位させてください」
当の本人は長耳を揺らして、振り返って朗らかに笑う。
その方向なら近道を知っている、と道案内を名乗り出てくれたのだ。
実際森を突き抜けて行けるので、近道には違いない。
だけどスズさんは何が気に食わないのか、先程から文句を垂れていた。
シスターは相変わらず興味が無さそうに後方を歩いている。
そんな中、急にセンリンの足が止まる。
前を覗くと、何やら狼が一匹、道を塞ぐように立っていた。
彼女はシッシと追い払う様に手を払う。
しかし狼は逃げるどころか、逆に飛びかかってきた。
「ほっ!」
センリンは動じずに肘打ちで、狼を弾き飛ばす。
まるで投げられた球を捕るような気軽さだ。
「一匹で人の群相手に逃げないとは珍しいですね」
感心した様に転がる狼に目を向ける。
だが狼は直ぐに姿勢を正し、再度センリンに立ち向かう。
結果は変わらない。
だが狼はそれでも彼女に尚も立ち向かってくる。
「チョット! 手加減してないでサッサとコロしちゃいなさいよ!」
僕を隠す様に背中へ回しなが、スズさんがそう叫んだ。
しかしセンリンは困った顔で逃げ回る。
「うー、無駄に殺すのはどうも」
「襲われといてムダもアッたもんじゃないわ!」
それでも困った顔でセンリンは、狼をいなし続けた。
「シルバーチェーン!」
見かねたシスターが、鎖で狼を捕まえると大木に叩きつけた。
頭が潰れ、直ぐに動かなくなった。
「ッタク! 手間がカカるんだから」
「……スズは何もしてませんが」
文句を言いつつセンリンは亡骸の前にしゃがむと、何かを呟いて手を合わせた。
すると「おや」と不思議そうな声を上げた。
「どうしたの?」
「この狼、腐ってます」
「自然でケガもすれば、ソーイウ事もあるんじゃない?」
「ですが、全体的に腐蝕しております」
三人で覗きこむ。
確かに怪我した一部とかではなく、全体的に爛れている。
「ビョーキ、とかじゃないわよね」
「そういうのもあるとは聞いた事あるけど」
「まぁ可能性は低いでしょう」
そうなると、誰かが意図的に死体を動かしたということになる。
思い浮かぶのは、山で襲いかかってきた腐犬。
「ショージキ、イヤな予感しかしないわ」
「僕も」
「面倒だわ、さっさと行きましょう」
「? 何かあるんですか?」
イマイチ状況が飲み込めてないセンリンを急かして、僕達は森を駆け抜けた。




