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馬車と盗賊4

 宿屋から飛び出したものの、僕は途方にくれていた。

 騎士団の駐屯地が、どこにあるか分からないからだ。

 この世界にもまだ馴れてない。

 知らない人に話しかけるのも、まだ少し勇気が必要だった。

 格好はつかないが、戻ってシスターに聞いた方が早いかもしれない。

 そう思った矢先、背後から男の人に話しかけられた。


「どうしたんだ坊主?」

「あ、えーっと」


 急に話しかけられてギョッとしてしまう。

 だけどよくよく眺めてみると、知った顔である事に気付く。

 馬車の御者をしていた人だ。


「こんにちは、えーっと」

「俺はコウってんだ。所で坊主は一人か?」


 コウさんは僕の周囲を見回してそう訊ねる。

 恐らくシスター逹の事だろう。

 ちょっと警戒した風にも感じる。

 確かに盗賊十数人を二人で追い払ったんだ。

 知らない人からすると、ちょっと怖く感じるのかもしれない。


「そうだ! コウさん。騎士団の駐屯地って分かる?」


 僕は幸いとばかりに彼に尋ねた。


「騎士団? そうか、猫の姉ちゃんは騎士団所属だったな」


 コウさんの発言に僕はうんと頷く。

 まだ出会って間もないけど、彼女が凄い人だって言うのは目で見て知っている。

 自分の事でもないのになんだか誇らしく感じた。

 そんな様子に彼はニヤリと顔を歪ませた。


「なんだ? 寂しくてお姉ちゃんに会いたくなったか?」

「そ、そんなんじゃないよ!」


 ムキになって僕は否定する。

 コウさんは「冗談冗談」と愉快そうに笑った。


「騎士団の駐屯地なら俺が連れてってやるよ」


 むくれる僕を宥めるように、コウさんはそう言った。


 足早に歩くコウさんに着いていきながらも、僕はホッとする。

 なんとか駐屯地に着けそうだ。

 それにしても、彼は何だか話しやすい。

 獣耳(じゅうじ)が生えてないから気後れしない、というのもあるのかもしれない。

 この世界の人であるからには、彼も獣人なんだろうけど。

 彼はどういう種族なんだろう?


 しかし、そんなことよりも気になるのは、スズさんだ。

 僕が来たら彼女はどんな顔をするだろう?

 また呆れた顔して怒るかもしれない。


 そんな風に想像を膨らませていると、行き止まりに辿り着いた。

 見た感じ、駐屯地どころか人気も全くない寂れた場所だ。


「コウさん、道間違えてない?」

「いいや、間違いじゃないぜ?」


 そう言って彼が振り返った時、視界が歪んだ。

 景色がグニャグニャになり、何がなんだか分からなくなる。

 ただとても気持ちの良い気分だった。

 何も考えられず、この気分と浮遊感にただ身を任せた。




 ふと意識が戻る。

 唐突に切り替わる景色の変化に、脳の処理が追い付かない。

 ただただ、何も分からず周囲を見回す。

 周りは岩で覆われていて、まるで洞窟みたいだった。


 そこには僕以外にも人がいた。

 屈強な体をした男逹が数人。

 その中に、全身に軽い火傷を負った盗賊。

 そしてコウさん。

 彼の背中には鳥の様な大きな羽が生えていた。


 僕は驚きのあまり立ち上がろうとするも、足が動かず地面に体を付けた。

 どうやら手足を縛られてるみたいだった。

 そんな僕の無様に男達は笑いだす。


「えっと……もしかして」


 誘拐された?

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