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僕と鎖と修道服1

「ここは?」


 気がつけば、まるで知らない場所に居た。

 さっきまでは、人混み溢れる街中に居たはず。

 でもここはまるで廃村だ。

 ボロボロになった木造家屋が、あちらこちらに建っていた。


 暫く呆然としていたけれど、とりあえず周囲を見て回ろうと決意する。



 十分じゅっぷんほど探索したあたりで、人影を発見する。

 建物の陰に隠れてしまったから、よく見えないけど、大きさからして人間だ。

 あまりの静けさに、泣きそうになっていたので、僕は心底喜んだ。


「すいませーん」


 呼びかけながら駆け寄っていく。

 転びそうになりながら、陰になった建物を覗きこんだ。



 化け物が居た。

 というかゾンビがいた。



 僕は叫び声を上げながら尻餅をつく。

 ゾンビは僕に向かって右腕を降り下ろす。


「シルバーチェーン!」


 その瞬間、勇ましい声と共に、巨大な鎖がゾンビを叩き潰した。

 腐臭が一気に漂いはじめて、僕は間髪いれずに胃の中を吐き出した。


「あら? まだ生存者がいたのね」


 頭上から冷たい声が聞こえてきた。

 顔を上げると女の人が立っていた。

 修道服で身を包み、フードの間からは金色の前髪が覗いていた。

 サイズがあっていないのか、全身タイツのように布地がパツパツに張っていた。

 大きな胸がとても窮屈そうに主張している。


 女の人は僕から視線を外すと、興味がないとばかりにサッサと歩き出す。

 僕は慌てて彼女を追いかけた。


「ちょ、ちょっとまってよ」

「何? 鬱陶しいから着いてこないで」


 突き放すように言い捨てると、シスターは振り向きもせずに前へと進んでいく。

 僕は折角見つけた救いの手を逃さないよう、必死に彼女の後ろを追いかける。

 身長差からくる歩幅の関係で、小走りについていくのがやっとだ。


 突然彼女の足が止まり、背中にぶつかる。

 不思議に思って、脇から前を覗くと、さっきとは別のゾンビが立っていた。

 その数は十を越えている。

 シスターはゾンビ軍団を睨んだまま、小さく舌打ちした。


「わかった? あんたに構ってる暇はないの、サッサと失せなさい」


 前を見据えたまま彼女は吐き捨てて、銀色の鎖を構えた。

 先程に比べると随分小さい普通の鎖だった。


 冗談じゃない。

 いきなり変な所にやって来て、ようやく見つけた人なんだ。

 見失ったら、次はいつ会えるかもわからない。

 だっていうのに、なんなんだこいつ達は……。


 僕は勢いよく彼女の前へと飛び出した。


「邪魔をするなぁぁあ!」


 叫びながら、目の前の邪魔者達に向かって手をかざす。

 掌から巨大な炎の帯が一直線に飛び出ると、一瞬でゾンビの集団を呑み込んだ。


 ゾンビは燃えながら、呻き声をあげる。

 シスターはその様子を茫然と眺めると、ようやく僕に視線を移してくれた。


「アンタ、一体」


 僕は焼け焦げて酷くなる腐臭に再び吐いた。

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