夢、うつつ
暖かい目で見てください。
小さな女の子が泣いている。艶やかな長い黒い髪をした女の子が。
誰かが、近づいてくる音がして、女の子は顔をあげる。
「どうしたの?」
近づいてきた男の子が聞く。明るい色彩を持つ男の子だった。
「ママがいなくなっちゃったの…」
女の子は泣きながら答える。
「僕もしろとはぐれたんだ。」
「しろ?」
「僕の飼っている犬だよ。」
「どんな犬なの?」
「まっしろでふわふわしてるの!」
「かわいい?」
「すっごく!」
女の子と男の子は仲良く話していた。
それはふたりにとって楽しい時間だった。
「沙羅~‼どこにいるの?!」
「ワンワン‼」
女の子と男の子を呼ぶ声がする。
「ママだ。」
女の子が言った。
「しろだ。」
男の子が言った。
「バイバイ。」
男の子が言った。
「また明日会える?もっとお話ししたいっ!」
女の子が言った。
「また明日、会おうね。」
男の子はにっこり笑って答えた。
幼いふたりはまた明日会う約束をした。
次の日、昨日と同じ時間に同じ場所でふたりは会った。
いろんなことをふたりは話した。
「あっ、お星さまだ。」
「ほんとだ。」
「あのね。お星さまはね、たくさんあってね、きれいな川があるんだよ。」
男の子は女の子にお星さまの話をした。
「お空に住む王子さまとお姫さまはね、1年に1回しか会えないんだよ。」
「どうして?お姫さまたちかわいそう。」
「天の川、お星さまでできた川をわたれないから。」
「どうして?」
「橋がないから…」
男の子は悲しそうにうつむいた。
「だいじょうぶだよ!」
女の子は言った。
「お星さまのひかりを渡って会えるもん。」
女の子の言葉に男の子は目を見開いた。
「そうだね。ひかりの橋を渡って会えるね。」
男の子は嬉しそうに笑った。暗くなってきたので女の子たちはまた明日会う約束をした。
「また明日会おうね。」
「うん。また明日。」
女の子と男の子は仲良くなった。
しかし、ある日男の子は
「僕、引っ越すんだ。」
と言った。
その夜に
「この星が見える丘でまた会おうね。」
ふたりは約束をした。
幼い頃の私の記憶だった。
最後まで読んでくださりありがとうございました。