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弱くてニューライフ~逆転のサードスクエア~  作者: 梨本 和広
2章 七貴舞踊会のフィナーレ
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68.5話 信じられない光景

こうも孤独を感じたのは、産まれて初めてかもしれない。


たくさん周りには人がいるのに、いろんな人が応援してくれているのに、まるで心に響いてこない。


ミレットと連絡が取れないことが、こんなにも辛いことだとは思わなかった。


小さい頃からずっと一緒にいて、今もその関係が続いている唯一の親友。境遇が似ていることもあって、心の底から信頼できていたのは彼女だけだった。


だからこそ今、こんなに辛く追い込まれたような気持ちになっている。正直言って、よくこの舞台に立てたと思う。


『メドラエルさんは必ず見つける。コトロスさんの前に連れてくる。だから、信じて待っていてほしい』


あの言葉がなかったら、ここにはきっと立てていない。あの人が言ってくれたから、一縷の望みに縋ることができた。



――――――でも、結局連絡は来なかった。



念のため七貴舞踊会の運営には補助役が遅れるかもしれない旨は伝えてあるが、自分が舞台に入ってから数分、何も行われないことにざわめきが起きている。


アナウンスで会場準備を取り繕っているが、それももう限界だろう。



――――――何より自分が、演舞を行えるモチベーションじゃない。



仮に今この場にミレットが来ても、連絡が取れなかった彼女への不安を取り去ることなどできない。何故なら、自分にはミレットが体調を崩しているように感じられたからである。


朝に会った時から違和感を覚えていたが、こういう事態になって確信する。そして後悔している、もっと早くミレットに言っておけばこんな状況にはならなかったのではないかと。



目尻に涙が溜まっていく。

こんな大勢の前で泣くなんてあり得ない。だが、これを止めてくれるものがない。



絶体絶命。ミレットが来ても演舞が失敗する気しかしない。ミレットが来なかったらきっと涙は止まらない。そんな絶望的な状況。



――――――――だからこそ、その光景を見た時、自分の心臓は不思議なほどに高鳴った。



あり得ないようであり得る状況。しかし到底信じられない状況。


絶体絶命の中、無意識に可能性を見出した瞬間。




――――――――入場口から姿を現したのは、ミレットではなかった。


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