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第六十五話

お待たせしました。

どうにも執筆感覚が取り戻せておらず、自身としても困惑しております。

出来ましたら、生暖かい目で見守って頂きたく思う所存でございますですorz


それでは第六十五話、始まります。

 ぐぎぎぎぎ、あ痛たたたた。あーもうちくせう、まーだ筋肉が軋んでら。


 あの後、おっちゃんらの治療を終えた僕らは、ギルド職員(スタッフ)の制服を着て押取り刀で駆け付けたヌルさんとリコリスちゃんへ状況を説明し終えると、ステラが言っていたことが気になったので、改めて無力化した男の元へと足を向けた。


 するとそこには、いつの間にか現れた平服を着込み青ざめた顔をした男性二人がマヌツラ――どうやら『ケ』と濁点は要らなかったらしい――を簀巻きにしてふん縛っていたのである。


 この二人の男性はどちらも見知った気配で、先日ヌルさんと一緒に集落跡まで尾行しながらも姿を見せなかった二人であろう。


 一瞬その二人と目が合ったので、僕が会釈すると何故か二人揃ってビクッと肩を震わせ、化物を見たかのような顔をされた。


 しつれーな。


 まあそんなお二人は放っておいて、僕は改めて簀巻きにされても未だに痙攣しながら白目を剥いて転がっているマヌツラを鑑定して見たのだが……。


 結論としてはよくわからない、ということがわかった。


 ステータスとしては、《サンダーハンド》の効果によってHPは400ほど減っており、【状態】には『狂乱』に加え、『気絶』と『感電』、それと『麻痺(1287秒)』が追加されていたくらいで、ステラがああも興奮した様子で断言したものだから何かしら妙な点があると思ったんだけど、これら以外に先ほどと変わっていたり、おかしな点は無さそうだった。


 いやまあ、そもそもの話、人間が魔物化するってこと自体がおかしな話なんだけどさ。


 そんなふうに首を捻りつつも、《サンダーハンド》って意外と強力な魔術だったんだなぁ、とか考えていると、リコリスちゃんに何かの指示を出し終えた様子のヌルさんから、あとはこちらで処理しておくから今日のところは宿へ帰っていいとのお言葉を頂戴した。


 ここで考えていても答えは出ず、間も無く陽も沈みきる時間帯でもあったので、僕らはそのお言葉に甘えさせていただくことにしたのである。


 勿論、明日ギルドに出頭するように言いつけられたが、まあこの後に待ち受けているであろう厄介事を引き受けてもらう以上、それは仕方のないことだ。


 帰り際、遅れて現場入りした衛兵さんやおっちゃんらに、ヌルさんが銀色の大きめのコインを渡しているのが視界に入ってきたりして、ちょっとだけ大人の世界の裏側事情を目撃したりしてしまったが、そんなことはまるっとスルーして帰路に着いたのであった。


 そんなこんなで、水瓶亭に帰ってきた僕らは夕食を終え、宿泊している部屋でひと息ついて身体を休めていたわけなんだけど。


 まあ今回のことは色々と勉強になったわ。


 ひとつ目は、雷系統の魔術について。


 今回使用した雷系統の魔術は確かに強力だった。


 対象にそれなりのダメージを与えた上に強制的に麻痺を付与したり、刹那の瞬間とはいえ俊敏だけでなくそれに付随した反応速度や思考速度を大幅に上昇させたりと。


 ただその反面、問題点も浮き彫りになった。


 先ず効果範囲が小さいこと。そして反動の大きさだ。


 《サンダーハンド》なんかは、反動という面でのデメリットは殆ど無いが、魔術の維持時間が十秒且つ効果を発揮するには対象と接触しなければならない、などの縛りがやはりキツい。


 《ライトニングダンス》とかいう魔術に関してはというと、あれはほんとにロクなもんじゃない。


 発動後の反動が半端無さ過ぎる。


 あの魔術の効果が切れた直後は、息を整えるのも辛いくらいに全身の筋肉がイっちゃってるし、駆け寄ってきてくれたステラが勢いそのままに僕の顔へヒールポーションをぶっかけてくれたんだが、それでも腕を動かすだけでまあまあ泣き叫びそうな痛みが全身を駆け巡ったのだ。


 その後即座にヒールポーションを2本ほど(あお)ったのだが、それでもなんとなく全身が錆び付いたような違和感を落としきれるものではなかった。


 顔面にぶっかけられた時などは、ヒールポーションのテキストには『飲んでも掛けても効果がある』という記述があるので使用用途としては、まあ間違っちゃいないんだけど、何て言うか、こう、何か違くないかい、ステラさん? などという言葉が一瞬頭に過ぎったが、今回は相手がひとりだったがこれが複数を相手にした状況であったのならば、悠長に飲ませて回復させるよりはぶっかけたほうが余程手っ取り早いし、一分一秒を争うあの状況では、結果的にあれが正解だったのだろう。


 【雷電魔術】の中には大規模且つ反動が小さい代わりに膨大なMPを必要とするものがあったりするが、それ以外となると今日使った魔術同様、強力ではあるがデメリットを無視出来ないものが多い。


 結論としては封印指定とまでは言わないけれど、ここぞというところで使うべき魔術、ってところか。


 但し《ライトニングダンス》、オメーは駄目だ。


 ということで、今後は他の魔術同様に検証をしていこうと思う次第です。


 問題は、近場に電撃垂れ流しでも大丈夫な開けた場所が無いことと、風系統や土系統と違って反動がモロに自分の身体に返って来るので介添えが必要なこと。


 後者はラピスとステラが居れば大丈夫だとは思うけど、場所がなぁ。


 まあでも、やっぱりぶっつけ本番はいくないので、どこか良いロケーションを探しますか。


 そして、ふたつ目はヒールポーションについて。


 結論からいくと、ぶっちゃけ回復量が足りない。


 いや、数値的なものとしては十分足りているとは思う。


 実際、市販? の物と比べると回復量には十倍近い差があるのだ。


 だが、今回は自爆に近いものではあったが、あの魔術の反動から復帰するのに顔面1本、服用2本、合計3本のヒールポーションを使っても身体に違和感が残ったのである。


 また、先日のコーデリアさんを治療した時もそうであったが、血の海に沈んでいたおっちゃんの治療にもお椀一杯分、小瓶にして約10本分のヒールポーションが必要だった。


 もし、万が一、自分がこの状況になったら? と考えると寒気がする。


 あんな重傷を負った場合、果たして僕は正常な判断を保ち、10本近くものヒールポーションを傷口目掛けて振りかけたり飲むことが出来るのだろうか?


 その間、敵対した相手は待ってくれるのだろうか?


 恐らくそれは無理だし、待ってもくれないだろう。


 【無痛】や【痛覚鈍化】といった痛みを遮断もしくは鈍くするスキルを持っていれば、一旦距離を取って治療する時間を稼ぐことは可能かもしれない。


 また“痛みを感じない”というのは戦闘を念頭に置いた場合、相手に対して圧倒的なアドバンテージがあると思われる。


 しかしそれは“感じない”というだけであって、“無くなった”という訳ではない。


 そこには必ず痛みが“ある”のだ。


 そして“痛み”というものは、生物における自己防衛本能のひとつ。


 それを忘れてしまうこれらのスキルを獲得してしまうと、必ず何処かで取り返しのつかないことになってしまうだろう。


 それ故、僕は“痛みを感じつつも我慢する”のでは無く“痛みを感じない”というスキルの仕様に強い危機感を抱き、そういった系統のスキルは獲得しなかったのだ。


 まあそのせいで、今回は《ライトニングダンス》の反動という、酷い目に会ったわけで、【無痛】は兎も角、【痛覚鈍化】くらいは獲得するべきだったのかもしれない。


 スキル枠を全て埋めてしまった今となっては、そんなことを言っても仕方がないので、話を元に戻そう。


 大きな傷を負ったとき、HPを回復しつつその傷を塞ぐには、今の手持ちのヒールポーションでは大量に必要となる。


 平時や邪魔が入らない時であればそれでも問題無いが、落ち着いて治療出来ない状況の場合、どうするか?


 答えはシンプル。


 より効果量の高いヒールポーションを使えばいい。


 と、いうことで作って参りましょう、ヒールポーションより上位の魔法薬(ポーション)


 取り出しましたるはこちら、毎度お馴染みの手鍋と四つの素材でございます。


 ひとつ目はこちら、魔法薬(ポーション)には必須といっていい溶媒の魔力水。


 続いて、こちらもほぼ必須の触媒である魔石粉をさらさらーっとその中に落として。


 そして今回の魔法薬(ポーション)の主役、乾燥させた良癒草を浸す。


 最後に回復効果をさらに高める成分を保有する、灰の森で採取したこちら。



=======================


名称:ヒーリングマッシュルーム

ランク:★★★

区分:素材

品質:高


概要:魔力を豊富に含む倒木を基質にする菌類

   毒性は無く、焼物や煮物にすると大変美味


   食べると少量のHPを回復する


効果:摂食三十分後HPを20~25回復する

消費期限:29日と23時間52分39秒


=======================



 これら四つの素材を手鍋へと投入して、準備完了っと。


 ではでは、参ります。……錬成!


 そうしてスキルを発動させると、お馴染み……に……なっ…………たって、ぬぉぉぉっ! な、なんだ!! い、今、ヒールポーションやスタミナポーションを錬成した時に比べて桁違いの魔力が持って行かれたぞ!!


 治癒草よりもランクの高い良癒草を素材にしたので、ヒールポーション作成時よりも多くのMPを消費しそうだとは思っていたんだけど……。


 想定していたよりも大きな虚脱感に見舞われ、戸惑いつつもステータスウィンドウを開く。



―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・


名前:ユウキ ハルト

種族:人間族

性別:♂

年齢:17

職業:魔物使い(眷属:2、盟約:3)

身分:異世界人、冒険者(無星)


状態:筋肉痛


BLv:82  ▲【決定】

JLv:30  ▲【決定】


HP:2644/2644 ▲【決定】

MP:772/899   ▲【決定】


筋力:316  ▲【決定】

体力:352  ▲【決定】

知力:321  ▲【決定】

敏捷:302  ▲【決定】

器用:526  ▲【決定】


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・



 ま、まじか。


 自作ヒールポーションには僅かだがMP回復効果もあるし、休憩して食事も取ったので、さっき魔術を使って消費したMPは全快していたはずだ。


 その後ラピスに50ほど吸われたから現在MPは849のはずだった。


 それなのに、今はそこからMPが77も減ってる。


 ってことは、今回の錬成で使用したMPが77ということだ。


 これまで僕は、ランク2のヒールポーションとスタミナポーション、ランク3のマナポーションやブラッドポーションという四種類の魔法薬(ポーション)を作ってきた。


 それらを錬成で作成した時、ランク2は消費MP20、ランク3の時は30のMP消費だったので、錬成後のアイテムランク1につき錬成の消費MPは10づつ増加する、という予測を立てていたのである。


 よって、僕のこの予測が合っているならば、今回の良癒草をメイン素材にした錬成で出来上がる上位の魔法薬(ポーション)はランク7ということ。


 だが、今回の素材で出来上がるものは……それにこの端数はなんだ?


 と、そこまで考えたところで、いつもより長く光っていた手鍋の淡い光が漸く収まりつつあった。


 それに気づいた僕は、頭に()ぎった疑問を一旦棚上げして、光が完全に収まったところで手鍋の中を覗き込む。


 すると、そこにはヒールポーションの時と同様大分(かさ)が減った透き通るような薄緑色の上澄みと沈殿物に分かれた液体が揺らめいていた。


 うぅん、色以外はヒールポーションと対して変わり無いな。


 良癒草の色も外見も治癒草と大差ないので、ヒールポーションよりも色が薄いのはヒーリングマッシュルームの影響かな?


 ということで、いつも通りに小瓶に移して鑑定してみると……



=======================


名称:ミドルヒールポーション

ランク:★★★★

区分:薬品

品質:やや高


概要:良癒草を主素材とした中級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを2092~2108回復する

消費期限:299日と23時間59分22秒


=======================



 やっぱりだ。これは『錬成レシピ大全集』に載っていたものと同じ。


 回復量についてはちょっと議論の余地が有るかもしれないが、ランクが4というのも同じだ。


 ということは、錬成で消費するMPは40で済むはず。予測が間違ってたのかなぁ。


 今し方、僕の予測が間違っていたと数字で示されはしたのだが、この結果に僕はどうにも納得がいかない。


 そこでもうワンセット、ミドルヒールポーションの素材を取り出し、目の前に並べてみた。


 材料については間違っているはずもない。実際、魔石粉、魔力水、乾燥した良癒草、ヒーリングマッシュルームと順に手に取ってみても、『錬成レシピ大全集』はミドルヒールポーションを導き出す。


 んんぅー、何が違うんだろう?


 今まで作った魔法薬(ポーション)はランクが2だろうが3だろうが、どれも素材は三種類。


 素材が一種類増えただけで、それらの倍以上もMPを使うものなのだろうか?


 なーんか見落としがある気がしてならない。


 このヒーリングマッシュルームなんて、瑞々しくて生でも食えそうなほど新鮮なん……だ……けど…………ん? 待てよ、ナマ?


 あることに気が付いた僕は、再びヒーリングマッシュルームを手に取り、『錬成レシピ大全集』を検索。


 ……


 …………


 ………………あった。


 なるほど、そーゆーことね。


 ということで、リトライ開始。


 目の前に並べた素材を使って、再びミドルヒールポーションを錬成。


 先ほどと違うのは、錬成する前にヒーリングマッシュルームを【生活魔術】第二階梯の《ドライ》を使って乾燥させたこと。


 すると、先程よりも脱力感は軽減され、手鍋を包む光も先ほどの半分ほど――他の魔法薬(ポーション)と同じくらい――の時間で収まった。


 改めてステータスウィンドウを見てみると、現在MPの値は732。


 つまり、ランク4のアイテムを錬成して40のMPを消費した、ということ。


 うん、ちょっとサンプル数は少ないかもしれないが、恐らく僕の予測は間違っていなかったようだ。


 そして、一回目の錬成で起こった現象について考察してみると、恐らく『ヒーリングマッシュルームを乾燥させる』という工程と『ミドルヒールポーションを作成する』という工程を連続して行った為に起こったと思われる。


 即ち、ランク3を錬成でMP30(プラス)ランク4を連続錬成でMP40消費、合計でMP70を消費ってな具合だろう。


 端数の7がちょっとよくわからないが、錬成工程を繋げるための消費ってことなのかも。


 しっかし、これはどうなんだ?


 今回の例でいえば、ヒーリングマッシュルームが原料で、乾燥ヒーリングマッシュルームは中間素材に当たる。


 これは中間素材が無くとも、原料さえ揃っていれば、膨大なMPを消費するが錬成は可能ってこと。


 親切なんだか不親切なんだか、イマイチ微妙なところだ。


 今回は二工程だったから、こんなもんで済んだけど、これが三工程も四工程もあったら、モノによっては一発でMPが底を突いて魔力枯渇に陥ってしまう。


 今後の錬成では、中間素材の有無について要チェックだな。


 それから『錬成レシピ大全集』を検索していて、もうひとつ気になることを発見した。


 それは、ヒーリングマッシュルームからの錬成先が乾燥ヒーリングマッシュルームとあるのだが、さらにその先に乾燥粉末ヒーリングマッシュルームっていうものがあったことだ。


 因みに乾燥ヒーリングマッシュルームの鑑定結果はこちら。



=======================


名称:乾燥ヒーリングマッシュルーム

ランク:★★★

区分:素材

品質:高


概要:魔力を豊富に含む倒木を基質にする菌類を乾

   燥させたもの

   毒性は無いが、このままでは食用に適さない

   食す場合は、一度水で戻してから食すこと

   戻した水は大変良い出汁となるので、捨てる

   べからず


   湿気に注意


=======================



 鑑定結果には、まあ色々と言いたいことはあるが、それはひと先ず置いておく。


 これを乾燥させるのは錬成でも可能のようだが、《ドライ》で乾燥させた方が圧倒的に消費MPが少ないので、そっちの方が経済的である。


 もっといえば、時間さえあるのであれば《ドライ》を使う必要もない。


 天日干しにすればいいだけだ。


 そしてさらにその先にある、乾燥粉末化したもの。



=======================


名称:乾燥粉末ヒーリングマッシュルーム

ランク:★★★

区分:素材

品質:高


概要:魔力を豊富に含む倒木を基質にする菌類を乾

   燥させ、さらに細かく砕いて粉末にしたもの

   毒性は無く、塗布または体内に摂取すること

   で自然治癒力を高める効果があるので軟膏や

   丸薬の素材に用いられる


   お湯に溶かして薬膳茶とすることもある


   湿気に要注意


=======================



 これも乾燥させるのと同様、錬成でも出来るし、薬研を使って粉末状にするでもいい。


 薬研はグリンさんから頂いてきてはいないので、今回は錬成で粉末状にしたのだが、これの錬成先にもミドルヒールポーションがあるのだ。


 はてさて、これはどういうことなのだろう?


 まあいいや、取り敢えずこれで作ってみるか。



=======================


名称:ミドルヒールポーション

ランク:★★★★

区分:薬品

品質:やや高


概要:良癒草を主素材とした中級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを2240~2260回復する

消費期限:299日と23時間58分55秒


=======================



 ぉぉん? ランクも品質も変わりないけど、回復量がちょっと増えた?


 なんで? って理由は明らか、か。要するに粉末状にした方が、抽出効率が良い、ということなんだろう。


 となると、だ。良癒草も粉末化させれば、さらに良くなるはず。


 ふむ、物は試しだ、やってみますか。


 先ずはヒーリングマッシュルームを乾燥させて、粉末化。


 続いて、乾燥した良癒草も錬成で粉末化させてっと。


 ではでは、参ります。錬成からの鑑定っと。



=======================


名称:ミドルヒールポーション

ランク:★★★★

区分:薬品

品質:高


概要:良癒草を主素材とした中級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを2392~2408回復する

消費期限:299日と23時間59分08秒


=======================



 なんとぉ!? ひ、品質が上がったぁ?! そして回復量がさらに増えて、元からそうだったけど、更にメリッサさんたちに見せられるレベルじゃなくなったです、はい。


 い、いや、元より自分たち用と想定していたので、まったくもって、じぇんじぇん問題無いんですけど、ね……ほ、ほんとですよ?


 しかし、この状態でヒールポーションの九倍弱、凡そ9本分か。


 まあ元々ヒールポーションをお椀一杯分、10本もちまちま飲んでられっか、というコンセプトだったんで、回復量としては十分ですな。


 さて、それでは残りも瓶詰めしていきます……か…………し、しまった、これ、何の味付けもしてねぇ。


 今までの経験からいくと……あ、だめだ、ヒールポーションを初めて試飲したときの味が……あ、胃がキュッて、キュッて……。


 ふぅぅぅぅぅぅぅ、あ、あっぶね、危うく夕食のホーンラビットの肉がキラキラするとこだったわ。


 これは封印だ封印。30本も作っちゃったものの、何がとは言えないけど売ったらマズイことになりそうな予感ビンビンだし、メリッサさんたちに見つかろうものなら再び正座で説教コース確定だもんな。


 ということで、【アイテムインベントリ】へ、ゴー、シュートッ!!


 ふぅ、これで悪は滅びた。


 まぁ冗談はさておき、手持ちのもので味の魔改造が出来るといいんだけど、なぁにが使えるかなーっと。


 そんなふうに【アイテムインベントリ】のリストを眺めていると、ステラと遊んでいたはずのラピスが軽快なステップでぽんぽんと跳ねながら近付いて来るのが目に入った。


――ねぇねぇあるじー、なにしてるのー?


 んー? 今はねぇ、ちょっとスキルの検証中なんですよー。


 そう答えながら、手の平を差し出すと、ラピスは僕の手前で一際大きく跳躍して、見事にそこへすっぽりと収まり、ステラはどうしたのかな、とベッドの方を見てみると、どうやらステラは既におねむのようであった。


 ベッドの上ですやすやと夢心地のステラはそっとしておいて、再びラピスへと視線を向けると……こやつ、また【ブリッツビート】のレベルが上がっておるな。


 まあスキルレベルが上がること自体はいいんだけど、今日みたいにいきなり突貫しようとしないでもらいたいものだ。


 どう言い聞かせたものか、と考えながらラピスを見つめていると、手の平の中で転げ回っていたラピスがピタリと停止したかと思ったら、急に脱力感が増した。


 あ、こら、ちょ、待ったラピス! お前さっきも吸ってっただろ! それに今結構MP使っちゃったし、もうちょっとつかいた……って、だから吸っちゃらめえええぇぇぇえぇぇっ!!

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