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第四十六話

先週サボったくせに短めです。

どーにも文章が纏まらない。文才の無さ加減に落ち込んでますorz


それでは第四十六話、始まります。

「ところでハルトさん、ステラちゃんの服装についてなんですが」


 ギルドハウスでの精算が終わり、アンナが仕事に戻った時点で五ノ鐘(正午)間際ということもあって、午後の行動を決める前に、そのまま併設された酒場で昼食を摂ることになったのだが、不意にコーデリアさんがその食事の手を止め、真剣な目つきで僕のことを見つめてくる。


 昼食を取っている最中、コーデリアさんはステラが僕が渡したリピコの実を頬張りながら、(しき)りにずり落ちそうな胸帯を直していることに気付いたようで、僕が――【ポイントコンバーター】やステラが進化したことなどを伏せて――今朝の出来事を掻い摘んで話すと、そういうことなら! と勢い込んだコーデリアさんは昼食を急いで掻き込み、食べ終わったかと思ったところで力強く立ち上がり、リピコの実を頬張っていたステラを抱えて、皆さんが普段から利用しているという衣装屋へ行ってきます! という言葉を残してギルドハウスから出て行ってしまった。


 コーデリアさんに抱えられたステラは、摘んでいたリピコの実片手に驚いた表情を浮かべてなされるがままの状態で、僕らも突然のこと過ぎて、呆然とステラが連れ去られる様子を見送ってしまったが、メリッサさんとトリフィラさんが同時に吐いたため息で、はたと我に返り、僕らも急ぎ昼食を掻き込んでコーデリアさんの後を追って、件の衣装屋へと向かった。


 ステラの急成長の話をしていた時、コーデリアさん以外の三人が何やら盛大に引き攣った表情になっていたのが印象的だったが、何故そんな表情を浮かべていたのかは不明である。


 僕らがその衣装屋に着くと、店の奥の方からコーデリアさんの楽しそうな声が響いており、再びため息を吐いたメリッサさんたちはステラとコーデリアさんを探しに店の奥に向かっていった。


 女性の服選びという嫌な予感満載であることと、コーデリアさんが異常に張り切っていることもあって、ステラのことは女性陣にお任せすることにして、この衣装屋は主に古着を扱っているということなので、ちょうど僕も替えの服が欲しかったこともあり、今着ている麻の上下、それに似た服を三着ずつ選んだ。


 今は着たきり雀であったし、【生活魔術】の《クリーン》で清潔を保ててはいるし、この服は意外と頑丈に出来ているようで、今のところ破れも解れもして無いので当分は問題無く着れるとは思うが、それでもいざという時の替えの服がないのは少々不安であった。


 それに今後は革にしろ金属にしろ、冒険者として鎧を身に着けることになるのだから、その下に着る服は簡素で頑丈なものが良い、という思いからのチョイスである。


 ……この四日間、何の防具も無しに森の中を彷徨っていたのか? という言葉は聞こえない。いいんだよ、危機管理は【気配察知】スキル全開で気を配ってたし、ワイルドローズっていう高ランク冒険者のガイドが居たんだから、安全は保証されてたんだ。


 だが、明日からはワイルドローズの皆さんも長期依頼で、暫くは僕とラピス、そしてステラの三人で依頼を請け負っていくことになるので、このタイミングで防具を拵えるための素材と資金が手に入ったのは、僥倖と言えるだろう。


 そんなわけで、選んだ麻の服三着のお値段は合計3万ゴルド。古着なのに高くね? いや、元の世界でも古着はヴィンテージ物とか目ん玉飛び出るぐらいお高い物があるにはあったが、これはどう見ても保存状態は良いものの、質に関しては比較的状態の良いものを選びはしたが、お世辞にもそれほど良いとは言え無い。


 まあ服を生産するお針子さんも技能職である。元の世界と違ってこの異世界では、文明の発展具合を鑑みると、機械を用いた大量生産なんてものは望むべくもなく、ひと針ひと針手作業で縫製となると、古着といえどこのお値段になるのも頷ける……のか?


 そんなことを考えながら、店内をひと通り見て回っていると、質の良さそうな外套を見つけた。


 店主に話を聞いてみると、これは灰色狼(グレイウルフ)という狼型の魔物の毛皮から作られた外套で、火には弱いがある程度水は弾くし、保温性も高く、護衛依頼など野営が求められる長期依頼が多くなる、四ツ星冒険者には必須と言われるほど逸品らしい。


 お値段にして一着4万ゴルド。一着仕立てるのに、最低でも五体分の毛皮が必要ということと、新品を素材持ち込み無しで仕立てるとなると、一着10万ゴルドを優に超えるということもあって、これでも安いほうらしい。


 ううーん、僕もメリッサさんたちの指導が終わったら四ツ星に昇格することがほぼ本決まりになっているので、今後のことも考えるとあった方がいいんだろうけど……。


 そんなふうに悩んでいると、店の奥からトリフィラさんとオーリンちゃんが姿を現す。


「ああ、居た居た。さて、坊やは何を見てるのかしら? あら、これは灰色狼(グレイウルフ)の毛皮で出来た外套ね」


 そう言ったトリフィラさんが徐に、僕が見ていた灰色の外套を手にすると、生地を確かめるように引っ張ったり、縫い目をチェックしていく。


「……ふぅん、ここにしては中々良いもの仕入れてるじゃない」


 灰色狼(グレイウルフ)の外套を手にして考え込むようにしていたトリフィラさんだったが、暫くして納得したようにひとつ頷くと、手にしたそれを僕の方へと広げて見せた。


「うん。この品質でこの値段なら、大分お買い得だと思うわ。坊やもあの話を受けるって言うんなら、こういう装備はあった方がいいと思うわよ」


「……ん。ボクはこれがあるからいらないけど、それに(くる)まったトリ(ねえ)と一緒に寝ると暖かくて気持ちいい」


「まったく、アンタはいつもいつも……」


 慎ましい胸を張りながら、いつもの半眼のまま何故かドヤ顔で、黒い魔術師風の外套を摘んでそう(のたま)うオーリンちゃんをジト目で睨むトリフィラさん。


 同じパーティーを組む同性ならではの気安いやり取りを横目に、僕はステラ用にと先ほどのものよりひと周り小さい外套を選んでいく。


 こちらはひと周り小さいせいか、その分お安くなっており、一着2万5千ゴルド。


 手持ちのお金としては先日コーデリアさんの治療費の一部としてワイルドローズから支払われた分と先ほどアンナさんから手渡された分、そして日々の経費を差し引いた依頼報酬(赤字)で、大銀貨二十枚と銅貨が六十枚くらいある。


 今コーデリアさんとメリッサさんが選んでいるステラの服がいくらするかわからないが、まあ一式でも10万ゴルドは超えまい……超えないよね?


 このあと向かう革屋は冒険者ギルド連盟に加入しているらしいので、加工費等はギルド口座からの引き落としが可能ということだが、手持ちのお金がゼロになるのは避けたいところである。


 出来れば7万……いや5万ゴルドくらいに抑えてくれると嬉しいなぁなんて思ったりしないでもない。


 一先ず先ほど選んだ麻の服上下三着と灰色狼(グレイウルフ)の外套二着を確保しつつ、トリフィラさんとオーリンちゃんの雑談に混じって待つこと一時間。


「……長いですね」


 待つのも若干飽きてきた頃、僕がそうぽつりと零すと、トリフィラさんが肩を竦めていた。


「まあ、それは……諦めなさい。コーデリアは昨日の時点で察しがついたとは思うけど、メリッサもあれはあれで可愛い子を着飾らせるのは、大好物だからねぇ」


「……ん、最近は大分大人しくなった方だけど、パーティーを組んだ当初は、それはもう酷かった」


 当時を思い出したのか、オーリンちゃんのその目からは光が半ば失われ、うんざりとした表情を浮かべていた。


 オーリンちゃんも抑揚を欠いた喋り方を除けば、美少女と言ってまず間違いない容姿をしているので、お二人の趣味が、まあ、そういうことなら、着せ替え人形にされたのだろうことは想像に難くない。


 そういえば花凛ちゃんはそうでもなかったけど、麗華さんと朱音、それぞれ個別で買い物に付き合わされたときは服一着買うのに三時間コースってのも珍しくなかったな。


 あのときはあれこれ意見求められたり、いろんなところに連れ回されたりとしたが、それに比べれば、一緒に雑談する相手がいて、待っているだけでいい今の状況の方が万倍マシである。


 それからさらに待つこと一時間、漸く店の奥から上気したように顔を赤らめたコーデリアさんとメリッサさんが姿を現した。


「ぬふふ。いやーステラちゃんってば、素材がいいもんですから、色々迷っちゃいました! でも、時間かけただけあって、中々いい仕上がり具合になりました!!」


 ふんすっ! と大きく鼻を鳴らし、両手を腰に当ててパーティーいちを誇る豊かな胸を盛大に揺らしながら大見得を切るコーデリアさん。


 その後ろからおずおずと姿を見せたのは装いも新たにしたステラだった。


 先程までは魔物の毛皮を繋ぎ合わせたと思われる灰色の胸帯と腰巻を巻いただけの、何処の孤立部族ですか? という格好だったのだが……それが今ではどうだろう。


 肩にはライトブルーのケープを羽織り、胸帯は純白の下地に薄い青や赤色の刺繍が縫い込まれていて、腰巻はケープと同様のライトブルーの布地をパレオのように巻き付けている。


 その腰巻の結び目の下からにゅっと現れる黒褐色の御御足(おみあし)が何とも艶かしい。


 足元もヒールが無いグラディエーターサンダルと呼ばれる、生地を編んだようなデザインのサンダルを履いていた。


「どーです? どーですぅ?! 可愛いでしょう!!」


「うむ。我ながらいい仕事をした」


 ステラの肩に手を置き、ずずぃと見せびらかすようにして、鼻息荒く興奮した様子のコーデリアさんとやりきった感満載で深く頷くメリッサさん。


「あ、あのますた? 変、じゃないですか?」


 ちょっと俯きながら、上目使いで恥ずかし気にステラがそう問い掛けてきた。


 なので、僕は間髪入れずに凄く可愛いと褒める。ここでどもったり、言い淀んだりする事はない。それをすると数日口を聞いてくれなかったり、極寒の視線に晒されることは既に過去経験済みである。あれはキツいんです。


 まあそれを差し引いても、確かにお洒落で可愛いと思う。こ汚いただのボロ切れとしか思えないものも多い中、よくもまあこれほどのコーディネイトを出来たものだとも思う。


 だが冒険者である僕の従魔としてはどうなのだろうか?


 僕も一応男なので、背格好が年端も行かない少女ってのは多少気になるが、可愛い女の子が可愛い格好をして、隣に居てくれるってのは、非常に誇らしい。


 だけど今の僕は、元の世界でのいち学園生ではなく、一応は冒険者という荒っぽい職業、その末席に身を置いているので採取依頼や討伐依頼で森の中へ入ったり、依頼によってはここから他の街や村へと出張や旅をすることもあるわけで。


「あ、勿論これは街中で着る用なので、ハルトさんと一緒に森の中へ採取に行くなら、こちらに着替えたほうがいいですよ?」


 と、僕の考えを見透かしたかのように、コーデリアさんが後ろ手に持っていた、革のジャケットとステラの(くるぶし)くらいある長さの麻のズボンと膝下まで保護出来る革のブーツを取り出した。


 ふむ。ケープをジャケットに、パレオをズボンに、サンダルをブーツに着替えれば、踊り子のような衣装から一転して可愛らしさの欠片もない冒険者チックな格好になってしまうが、まあそれは仕方ない。


 肌を晒したまま森の中で活動すれば、枝葉なんかを引っ掛けて傷だらけになってしまう。


 ステラがあの集落で生活していた頃は、あまり森の中に入ることはなかったようだが、これから僕と一緒に行動するとなればそうもいかないので、安全には代えられないというところだ。


 ……ところでパレオの下ってどうなっているんだろう? 線が見えないけど、まさか履いてないってことは……いや、そんなまさか……え?


 うぉっほん! ということで店主に僕の替えの服、外套二着とこれら全てのお会計をお願いしたところ、〆て18万5千ゴルド。


 ステラの服一式で9万ゴルドでした。ま、まあ大きな収入があったばっかだし? ちょ、ちょっとくらい考えてた予算オーバーしたところで全然問題無いし? …………手持ちのお金足りてよかったぁ。


 そんなこんなで古着屋もとい衣装屋を後にして、現在時刻はつい先ほど六ノ鐘(午後三時)が鳴ったところ。


 服選びに随分と時間が掛かってしまったが、ステラの可愛い衣装を選んでもらった立場である。僕が選んでいたら、質素な格好しかさせてあげられなかっただろうから、文句は言えない。


 そして服選びが終わった今は、背負った頭陀袋の中身であるレッドオーガの皮を加工してもらうべく、トリフィラさんとオーリンちゃんに先導され、革屋へと向かっている最中だ。


「~♪」


 その道すがら、僕と手を繋ぎながら並んで歩くステラは、鼻歌を歌い出しそうなほどに上機嫌な様子。


 これほど喜んでくれているのであれば、手持ちの硬貨が心許なくなったとはいえ、9万ゴルドくらい安いものだ。


 因みにメリッサさんとコーデリアさんは僕たちの後方で軽やかに歩くステラの後ろ姿を恍惚とした表情で眺めている。ちょっと怖いです。


「さってと。アイツが居れば話は早いんだけど、居るかな?」


 先日寄った革製品を加工している工房が見えてきたところでトリフィラさんがそう呟き、ほどなくしてその工房へと辿り着く。


 先導していたトリフィラさんが、工房の取引用表玄関の扉を開くと、入店を知らせるベルが鳴り響き、それに一拍遅れ可愛らしくも威勢の良い声に出迎えられた。


「いらっしゃいませだにゃあ!」

ここまでお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字・矛盾点・説明不足・わかりにくい表現等のご指摘いただければ幸いでございます。

ただ、作者ガラスのハートでございますれば、柔らかい表現でお願いいたします。

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