第四十一話 ギルドマスター
諸事情により今回は短めでございますが、ご容赦くださいませ。
あ、あとルビ多めなので読み難かったら申し訳ありません。
それでは第四十一話、始まります。
ギルドマスターを呼んでくると言ってアンナさんが退室してから、まるで示し会わせたかのように、幾つかのマーカーの識別色が変化した。
白色から黄色に変化したマーカーの数はというと、ひとつ、ふたつ、みっつ……全部で七つ、か。
脳内に浮かぶレーダー盤表示では少々混乱しそうだったので、視界の片隅に【空間魔術】第一階梯の《ミニマップ》を展開して、そこに【気配察知】スキルを連結させることにした。
そうすると《ミニマップ》に置かれたマーカー、その高低差が表示されないのは相変わらずではあるが、視覚で確認出来るようになったことで情報の整理がしやすくなる。
高低差については、これはもう【気配察知】スキル単体による感覚的な情報頼りで対処するしかない。
ここでふと、更に【万象鑑定】を連結出来ないかな?と思い立ち、試してみたのだが……残寝ながら世の中こう美味いことばかりではなかった。
【万象鑑定】はありとあらゆる物や現象をポップアップウィンドウにて、説明文付で可視化するスキル。
恐らくこのスキルにとって一番重要なことは『可視化』すること。
であれば、【万象鑑定】の効果を発揮することに必要なことは『視認すること』であると思われた。
【気配察知】で感じ取ったマーカーは、あくまで『気配』という曖昧な情報であるため、それを視認しているわけではないので、【万象鑑定】によってその詳細情報を読み解けない、というのも一応理に適っていると言っていいだろう。
先日は複数のスキルによる有用なコンボを見つけたが、なんでもかんでもコンボに繋げられるということはなく、相性が重要といったところか。
さて、ちょっとした検証が済んだところで、改めて黄色マーカーの大きさを確認してみると……どれもが僕自身を示す中央のマーカーよりふた回りほど大きいようだ。
ラピスのマーカーと比べてみてもふた回りほど大きい。
僕の現在のレベルは55、方やラピスは先日のぴかぴかで星三つの魔物であるビッグスライムという【職業】に進化を果たしている。
星三つの魔物というと、人間のレベルでは60から100相当に当たり、ラピスは進化したてなので、目算ではあるが60相当と考えていいだろう。
そう考えると、僕とラピスはレベルとしてはほぼ同じ位置にいる。
だが、ここで問題となるのはステータス値についてだ。
僕とラピスのレベルはニアリーイコールと言えるが、ステータス値についてはお世辞雨にもそうであるとは言えないほど差が開いている。
にも関わらず、【気配察知】が示すマーカーの大きさはほぼ同じ。
確かにマーカーの大きさは脅威度の判定には役に立つとは思う……が、ここまであからさまにステータス値に差がある者同士のマーカーが同じ大きさってどーゆーことよ?
今は無邪気にテーブルの上に飛び乗ったり、ふかふかのソファーの上でぽよんぽよんしていたりするけど、はっきり言って、今のラピスはレベル詐欺、ランク詐欺と言っても差し障りないほどのステータスである。
まあ名持ちであったとしても、ここまでレベルとランク、ステータス値がかけ離れている者もそう多くはいないだろうけど、『そういうこともある』と頭の片隅に置いておくべきか。
とはいえ、このマーカーの大きさによる脅威度判定は、そういった例外を除けば、ある程度強さに対する物差しにはなるだろう。
普通であれば『自分より少し格上だが、仲間と連携すれば勝てないこともない』だとか『戦うまでもなく、明らかに格下』といった判断になるのだが、僕の場合はそれよりも手っ取り早い判断方法がある。
視認出来るのであれば【万象鑑定】でステータスを視てやればいい。
今回のように視認出来なくて、【万象鑑定】が使えない場合は、『自分のレベルと比較すればいい』のだ。
即ち、【気配察知】で表示される自身と相手のマーカーが同じくらいになれば、レベルとしては同等、というひとつの判断基準が出来る、ということ。
ということで、昨夜に続いて|ちーと先生《【ポイントコンバーター】》の出番です!
まあ、なんてことはない、黄色となったマーカーの中で一番大きいマーカーと僕自身のマーカーが同じくらいの大きさになるまでひとつずつレベルを上げていくと……ふむ、大体レベル82あたりで同等、か。
ドガランさんよりは低いけど、それに準ずるレベルの者が七人、この部屋の外を囲んでいる。
さてさて、ギルドマスターとやらは何を考えて、コイツらを配置したのかねぇ。
単純に考えれば、二体の魔物を連れた素性不明の新人を警戒した、万が一のためのギルドマスターの護衛、ってトコなんだろうけど……。
と、そこまで考えたところで、七つの黄色マーカーから動揺した気配が伝わってくる。
はて、何か不測の事態でもあったんかなー? と考えていると、アンナさんと思われる緑色マーカーが接触していた二つの白色マーカーが二つとも黄色に変化した。
そのうちのひとつは周囲の黄色マーカーと同じくらいの大きさなのだが、もうひとつの方がヤベェな。
それはレベル82となった僕のマーカーよりも倍近く大きい。
ってことは恐らくレベル150超え、かぁ。
流石にこのレベル帯まで一気に上げてしまうと、僕の身体の方が付いて来ない。
まあ、今の状態ならば何かあったとしても、ラピスとステラを抱えて逃げることくらいなら出来る、かな? ……出来るといいなぁ。
そんななんとなく物騒なことを考えていると、でっかい方の黄色マーカーが動き出した。
緑色マーカーの方も、それの後ろに付いてこちらに近付いて来る。
もう一方の黄色マーカーはというと、少し離れた場所にある二つの白色マーカーと合流したようだ。
ただ、何故かこちらの白色マーカーには変化が表れなかった。
暫くそれらのマーカーの動きを眺めていると、僕の倍近く大きい黄色マーカーと緑色マーカーの二つが、この部屋の前でその動きを止まる。
次いで、ドアを二回ノックする音とともにドアが開かれ、頭頂部を剃り上げてはいるが、その代わりたっぷりとした白い口髭と顎鬚を生やしたガタイのいい老人が現れ、それに続いてアンナさんも部屋へと入ってきた。
「ほっほ、待たせてしまったかのぅ」
見た目の第一印象は穏やかな笑みを浮かべるやたら姿勢のいい好々爺。
しかし、その発せられた声音は見た目とは裏腹に張りがあり、纏うオーラは未だ現役のそれを思わせる。
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
名前:グンゼス=ランフォスター
種族:人間族
性別:♂
年齢:62
職業:高位修道僧
身分:冒険者(十ツ星)
ディアモント帝国冒険爵
状態:警戒
BLv:158
JLv:67
HP:11739/11739
MP:1556/1556
筋力:796
体力:812
知力:381
敏捷:562
器用:200
保有スキル
【コモンスキル】
・礼法:Lv2
・格闘術:Lv9
・気配察知:Lv4
・肉体強化:Lv8
・魔力操作:Lv1
【ジョブスキル】
・回復魔術:Lv2
・治癒魔術:Lv2
・剛体術:Lv8
・練気法:Lv7
・発勁:Lv6
・気功纏衣:Lv5
・爆気纏衣:Lv2
【ユニークスキル】
・破邪顕正:Lv5
称号
・死者鎮魂
―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
彼が部屋に入ってくると同時に、そのオーラに当てられてしまい、思わず鑑定で視てしまった。
レベルやステータスもさる事ながら、このジイさまの【職業】は聖職者系第四階位職業である【高位修道僧】。
それもジョブレベルはカンスト――第四階位職業はジョブレベル70でカンスト――間近で、現在は文献でしか見られない最上位とされる第五階位職業にも手が届きそうなレベルであった。
しかもユニークスキル持ちでもあり、このスキルは不死系魔物に特攻効果を発揮する、という代物。
そのおかげなのか、ステータス欄には初めて目にする称号なんて物まである。
この称号も【破邪顕正】と同じく不死系魔物に対する特攻効果に加え、この称号の持ち主の付近では不死系魔物が発生し難い、という効果まであった。
しかし、この鑑定結果には三つほど疑問がある。
まずひとつ目。まだ僕はこの街では新参者であるが、少なくともこの街付近において不死系魔物が発生しやすい土地ということは聞いたことはない。
こんな称号を持っているのであれば、もっと適した任地があるのではなかろうか?
ふたつ目はステータス値。
生命力を示すHPの値は、今まで視てきた人たちと比べると、文字通り桁が違う。
だが、それ以外のステータス値については、レベルが50以上も高いにも関わらず、麗華さんたちよりちょっと上、といった程度であった。
もちろん【職業】によって伸びる値が違う、と言われてしまえばそれまでなのだが……どうにも違和感が残る。
そして最後に【身分】にある帝国冒険爵というもの。
メリッサさんやトリフィラさんのように、正式に爵位を継いでいない王侯貴族の子女、というのであればまだ解る。
だが、これは字面からして、どうみても正式な爵位であると思われる。
正式な爵位を国から授爵されたともなれば、その国家から何かしらの命令が下れば拒否出来ないのではないのか? そう例えば『国防のために侵略者と戦え』だとか『侵略戦争に手を貸せ』などと言われたり……。
その場合、冒険者規約にある『冒険者ギルドは国家間の戦争には関与しない』ってのはどう解釈するのだろうか?
それとも単なる箔付け?
まあどちらにしろ、ランク上げやら功績云々に対して、興味無い僕には縁のないことだと思われるし、そこまで気にしなくてもいいかとは思う。
が、これからのことを考えると、ちょっと先行きが不安ではある。
そんなことに考えを巡らせていると、僕の対面にある一人掛けのソファーの前まできた二人がこちらへと向き直る。
「ハルトさん、こちらの方が当冒険者支部のギルドマスターです」
「ワシはこの冒険者ギルド、ルセドニ支部のギルドマスターを任されておる、グンゼスじゃ。ワシはお飾りのはずなんじゃが、何故か皆してワシを執務室から出してくれんのじゃ」
「それはギルドマスターがなんの書置きも言伝も無く街を出歩いたり、外の様子を見てくるなんて言いだしたかと思ったら、ふらっと森に入っていくからです!」
「おお怖い怖い。アンナ君や、そんなんでは嫁の貰い手が無くなってしまうぞぃ」
「余計なお世話ですっ!」
アンナさんに対して、さらっとセクハラ発言を混ぜるジイさまには呆れてしまう。
けど、自分に向けられたものでなければ、ぷりぷり怒るアンナさんは可愛いんだよなぁ。
しかし、それよりもこのジイさま、おちゃらけた態度を取っているが、僕に向けられた目は笑っていない。
それどころか、まるで値踏みでもされているようだ。
まあそれはそれとして、先ずは挨拶を済ませるべく、僕は座っていたソファーから立ち上がり、腰を九十度に曲げ深々とお辞儀をする。
「初めまして。先日こちらにて冒険者登録をさせて頂きました、無星冒険者のハルトといいます」
それをぽけーっと見ていたステラが、僕がお辞儀をしたところで慌てて四苦八苦しながら立ち上がり、僕の横で同じようにお辞儀していた。
「ほっほ、聞いておるぞ。期待の新人らしいの。目上に対する礼儀も知っておるようじゃし、中々にグゥ、じゃぞ」
姿勢を正し、頭を上げると、鷹揚に頷いたジイさまがソファーに掛けたので、僕らもそれに習い、腰を落ち着ける。
と、そこで思いもよらぬ言葉がこのジイさまの口から放たれることになった。
「ところで、ハルト君。そちらのお嬢ちゃんと丸っこいのは紹介してはくれんのかのぉ? お主の従魔なんじゃろ?」
「あ、はい、これは失礼しま……した……」
……え? このジイさま、いまなんつった?
ここまでお読みいただきありがとうございます。
誤字・脱字・矛盾点・説明不足・わかりにくい表現等のご指摘いただければ幸いでございます。
ただ、作者ガラスのハートでございますれば、柔らかい表現でお願いいたします。




