第二十九話
僕は、ワイルドローズが僕との話し合いも無事に終わったので、屋台で昼食を取ったあと、馴染みの鍛冶職人の所へ向かうというメリッサさんに、一緒に行かないか? とお誘いを受けた。
今は武器や防具を購入するような資金は無いが、それらの相場を知りたかったということもあり、お言葉に甘えて同行させてもらうことにしたのだ。
そして、馴染みの鍛冶職人が店を構えているという冒険者区の東地区へと向かう途中の路肩に見つけた屋台で、無けなしのお金を払いホーンラビットの串肉を購入し、それを頬張っている時、僕はそれに出会った。
通りの反対側の路肩、商店と思われる建物の前に、荷台を引いた一羽のでかい二足歩行の鳥らしき生物が現れたのだ。
その鳥らしき生物の全体的なフォルムはダチョウによく似ていて、全高はおよそ二メートル半近くもあり、頭部と長い首そして横に長い楕円形の胴体には茶色い羽毛がびっしりと生えていて、その頭頂部には一枚の大きな純白の羽毛が聳え立っていた。
唯一羽毛に覆われていない脚部は成人男性の太腿より一回り太く、大地を踏みしめたり蹴り出すための三本の前趾と、体を支える役目を持つ後趾には特大の鉤爪。
嘴は鮮やかで美しい橙色をしているが、ハシビロコウのそれよりも二周りほど大きく、それを開けば人の頭くらいは簡単に丸呑み出来そうなほどである。
どっしりと構えたその姿は凄まじい存在感を放っているが、その顔を見てみると、くりくりっとした大きな瞳がとても愛らしく、その巨体から感じる圧迫感を多少なりとも緩和しているようだった。
『ディラマ』。
このダチョウによく似た生き物は、その大きな瞳が赤く輝いているので、歴とした魔物のようである。
その魔物であるディラマは、荷台の馭者をしていた小太りの中年男性が横付けした建物の中に消えても、静かにその場に佇んでいた。
ピークを過ぎているとはいえ、それなりに人通りがあるのに、ちょっと疲れた顔をしているものの、随分とおとなしいものだ。
あの子は先ほどの中年男性の使い魔なのかな? と考えながら、初めて見るディラマという魔物に目を奪われていると、僕の視線に気が付いたのか、一瞬ぎょっとした目をこちらに向けたかと思ったら、若干前にもたれていた首をしゃっきーんと真っ直ぐに伸ばし、疲労が浮かんでいた顔は『まだまだ全然余裕で走れます!』とでも言うかのようにキリッとした表情に変わった。
「へ?」
「どうかされました、ハルトさん?」
ディラマの突然変化した表情をぽかんとした顔で見ていたところへ、オーリンちゃんの肉汁でべとべとにした口元を手拭いで拭いていたコーデリアさんが気付き、不思議そうにしていた。
「あ、いえ、あれにちょっと驚いてしまって」
何に驚いたかは言わずに誤魔化すように笑うと、コーデリアさんは僕がさっきまで向けていた視線の先を見て、納得したような表情を浮かべる。
「あれ? ……ああ、ディラマですか。確かにおっきいですよね。私も初めて見たときはびっくりしちゃいましたので、お気持ちはわかりますよ。でも旅には重宝しますので、なんだかんだで私も直ぐに馴れちゃいましたけどね」
「ん? そうか、ハルト君はディラマを見るのは初めてなのか」
「あー、坊やって森で暮らしてたんだっけ。だったらそれも仕方無いのかな? 旧街道は封鎖されてたし、あれの野生種っても草原にしか居ないからね」
「それに、あれは図体がでかいからな。大通りへの乗り入れも時間で制限されているし、街中では荷車は馬に引かせるのが主流というのもあって、私たちのような冒険者が街中で見ることは滅多に無いしな」
なるほどね。確かに朝や夕方など、人通りが増える時間帯にあんなでかい鳥のような魔物が数十体も集まられたら、害は無いとわかっていても、冒険者ならいざ知らず、一般的な街の人からすればちょっと怖いものがあるのだろう。
そしてメリッサさんたちにもっと詳しく聞いたところ、このディラマという魔物は使い魔かと思っていたのだが、実はそうではなく、なんと家畜化に成功した魔物ということらしい。
なんでもこの魔物は使い魔契約をしなくても、馬と同じくらいにはヒトと意思の疎通が出来る珍しい魔物ということで、それゆえにこの世界では馬と並び最もポピュラーで、優秀な騎獣であるという。
その優秀とされる理由の一つとして、ディラマの出せる最高速度とそれを維持出来る時間は馬に劣るものの、休まず走行していられる時間は馬のそれとは比べ物にならないということが挙げられた。
馬の場合は並足であっても早足であっても人を乗せた状態では一、二時間に一回は休憩を必要とするが、このディラマの場合は五、六時間ぶっ通しで走ってもまだまだ余裕があるという。
最も乗っている人間がそれほどタフとは限らないので、自身の体力と相談して、適度に休憩を取るのが望ましいというのだが、体力の自信有る無しに関わらず、休憩している間でも気が抜けず、危険の大きい長距離移動を単独もしくは少人数でしなくてはならない商人や冒険者には、少ない回数の休憩で移動を続けることの出来るディラマはとても重宝されているとのことだった。
そして餌に関しても、体調を維持するために専用の飼葉が必要となる馬に対して、ディラマは雑食――肉は与えてもほとんど食べないが――且つ強靭な胃袋を持っているので、その辺に生えている雑草、木の葉や木の実、果ては木の皮ですら餌とすること出来るので、餌には全く困らないというのも優秀と言われる所以である。
ただ、家畜化に成功しているとはいえ、基本的には魔物であるため、暴力を振るわれたり、扱いが悪かったり、不用意に近付いたりすると、一般人ではとても反応出来ないほどの瞬発力をもって、馬の蹴りとは比較にならないほど強烈な威力の蹴りが飛んでくるという。
その威力は、直径三十センチメートルほどの木の幹くらいなら簡単にへし折ってしまうほど。
そんな洒落にならない蹴りを放つこともあるディラマではあるが、元来の気性はとてもおとなしく、のんびりとしていて、非好戦的というか臆病なので、戦闘には向かないらしい。
またその鳴き声は美しい音色を奏でるので、貴族の間でも鳴き声コンテストのような催しも度々行われているらしく、騎獣としてだけではなく、観賞用としての需要もある魔物だった。
そんな話を聞いていると、僕は何故かますます興味を惹かれてしまい、もっと近くで見てみたいという衝動に駆られて誘われるように、目の前で緊張した様子のディラマに近付いていった。
「お、おい、ハルト君?! 危ないぞ!」
メリッサさんの警告の声を背中で聞きながら、ディラマの目の前まで辿り着いた僕は、その巨体を見上げる。
近くで見ると、思った以上にデカイ。そして羽毛がツヤツヤしていてとても触り心地が良さそうだ。
と、色々な角度からディラマの身体を観察していると、そのディラマがビシっとした姿勢を崩さずに、何故かちらちらと僕の様子を伺っていた。
ふむ、確かに黙ってじろじろ見られるのは気分が良くないか。
であれば、ここは真正面からお願いしてみるとしよう。
「えーと、こんにちは?」
「クックェ(こんにちは、でございますわ)!」
おお、通じた。
魔物と言葉を交わすのはラピスたちスライム以外は初めてだったので、通じるかどうか不安だったが、【異世界言語】がきちんと仕事してくれているようだった。
そう、この【異世界言語】はスキルレベルをMAXまで上げると、なんと魔物の言葉まで翻訳してくれるのだ。
初めて説明文を読んだときは【異世界言語】が魔物語までカバーしているとは驚きだったが、僕のジョブを考えると、この効果は願った叶ったりだった。
僕の従魔になってくれる魔物たちへ求めることは、強さや希少性といったものより、僕との相性だったり、信頼関係を重視したいと思っている。
そういったことを考えると、魔物たちと言葉を交わせるというのは、非常に大きい。
異文化コミュニケーションならぬ異種族コミュニケーションが可能になるのだから。
とは言っても、全ての魔物の言葉が解っても、それはそれで色々と問題があるので、基本的に魔物言語の通訳機能はオフにしてあり、必要に応じて切り替えたり、対象を指定したりすることにしているのだ。
「触ってみてもいいかな?」
「クェックゥ(構いませんわよ)。ケェ、クァク(あ、でもなるべく優しくしてくださいませね)」
思ったより簡単に了承を貰えたので、先ずはそっと背中の部分を撫でてみる。
おお、思った通りツルッツルでスベッスベや。
一通り背中の羽毛の感触を楽しませてもらっても特に嫌がる反応が無かったので、続いて首元を撫でてみると、今度はディラマがほんの少しだけ身を捩った。
「キュァァ(そ、そこは擽ったいのですわ)! クルゥックエ(そこを撫でるなら、こっちにしてくださいませ)」
そう言って(鳴いて?)顔を近づけて来ると、僕の頬にその大きな嘴を擦りつけてきた。
「あはは、ごめんごめん。これでいいかな?」
「クルゥ~♪」
ご要望通りに僕の頬に擦りつけているのとは反対側の嘴の側面を撫でてやると、余程気持いのか言葉にならない鳴き声を挙げるディラマ。
嘴の表面もつるつるなのだが、もふもふな羽毛とは違い硬質な手触りなため、陶器の壺を撫でているかのような触り心地だ。
と、そこへこのディラマの飼い主と思われる小太りの中年男性が、先ほど入っていった建物から出てきて、僕とディラマが戯れているのを目にしたようで、ぎょっと目を剥いていた。
一瞬フリーズしていた小太りの男性だったが、直ぐに再起動して、何故か非常に慌てた様子で駆け寄ってくる。
「お、おい、兄ちゃん! だいじょ「クァァッ(邪魔しないでくださいませ)!!」ひぃ!!」
「おわっと! どぅどぅ。ほら、落ち着けって」
駆け寄って来た小太りの中年男性に対して、何故か威嚇するように声と鼻息を荒げているディラマの嘴をぽんぽんと軽く叩いて落ち着かせる。
「ク~、クルゥ(う~、貴方がそういうのであれば)」
ふぅ、どうにかディラマのご機嫌を取り戻せた。けど残念ながら、時間切れかな?
「大丈夫ですか?」
「お、おお」
僕は嘴を撫でる手を止め、この子の威嚇で尻餅をついてしまっていた男性が立ち上がるのに手を貸して、頭を下げる。
「すみませんでした。ディラマを見たのは初めてだったもので」
「そ、そうか。ああ、いや、勘弁してくれよ兄ちゃん。オレっちはてっきりこいつに兄ちゃんが噛み付かれてるように見えちまって、寿命が縮んじまったよ。流石に蹴りは飛んでこねぇように躾けちゃいるが、こいつらは知らねえ人間が近づくと突っついたり、噛み付いたりするからよぉ」
いやはや、怒られてしまった。
まあそりゃそうだな。元の世界でも、他所ん家の飼い犬を無遠慮に撫でようとして手を噛まれようものなら、噛んだ犬とその飼い主の責任ということになることも多々あるのだ。
僕としては、噛まれるような撫で方をする方が悪いとは思うけどね。
しかし、法整備が未熟なこの世界では、たったそれだけのことでも大事に成りかねないのだろう。
本人(鳥?)から了承をもらっていたもんだから、其の辺のことを見落としていた。
失敗失敗。
「そうだったんですか。本当にすみませんでした。この子、結構人懐っこかったんで、人馴れしてるのかと思ってました」
僕がそう言って、再びディラマの背中を撫でると、その僕の行動とされるがままのディラマの様子に、おじさんはきょとんとした顔をしていた。
「……は? こいつが? 人懐っこい?」
「ええ、とってもおとなしくて、毛並みも綺麗でした。この子のこと、大切にされているんですね」
「あ、ああ、まあな。ちっと気位が高くて、神経質なところはあるが、よく働いてくれるからな」
ディラマのことを褒めると、おじさんは気を良くしたようで、ちょっと胸を張ってドヤ顔をしている。
「いいですね。僕も自分のディラマが欲しくなってしましました」
「ほぅ、兄ちゃん、商人目指してんのか?」
「いえ、僕も冒険者になりましたので、旅のお供にいいかなって」
「そうかそうか。こいつはいいぞ。なんと言っても……」
あ、これ長くなる奴だ。時間があれば是非ともディラマ談義に花を咲かせたいところだけど、メリッサさんたちを待たせてるしな。ちょっと残念だけど、早々に退散させてもらおう。
「あはは、貴重なお話、ありがとございます。お仕事の邪魔してもあれなんで、ここらで失礼しますね」
「ん? おお、そうか。すまねぇな、ちっと熱くなっちまったか」
「いえいえ。ありがとうございました」
「クェ~(もう行ってしまわれるのですか)?」
おじさんにお礼を言ってその場を去ろうとすると、ディラマがなんとも後ろ髪引かれる鳴き声を挙げた。
そんな切ない声出すなよ。またどっかで会えるって。
「じゃあね」
「クックルゥ~(またお会い出来ることを楽しみにしておりますわ)」
最後にディラマの背中をひと撫でしてから、その場を後にする。
「すみません、お待たせしました」
そしてメリッサさんたちの元に合流すると、何故か四人ともジト目で僕のことを見ていた。
えっと、な、なんでしょうか? そんなに見つめられると照れちゃいますよ?
「で? 坊や、何したの?」
えーとボケかましてる場合じゃないな。というか、僕がなんかやらかしたの前提ですか?
「アタイが知る限りじゃ、他人が飼ってるディラマって、あんなに気安く触れなかったハズなんだけど?」
なんかそんな説明聞いたよーな聞いてないよーな?
「うむ。私もその認識だし、先ほどもそのように説明した覚えがあるな」
あ、メリッサさんに逃げ道塞がれた。
「ま、まあ、あの子とハルトさんの相性が良かった……だけかも?」
コーデリアさん? 何故に疑問形ですか?
「……(じー)」
オーリンちゃん、無言で見つめるのは止めてください。
えーと、えーと、どうしよ? 本人(鳥?)から撫でる了承をもらったって言って信じてもらえるだろうか?
「えっとですね、それわ……」
「はぁ。まあ、いいわ。坊やの非常識な行動については今更ね。その頭の上の子のこともあるし、もしかしたら魔物に好かれる体質なのかもね」
トリフィラさんが僕の頭の上に鎮座するラピスをつんつんと突っつきながらそう言い、ラピスはラピスで突っつかれる度にふるふると揺れてなんだが楽しそうな雰囲気を発していた。
まあジョブのこともあるし、魔物に好かれるのは確かだと思うがのだが、なんだか微妙に納得がいかない理解のされ方だ。
まあ今回は説明を聞いたにも関わらず、僕が暴走した結果なので、仕方がないのかな。
「では、行くか」
若干ヘコんでいる僕のことを華麗にスルーしたメリッサさんに促されるまま、後を付いていき三十分も歩くと、ハンマーと金敷を背景に剣と槍そして斧が地面に突き立てられたシルエットの看板が掲げられた建物の前に辿り着いた。
ここがワイルドローズ御用達の職人さんの工房だと思われる。
看板の絵からすると、武器の類の小売もしてるのかな?
そんなことを考えていると、メリッサさんが徐にその建物の扉を押し開け、ガランガランと重苦しい金属音が奏でられる。
メリッサさんたちに続いて敷居を跨ぎ、店内を見渡すとそこには短剣、剣、槍、斧、鎚、盾、鎧といった金属製の様々な武器防具が所狭しと並べられていた。
「あらまー、メリッサちゃんじゃないの! 久しぶりねぇ。トリフィラちゃんとコーデリアちゃんとオーリンちゃんも一緒なのかい? おやまあパーティーメンバー全員で来るなんて珍しいじゃないかい」
店内を見渡していると、ちょっとおばちゃんっぽいことを言っている若々しい声が聞こえてくる。
その声の方に視線を向けると、そこにはかなりの煤が付いた前掛けを着けた、栗色の髪を一本のおさげにしている、百四十センチメートルくらいの可愛らしい女の子が居た。
「はい、ご無沙汰してます、クォルさん」
「こんちわー」
「お久しぶりです」
「……こんにちわ、クォ姉」
「はいはい、いらっしゃい」
メリッサさんたちがそれぞれ挨拶をすると、その女の子は四人の顔を順に眺めていたが、その最後に僕の所で視線が止まる。
「おんや? 見ない顔が居るねぇ」
そう言った女の子の視線は、見た目にはそぐわないほど鋭くまた不可視の圧力を伴っており、まるで僕のことを値踏みするかのようだった。
(ハルトさん、こちらの方はここ工房の親方の奥さんです)
「え? 娘さんじゃなくてですか?」
その鋭い視線に戸惑っていると、コーデリアさんがこっそりと耳打ちしてくれたのだが、その内容に驚いてしまい、思わず疑問に思ったことを声に出してしまっていた。
思わず口に手を当てて、そろそろと小学生の高学年にしか見えない、親方の奥さんと言われた女の子を見やると、満面の笑顔を浮かべていたので、思わずほっと胸を撫で下ろす。
「おやおや、随分嬉しいことを言ってくれる坊やじゃないかい」
「えっと、すみませんでした。僕は冒険者のハルトと言います。宜しくお願いします」
ビシっと折り目正しくお辞儀をすると、先程まで感じていた不可視の圧力が、ふっと消えた。
「はいよ。アンタ、礼儀を知ってる子だね。そういう子は好きだよ。あたしはクォル。旦那の打ったモンに彫金を施してる。宜しくね」
ふーむ、あの眼光といい、圧力といい、この人は見た目にそぐわず、結構な猛者だな。
そんな思いから、ちょっとステータスを鑑定してみたい衝動に駆られたが、ドガランさんのように感づかれたらなんとなく面倒事に発展しそうだったので、ここはひとまず我慢するか。
ドガランさんも他人のステータスを勝手に鑑定するのはマナー違反だって言ってたしな。
(クォルさんも、ここの親方も地人の方なんですよ。あ、因みにもうご存知かもしれませんけど、私は森人です)
込み上げてきた鑑定欲求を押さえ込んでいると、再びコーデリアさんが髪をかきあげてその斜め後ろに尖った耳を露にしながら耳打ちして来る。
うん、コーデリアさんが森人だってことは知ってますよ。
ステータスを鑑定させてもらいましたから。
しかし、森人や獣人がいるなら、地人も居るとは思ってたけど、ここで会えるとはね。
他にはどんな種族がいるのだろうか? 今まで出会ったのはオーリンちゃんの樹人を含め、これで四種族。
ふむ、いろんな種族の文化や風習を見て回るのも、観光っぽくて楽しいかもしれないな。
これは今後の旅の目標のひとつに加えてもいいかも。
あと気になるのは、地人の女性は背が小さいこと以外は人間族と見た目は変わらないが、男性はどうなんだろうか。
やっぱり髭もじゃ?
(あと、クォルさんはこう見えても、にひゃく……)
そんなことを考えていると、再びコーデリアさんが耳打ちしてきたが、何かを言いかけたところで、いつの間にかコーデリアさんの前に満面の笑みを浮かべたクォルさんが立っていた。
そしてそれに気付いたコーデリアさんがまるで氷の彫像のように、そのままの姿勢で固まる。
「こぉでりあちゃぁん? なぁにを言ってるのかなぁ?」
その言葉とともに、目にも止まらぬ速さでコーデリアさんにアイアンクローをキメるクォルさん。
それはギリギリという音が聞こえてきそうなほど、完璧にキマっているようだった。
おぅ、意外と手はおっきいんだな。
「ひぃぁ! ご、ごめんなさいぃ!! もう言いませんんんん!?」
「……まったく、油断も隙もあったもんじゃない」
即座に泣きを入れたコーデリアさんだったが、クォルさんは余程怒っていたのか、五秒くらいアイアンクローを続けてから、コーデリアさんを開放した。
うん、まあ女性に年齢の話は禁句だよね。それが例え同性であってもさ。
けどまあこの気安さ? を見ていると、地人と森人の仲が悪いというテンプレは無さそうだね。
「あ、あたまが割れそうです~」
涙目になりつつ、両手で頭を抱えてしゃがみこむコーデリアさんにオーリンちゃんが肩をぽんぽんと撫で、肩を竦めていた。
しかしコーデリアさんがどんどんポンコツ化していくな。いや、これが地なのか?
「ふん、自業自得さね。それで、あんたら今日はどうしたんだい?」
「はい、先日の依頼で私とトリフィラの武器が損傷してしまったので、武器を新調したいんです」
まるで先ほどの一幕が無かったかのように、すんなりと会話を繋いだクォルさんとメリッサさん。
メリッサさんは若干苦笑気味だったが、あんなのは日常茶飯事の光景なのかな? そうするとコーデリアさんって……いや、これ以上深く考えるのはやめよう。主にコーデリアさんの名誉のために、うん。
「あれま、そうかい。んじゃちょっと旦那呼んでくるかね」
クォルさんはそう言うと、早足で店の奥に消えていった。
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ただ、作者ガラスのハートでございますれば、柔らかい表現でお願いいたします。




