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第十七話 野薔薇(ワイルドローズ)

今回のお話にはグロ表現がございます。

……本当ですよ?

ですので、そういった表現が苦手な方は読み飛ばしていただくことをお勧めします。

準備おっけーばっちこい、という方はそのままスクロールどうぞw。


それでは第十七話、始まります。

「コーデリア!」


 まるで悲鳴のような声を挙げて、三人の女性たちは地面に横たわっている神官服の女性の傍らへと駆け寄った。


 魔法少女がどうしていいかわからず、狼狽している最中、ケモ耳の女性は神官服の女性の枕元に膝をついて、慌ただしく容態を確認している。


 うーん、良くも悪くも、こっちの話を信じる云々等という事態では無くなってしまったな。


 そんなことを他人事のように考えながら、頭の上に挙げた両手を手持ち無沙汰にしていると、カイトシールドを手にした女性が眉に皺を寄せた厳しい表情のまま僕の方を振り向いた。


「すまない、少年。その……もし薬草か傷薬を持っていたら譲って貰えないだろうか? 勿論その対価は後で必ずお支払する。今は、その、依頼(クエスト)の最中のため、手持ちは余り無いのだが……街に戻った際には必ずお支払すると約束する! 頼む、この通りだ!」


 女性にしては大柄になる身体を小さくして、必死に頭を下げてくる。


 ふむ、彼女たちには申し訳ないが、僕としては願ったり叶ったりの状況に推移しつつあるな。


 ここで神官服の女性の治療に一役買えば、彼女たちに信用して貰えるかもしれない。


 そうすれば選択肢そのさんが実現するかもしれない。


 であれば、一回の錬成で小瓶十本分は作れるヒールポーションの一つや二つや三つや四つぐらい、何て事はない対価と言える。


「えっと、そうですね。僕が自分で作った傷薬ならありますけど……」


「なに! 本当か!? 頼む、是非譲って欲しい!」


 僕の言葉に大分食い気味に被せてくる。


 それだけ切羽詰まっているということだろう。


 遠目には本人から出血したものなのか、返り血なのかは判断出来なかったが、左脇腹付近から膝上あたりまでの広範囲が血に染まっているのは見えたので、もし服を染めたのが本人の出血となると、思っていたよりも、神官服の女性の容態は相当悪いのかもしれない。


 というか、この問答をしている間もどんどん気配が弱まっている事から、余り時間は無いのかも。


 ただ、このヒールポーションには一つ問題がある。


「そ、それは構いませんが、これは自作ですから、特に何処かから認可をもらっている薬ではありませんので、どの程度効果があ……」


「それでも構わない! 頼む!」


 またも食い気味に被せられた。


 最後まで言わせて?


 僕が泉で試験的に作ったポーション類は、味を魔改造する際に試飲しただけで、ほぼ手付かずの状況で【アイテムインベントリ】にしまってある。


 効果については鑑定結果が保証してくれているが、薬としては元の世界のように厚生労働省から認可を貰っている、という訳でも無いので、僕としては自分が使う分には自己責任で腹を括るのだが、他人に使うのは少々不安が残る。


 もしこの世界でも、薬を作るのに何らかの資格や免許、公的機関の認可が必要であるならば、僕が作ったポーション類は違法薬物にカテゴライズされてしまうだろう。


 というか、ある程度発達した文明があるならば、そういった制度が無いはず無いのだ。


 だから僕も人里に着いたらその辺のことも調べようと思っていたのだが、まさかこんなに早くポーションの出番があるとは思ってもいなかった。


 その辺のことをやんわりと遠回しに説明しようとしたのだが、喋っている途中で両肩を掴まれ、ガクガクと前後に揺すられてしまった。


「わ、わか、わかりました! わかりましたから、はな、離してっ!」


「はっ! す、すまない!」


 僕が懇願すると、我に返った女性……ああ、そういえばまだ彼女たちの名前すら聞いていなかったっけ。


 っと、それよりも寝かされている神官服の女性――『コーデリア』と呼ばれていた――の治療を急いだ方がいいな。


 このやり取りをしている間にもどんどん気配が弱まっている。


 余りのんびりしている余裕は無さそうだ。


「いてて。ではそちらの方の容態を看せていただいても?」


 力一杯揺すられたせいで、首が軽くムチウチになってしまった首をさすりながら、ダメ元で僕自身が治療する事について提案をしてみる。


 ポーションだけを渡してもいいのだが、出来れば、どの程度の傷ならこのポーションでも治療出来るのかも、この目で確認しておきたい。


「む? それは……いやしかし……」


 案の定、難しい顔をして、言い淀む目の前の女性だったが……


「いいわ」


「と、トリフィラ?」


 トリフィラと呼ばれたケモ耳の女性が、少し低い声で了承の意を示してきた。


 一方、目の前の大柄な女性はその発言に驚き、目を丸くしている。


「今は時間が惜しいの。……もし妙なことをするようであれば……斬るだけよ」


 そう言い、手元の短剣を手が白くなるほど強く握り込み、鋭い視線を僕に送ってくる。


 脳内マーカーの色は赤みかかった黄色からただの黄色に戻ってはいるが、その色は当初より遥かに濃い黄色になっている。


 これは不審者に対する警戒ではなく、治療行為以外の行動をしたら容赦無くバッサリ斬り捨てるというのを暗に示しているようだ。


 とはいえ、ここで怯んでもいられない。


「わかりました。出来る限りの治療と、それ以外のことは一切しないと誓いましょう」


 なんとかそれだけは言い切り、ケモ耳女性の視線に促されるまま、寝かされている神官服の女性の左側面に肩膝を着いて屈み込む。


 「こちらの方のお名前は?」


 「……コーデリアよ」


 「ありがとうございます。ではこれよりコーデリアさんの治療を開始します」


 僕はそう宣言してから、先ずコーデリアさんの容態がどの程度悪いのかと思い、様子を伺ってみたが……これは酷い。


 腰辺りまで伸びていると思われる金色の髪はくすんでおり、血と泥に塗れている。


 目鼻立ちの整った美しい顔も今は苦悶の表情を浮かべ、見事な双丘がほんの僅かに上下するだけで呼吸も短く、今にも止まりそうなほど弱々しい。


 それに加えて、全体的に血が足りていないらしく、斜め上に向かって少し尖った耳まで含めて顔色が悪く、真っ白と言っていいほどであった。


 今度は腹部の方に視線を向けると、傷口自体は大きな布が当てられていて直接は見えていないが、神官服は左脇腹から下腹部にかけて三本の、大きな爪で引き裂かれたようになっていた。


 まだ腹部の傷の具合を診ていないが、服の傷口通りに腹を抉られているなら、これ致命傷なんじゃないのか?


 生きているのが不思議なくらいの重体だった。


 さて、困ったぞ。


 その場の勢いで大見得切ってしまったが、正直に言うと、僕には医療の心得はほとんど無い。


 精々綺麗な水で傷口を洗って、消毒して、傷薬を塗り付けて、清潔なガーゼを被せるといった、一般家庭で怪我した子供に行われる擦り傷切り傷の処置程度だ。


 後は道場で習った刀傷に対する処置くらい。


 まあ現代日本で刀傷なんて先ずもってあり得ないので、それも座学だけで、実践経験なんかあるわけがない。


 それでも十五才になったら、真剣を使った稽古が取り入れられるので、実際の稽古に先駆けて、学ばされていた。


 まあ僕は十五才になる前に、道場には通えなくなってしまったので、真剣での稽古は一度として受けてませんがね。


 さて、話を戻して、目の前の女性に集中しよう。


 視線をコーデリアさんに戻すと、傷口の部分から広範囲に渡って血塗れになっているため、分かりにくいが、神官服は泥だらけだ。


 これは宜しくない。


 コーデリアさん以外の三人が腰に付けている水袋と思われる皮袋が萎んでいるので、傷口を洗うことすら出来ているか怪しい。


 幸いと言っていいのか、傷口からの出血は止まっているようだが……。


「すみませんが、傷口を見せてください」


 初めに意識の有無について確認をしようか迷ったが、意識があったらどうにかなるのか? との思いが過ぎり、その問いの答えは『どうにもならない』だったので、その手順は省略することにした。


 また、流石に意識の無い女性の服を剥ぐのは気が引けるので、傷口辺りを注視したままケモ耳女性にお願いする。


 ケモ耳女性が無言で僕をひと睨みしたあと、そっと神官服の左脇にある留め具を外して、あっという間に、肌着姿にされる。


 肌着も腹部の辺りはどす黒く血に染まっているため、色気もへったくれもない。


 肌着も捲り上げてもらい、ガーゼ代わりなのか、腹部一帯に当てられた布を取り払うと案の定、血と泥に塗れた、抉られたような傷口が現れた。


 傷口周辺の血は既に乾いているようで瘡蓋(かさぶた)のようになっているが、傷口そのものはまだ生乾きで、未だにじんわりと赤黒い血が滲み出ている。


 一部には黄色い液体が溜まっており、既に膿んでいる箇所があった。


 傷口以外の肌は、元々が色白のせいか、血の気が引いていることもあり、生気を感じさせない白さになっている。


 肌の白さと傷口のどす黒さとのコントラストがまるで白黒写真を見ているようで、思わず眉間に皺を寄せてしまった。


 そして、傷口の方に視線を戻し、抉られた部分をよく見てみると、一見一面赤黒くなっているかのように見えるが、所々ピンク色をした臓器と思われる部分が見受けられた。


 この様子では、傷は内臓まで達しているだろう。


 やばい、本格的に困った。


 こんな重傷、元いた世界でも完全に医者の領分だろうって傷だ。


 とはいえ、今更治療出来ません、とは言えない雰囲気である。


 仕方ない、先ずは出来るところからやっていくしかないか。


「それでは治療を始めます」


 何はともかく、先ずは傷口の洗浄と消毒からだ。


 僕は肩膝を付いた姿勢のまま、右の人差し指を立て、少し多めのMPを注ぎ込み【生活魔術】の第三階梯《スプリングウォーター》を発動させると、瞬く間に人差し指の少し上に直径四十センチメートルほどの水球が出来上がった。


 その水球の形を崩さないように維持しながら、神官服の女性の腹部、その傷口を浸し、包み込むように移動させてから、内部にゆっくりとした水流を発生させるように操作する。


 すると、水球内部の流れにより、傷口部分にこびりついた泥と凝固してへばり付いた血が少しずつ洗い流されていき、代わりに透明だった水球があっという間に赤黒く染まっていく。


 三十秒ほど洗浄しては水球を引き上げ、赤黒く染まったそれに今度は血の臭いを消すため、【生活魔術】第一階梯《クリーン》を使い、溶け込んだ血液のみを浄化してから街道脇に投げ捨てる。


 そんなことを五回ほど繰り返すと、未だ傷口そのものからじんわりと血が滲み出てきてはいるものの、腹部は泥も瘡蓋も落とされ、見違えるように綺麗になった。


 しかし、ただ傷口を洗っただけでは、雑菌による破傷風が怖いので、今度は傷口そのものに向けて《クリーン》をかける。


 恐らく、これで消毒も出来たはずだ。


 水球の操作にかなり集中力を必要としたが、なんとか上手くいったようだ。


 水系統の魔術を獲得していれば、水球の操作はもっと簡単に出来ていたと思われるが、生憎水系統の魔術は切り捨ててしまったので、ちょっとスキル選定を失敗したかもしれない。


 とはいえ、スキル枠はもうほぼ埋めてしまったので、今更いってもしょうがないので、頭を切り替える。


 ここからは時間との勝負だ。


 先ずは、【アイテムインベントリ】から木のお椀に入ったヒールポーションを取り出す。


 これは一番最初に試作した苦えっぐい通常のヒールポーションだ。


 傷口にぶっかけるのであれば、味は関係無いよね?


 右手にヒールポーション入りのお椀を持ち、左手を《クリーン》で念入りに消毒してから、周りで治療を固唾を飲んで見守っている三人に声をかける。


「すみませんが、彼女の手足を押さえつけてもらえますか?」


 いきなり声を掛けられたことで、きょとんとしている三人。


 ここで理由を説明してもいいのだが、生憎今は時間が惜しい。


 彼女を助けるためには、今は黙って従って欲しい。


 それでも現状、助かるかどうかは良くて五分五分なのだから。


「急いで!!」


「「「は、はい!」」」


 僕の、有無を言わせぬ意志を感じ取ったのか、多少困惑しながらも、三人は慌ただしくコーデリアさんの手足を押さえ付けに走る。


 折角消毒までしたのだから、余り土埃をたてないで欲しいんだけど。


 まあ、僕も思ったよりドスの効いた声が出てしまったので、ちょっと反省。


 三人が手足を押さえつけたのを確認してから、念のためもう一度《クリーン》を施してから、僕は一旦目を閉じ、ふぅっと息を吐き、覚悟を決める。


 僕はすっと目を見開くと、左手の指を使い、三筋走っている裂傷、その一番上の傷口をこじ開ける。


「くぅぅっ!」


 コーデリアさんが苦悶の表情を更に深くして、くぐもった悲鳴を挙げるが、今は意識の外に追い出す。


「お、おい! なにを「黙って!!」っ……」


 短いが、鋭利な刃物のように鋭い叱責に、左右から息を呑む気配が伝わってくる。


 思わず叫ぶ形になってしまったが、ここで集中力を切らされるわけにはいかない。


 手元が狂って狙いとは違う場所にこのヒールポーションをぶっかける訳にはいかないのだ。


 何故なら、ヒールポーションを手にした時に、何となく直感で理解出来てしまったから。


 このヒールポーションを傷口にぶっかければ、多少の傷痕は残ってしまうが、傷口自体は問題無く塞がるだろう、ということが。


 だが、内臓が損傷した状態で外傷だけを治しても、この人の命を拾うことは出来ない、ということも。


 何故そんなことが理解出来たのは不明だが、今はそれを考察している暇はない。


 今は目の前の、コーデリアさんを救うことに全神経を集中させなければならないのだ。


 冷静に、そして慎重に木椀を傾け、押し広げた傷口の内部にヒールポーションを少量ずつ、だが確実に注ぎ込む。


「ぅああぁぁあああぁぁああ!!」


 薬液が腹部の内部に注ぎ込まれると、薬液に触れた内臓の傷に()みたのか、耳を(つんざ)くような大音量の絶叫が辺りに響き渡る。


 今の状況は、いってみれば麻酔もしていない状態で開腹手術をしているようなものなので、意識がないとはいえ、痛みを訴える叫び声をあげることなど想定内だ。


 だが、それと同時に激しく暴れまわるかと思われたのだが、既にそんなことをする力も無いのか、首を少し左右に振るだけで、叫び声とは対照的に手足はピクリとも動いていないようだった。


 それならそれで、好都合だ。


 暴れられたり、身を(よじ)られたりで、手元が狂ってヒールポーションが狙った場所から逸れることもない。


 そんなこと考えたが、刹那の間にそれを思考の片隅に追いやり、素早く手を動かし、他の裂傷部にヒールポーションが掛からないように、一本目の裂傷全体に沿うようにしてヒールポーションを掛けていく。


 そして、二本目、三本目の裂傷へと、都合三度同じように処置を施す。


「……ふぅ」


 三本目の処置が終わると、僕は大きく息を吐き、額から顎下に流れた汗を手の甲で拭う。


 一先ずこの場で僕に出来る処置はこれで終わりだ。


 そう思い、改めて一番最初に処置した傷口に視線を向けると、痕は残ってはいるものの、あれだけパックリ開いていた傷口は既に跡形もなく塞がっていた。


 そして二本目、三本目の裂傷も既に塞がりかけていて、その塞がっていく様子はまるで早送りか巻き戻しの映像を見ているようで、少々気味が悪かったが、実際にポーションを外から使用した時の効果が確認出来たので良しとしよう。


 コーデリアさんの顔色は依然青白く、珠のような汗が浮かんでいるが、荒く短かった呼吸は落ち着きを取り戻していたので、未だ予断は許さないが、一先ず山場は越えたと思われる。


「皆さん、もう手を離していただいてもいいですよ」


 未だコーデリアさんの手足を押さえつけながらも、先程の絶叫に身を竦ませていた三人にそう声を掛けると、恐る恐るその手を離した。


「一先ずはこれで大丈夫かと。思ったよりも深い傷でしたのでまだ安心は出来ませんが、山場は越えたと言っていいでしょう」


「あぁ、ありがとう。何とお礼を言っていいか」


「ただ、山場を越えたと言っても、血を失いすぎています。ここから先は彼女の気力次第ですので」


「ああ、わかっている。コーデリアも一端の冒険者なんだ。こんなところで諦めるような女じゃないさ」


 何も心配していないと言うように、ニカっと笑顔を浮かべる大柄な女性。


「そうですか。なら、早急に何処か安静に出来る場所に移られた方がいいですね。……流石にこんな道のど真ん中に、というのも宜しくないと思いますので」


「ん? ああ、そうか。そうだな、この街道はもう封鎖されているから、問題無いといえば無いのだが、ここからもう少し北に進んだところに確か夜営地があったはずだから、そこに向かおうか」


 僕はちらりとコーデリアさんの様子を伺うと、やはり腹部に三本の裂傷の痕が残ってしまっていた。


 ……こんな綺麗な女性の身体に傷痕が残るのは、やっぱり宜しくないよなあ。


「わかりました。ではちょっと失礼しまして……」


 もう少し歩いたところに休める場所があるというので、今のうちにさっき思いついたアフターケアをしてしまおう。


 僕は徐にさっきまで傷を覆っていた大きな布と地面に転がっていた包帯を手に取り、それらに《クリーン》を掛けると、付着していた血や泥が落とされ、殺菌消毒が施される。


 次いで、大きな布の方は木椀に残ったヒールポーションに浸して、全体へ薬液を行き渡らすと、それを傷痕を覆うように貼り付けた。


「すみません、コーデリアさんの上体を起こしてもらえますか?」


「ん? ああ、任せて」


 そして、これで新陳代謝が促進されて傷痕が目立たなくなればいいなあと思いつつ、ケモ耳女性に手伝ってもらいながら、その布を固定するように包帯を巻きつけていき、それが終わると、再びコーデリアさんを寝かせ、最後にコーデリアさんを対象にして、《クリーン》を掛けると、コーデリアさんの身体が淡く光るのと同時に、裂けた服は直らないが、服や身体、髪などにこびり付いた血や泥が落とされる。


 その仕上がりに一つ頷き、膝立ちの状態から立ち上がろうとしたのだが……カクっと足腰から力が抜けてしまい、こてんと後ろに尻餅をついてしまった。


「あ、あれ?」


 治療自体は十分と掛かってはいなかったはずだが、どうやら思った以上に気力体力を消耗してしまっていたようだ。


「あはは、大丈夫か? そういえば、まだ名乗ってなかったな。改めて、私はルセドニの街を拠点にしている冒険者パーティー『野薔薇(ワイルドローズ)』のリーダー、メリッサだ」


 メリッサと名乗った大柄な女性が手を差し伸べてくれたので、ありがたくその手を取り、立ち上がらせてもらった。


「さっきはキツイこと言ってごめんなさい。それとコーデリアを助けてくれてありがとう。獅子獣人で斥候担当のトリフィラよ」


 ケモ耳女性ことトリフィラさんから、先ほどとは打って変わった柔らかい表情でお礼と自己紹介をもらう。


「リア(ねぇ)を助けてくれて、ありがとうございます。……オーリン。魔道師で火と風が得意」


 魔法少女ルックのオーリンちゃんは三角帽子が落ちないよう器用にお辞儀をしてから、慎ましい胸を張りながら、魔術士系第三階位の【魔道師】であるという。


「そういえば少年、ハルト君だったか。君は街を目指してと言っていたな?」


「あ、はい」


「そうか。我々も街に戻る途中だったし、コーデリアの礼もしたい。それに薬の代金も払わねばな。ということでどうだろう、我々に街までの案内をさせてもらえないだろうか? と言っても、ここからは一本道だがな」


「本当ですか! 正直に言うと、僕とラピスだけではちょっと不安があったので、そうしていただけると、助かります」


「うむ。ならば、任されよう。ただ、まだ陽も高いが今日のところは夜営地まででいいか? 明日早いうちに野営地を出れば、コーデリアを背負っていても日暮れ前にはたどり着けると思う」


「ああ、そうですね。コーデリアさんのこともありますし、それで構いません。どうぞ宜しくお願いします」


「ああ、こちらこそ宜しく頼む。これでも私たちは五ツ星の冒険者なんだ。大船に乗ったつもりでいてくれて構わないよ」


 よっしゃぁ! 人里までの案内人げっとぉ!!


 最後の冒険者という単語の部分でちょっとビクっとしてしまったが、メリッサさんの豪快な笑顔に加え、【気配察知】が捉えている三人のマーカーは友好を示す緑色になっていたので、この人たちから危害を加えられることは無いはず。


 最初はコーデリアさんの傷のこともあり、緊迫した雰囲気であったが、治療が間に合ったことでその雰囲気も和らぎ、更に治療に対して真摯に向き合ったことで、彼女たちワイルドローズの信用も勝ち取れたようだ。


 僕のちょっとしたミスでトリフィラさんに【隠形】を見破られた時にはどうしようかと思ったが、結果だけみれば、最善に近いだろう。


 これでコーデリアさんが意識を取り戻してからいくつか僕の持っている薬を処方すれば、完璧じゃないかな。


 え? 何で見ず知らずの相手の治療にそんなに熱くなってるかって?


 大見得切ったくせに助けられなかったら、この三人に何されるかわからないってのもあるけど、どうせ治療するなら助かって欲しいじゃん?


 なんてったってこの人、見た目通りに森人(エルフ)なんだぜ?


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


名前:コーデリア=イースフォン

種族:森人(エルフ)

性別:♀

年齢:25

職業:精霊神官

身分:冒険者、イースフォン氏族族長の娘


状態:昏睡、貧血、衰弱、疲労(極大)


BLv:52

JLv:8


HP:21/1028

MP:53/718


筋力:84

体力:172

知力:268

敏捷:91

器用:179



保有スキル


【コモンスキル】(3/10)

・礼儀作法:Lv4

・光魔術:Lv3

・杖術::Lv2


【ジョブスキル】(2/10)

・光霊魔術:Lv1

・回復魔術:Lv4

・治癒魔術:Lv2


【ユニークスキル】(2/10)

・精霊交信:Lv5

・精霊魔法:Lv3


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―

ここまでお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字・矛盾点・説明不足・わかりにくい表現等のご指摘いただければ幸いでございます。

ただ、作者ガラスのハートでございますれば、柔らかい表現でお願いいたします。

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