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第十二話 改造ポーション

 一夜明け、翌日。


 ベッドの上で身体を解すように伸ばし、まとわりつくような眠気を振り払う。


 流石に昨日はちょっと色々あり過ぎたな。


 スキルの大量獲得に魔力枯渇の危険性、そして日本語で書かれた日記と、一部自業自得な部分もあり、日記の存在に少し心を乱されたところもあったが、改めてこれからについての指標がはっきりとした日でもあった。


 帰還方法についての情報は少しでも多く集めたいと思うし、宝の地図のようなものも手に入れた。


 余りのんびりしているのもどうかと思うが、焦らずゆっくり確実にいこうと思う。


 とはいえ、今の僕に出来ることなどそう多くはないので、出来るところからやっていくしかないんだ。


 そう思考を締めくくり、ベッドから降りると、もう一度伸びをして身体全体を解す。


「ん~……ふぅ。さってと、今日も一日頑張りますか」


 気持ちを切り替え、寝室からリビングに出ると、この数日で見慣れた人型姿のグリンさんがまるで子供をあやすようにラピスと戯れていた。


「おはようございます、グリンさん」


『はい、おはようございます』


 振り返り、柔らかく微笑むグリンさんは相変わらず母性オーラ全開だ。


『今日も泉の近くで取れた物で申し訳ありませんが、お持ちしました』


 テーブルの方を見ると毎度お馴染みの如く、大きな葉っぱとその上に色とりどりの木の実や果実がこんもりと盛られていた。


「いつもありがとうございます。ではちょっと顔を洗ってきますね」


 何とも言えないその懐かしいような安心感にほっとしつつ、グリンさんに一言断ってからログハウスの裏手にある井戸に行き、釣瓶と木桶を使って水を汲む。


 汲んだ水を掬い顔を洗うと、そのひんやりとした感覚にまだ若干残っていた眠気が一気に吹き飛ぶ。


 そのまま、二度三度と顔を洗って、いつものようにボロボロのワイシャツの裾で(ぬぐ)おうと思ったら、厚手の手拭いが木桶の横に落ちているのが目に入った。


 あれ? 手拭いなんか持ってきたっけ? と不思議に思い、それを摘まみ上げると、その下からぴょこんとラピスが現れる。


 どうやらラピスが木箱の中から手拭いをわざわざ持ってきてくれたようだ。


「ありがとう、ラピス」


 ラピスのその姿に癒されながら、手拭いで顔の水気を拭き取る。


 ふぅ、さっぱりした。


 やっぱり布一枚あるだけでもありがたみを感じるなあ。


「っし、じゃあ戻ろっか」


 そう声をかけると、返事をするようにぷるぷる揺れるラピスを頭の上に乗せ、リビングへと戻ると、相変わらずゆったりとした雰囲気のグリンさんが待っていてくれた。


 僕はグリンさんと出会い、このログハウスに案内された時から気になっていたことがある。


「グリンさん」


『はい、なんでしょう?』


「ちょっとお訊きしたいんですけど、なんで僕にこんなに良くしてくれるんですか?」


 魔物はある意味地球の野生生物と同じだと思う。


 いや、こうして意思疎通が出来、言葉まで交わせるグリンさんに対してこの物言いが失礼であることは百も承知だ。


 それでも僕の持っているファンタジー知識と、ここのスライムたちの行動を見ていると、そうとしか思えないのだ。


 そして野生生物であればテリトリーに侵入した者は排除するべき対象で、この世界ではどういう立ち位置かは不明だが、創作物なんかの魔物といえば人間と敵対する存在であった。


 なのに、グリンさんは自身のテリトリーともいえるここに迷い込んでしまった、人間である僕に襲いかかる訳でもなく、全く警戒していないどころか、色々と食べ物まで持ってきてくれて、むしろ歓迎してくれているようにさえ見える。


 僕としては気を張らなくて助かるが、何故? という疑問の答えは出ない。


『そう……ですね。一言で申しますと、よく似ているんです』


「似ている?」


『はい。主に、あの人によく似ているんです。勿論お顔の造りや言葉遣いなどは違うんですが、雰囲気といいますか、空気といいますか、そういうのがそっくりなんです』


 一旦区切り、困ったような嬉しいような顔をして、けれど安心させるような雰囲気で続ける。


『ですから、信用出来ると言いますか、お世話をしたくなると言いますか……』


 ああ、なるほど。代償行動ってやつか。


 ある目的が達成不可能になったとき、代わりの満足を得るために元の目的に類似した別の目的に向かって行われる行動のことだ。


 恐らく、グリンさんはシュウトさんの身の回りの世話を任されていたのだろう。


 とはいえ、軍関係の機密書類を何冊もギってきた人と似ていると言われても僕としては、ちょっと複雑な気持ちである。


『ふふ、それでは私はこの辺で。何かありましたらお呼びください』


「あ、はい、ありがとうございます」


 朗らかな雰囲気を残して立ち去るグリンさん。


 まあ、一応疑問の答えは出た……のかな?


 しかしこんな人? になら僕もずっとお世話をしてもらいたいものだね。


 でも、僕はもう地球に、元の世界に戻る方法を探すと決めたんだ。


 なのでもう暫くしたら此処からお暇しよう……もう暫くしたらね。


 さて、腹も膨れたところで、昨日休んでしまった農作業、もとい間引き作業を再開しますか。


 っと、その前にこの干し治癒草の束をどうにかせねば。


 取り敢えず【アイテムインベントリ】に突っ込んでおくか。


 【アイテムインベントリ】に収納するためには、対象に直に触れている必要があるので、一つ一つ草束に触れて収納していく。


 そして、『アイテムインベントリ:収納リスト』と念じることで、収納したものが一覧となった半透明のウィンドウが目の前にポップアップするので、確認のためにリストを表示してみた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


アイテムインベントリ:収納リスト


・乾燥した薬草の束×30


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ポップアップした半透明のウィンドウには、先程収納した薬草の束を示す、数本の草が束ねられた形をしたアイコンとその右下に数量を示す数字が表示されていた。


 よしよし、ちゃんと収納されてるな。


 まだ【アイテムインベントリ】内にはこれしか収納していなかったので、そのアイコンを見ていたら、不意にメッセージウィンドウがポップアップしてきた。



#######################


『乾燥した薬草の束』を展開します。

実行しますか?


【はい】【いいえ】


#######################



 ふむ、よくわからないが取り敢えず【はい】のボタンをクリックしてみると、乾燥した薬草の束の数字が1減ったと同時に、パッと収納リストに三つの草アイコンと紐のようなアイコンが追加された。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


アイテムインベントリ:収納リスト


・乾燥した薬草の束×29

・乾燥した治癒草×68

・乾燥した良癒草×21

・乾燥した快癒草×11

・藁紐×2


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 それぞれのアイコンを見てみると、『乾燥した薬草の束』『乾燥した良癒草』『乾燥した快癒草』『藁紐』という名称が浮かび上がる。


 ふむ、今の一連の操作から推測すると、恐らく袋や紐、箱なんかで纏めて【アイテムインベントリ】に放り込むと、それらは開封型アイテムとして認識されるようだ。


 改めて、追加された四種類のアイテムを再度纏めるように念じてみたが……何も変化無し。


 どうやら、一度開封したアイテムをこの中で再度纏めることは出来ないようだ。


 そこまで都合良くはないか、と残念に思うがこれはこれで便利だ。


 本来なら、一回取り出して、分解して、もう一度収納する、といった工程が必要になるものが、リスト内で作業出来るとなれば、かなり手間が省ける。


 改めて、薬草の束を鑑定してみると、



=======================


名称:乾燥した薬草の束

ランク:★★★

区分:素材

品質:やや高


概要:薬草類を乾燥させて束ねたもの


   乾燥した治癒草×66本

   乾燥した良癒草×24本

   乾燥した快癒草×10本


=======================



 おや? さっき開封した束と内訳が違ってるな。


 ということは、多少サイズや重さが違ってもアイテムとしては一種類と認識されるってことか。


 だとすると、今回みたいなものならそれほど気にしなくてもいいけど、数種類の道具を雑多に詰め込んだ箱なんかだと、区別がつかなくなってしまうので、これはちょっと注意が必要だな。


 最悪リスト内で開封して、中身を一つづつ確認するしかないか。


 幸い、束ねていたものがロストすることもないようなので、その辺はどうにか工夫しでいきますかね。


 さて、続いてバラした薬草類をチェックしてみますか。



=======================


名称:乾燥した治癒草

ランク:★

区分:素材

品質:やや高


概要:傷の治療に効果がある治癒草を乾燥させたも

   の


   ヒールポーション等の素材に用いられる


=======================



=======================


名称:乾燥した良癒草

ランク:★★★

区分:素材

品質:やや高


概要:10年掛けて生育し、変異した治癒草を乾燥

   させたもの

   治癒草より薬効が高い


   ミドルヒールポーション等の素材に用いられ

   る


=======================



=======================


名称:乾燥した快癒草

ランク:★★★★★

区分:素材

品質:やや高


概要:100年掛けて生育し、変異した治癒草を乾

   燥させたもの

   治癒草、良癒草よりも遥かに薬効が高い


   ハイヒールポーション等の素材に用いられる


=======================



 まあ予想通りっちゃ予想通りだけど、昨日見た限りじゃあヒールポーションってのはあんまり期待出来なさそうなんだよなぁ。


 まあ、今の段階で悲観しててもしゃーない。


 取り敢えず、いくつか作ってみて、そいつを人里に持ち込んで、そこで判断してもらうしかないか。


 しかし、治癒草だけじゃなくて良癒草? 快癒草? なんてのも混ざってたんか。


 こいつらからミドル、ハイヒールポーションとやらが作れるみたいなんで、ヒールポーションが駄目だったら、こっちに期待してみるかな。


 さってと、これでリビングも広くなったし、昨日休んだ分も合わせて気合入れて引っこ抜いていきますか。


 気持ちも新たに外に出るが、そこにあるのはうず高く積まれた薬草の山、山、山。


 その光景にちょっとげんなりしつつ、片っ端から【アイテムインベントリ】に収納していく。


 粗方収納し終えると、次は草原の方に向かい、無心でひたすら雑草……じゃなかった、薬草を引っこ抜く作業に移る。


 今までは引っこ抜いて、纏めて、運んで、干して、乾燥したら束ねて、と作業していたが、これからは引っこ抜いたら即収納出来るので、作業効率は飛躍的に上がった。


 鮮やかな青い色をした魔枯草は全て駆除、仄かに赤い光を放つ魔光草類も多すぎると小さいスライムなんかは酔っ払ってしまうとのことなので半分ほど間引いて、物によって濃淡に差がある緑色の治癒草類は余りにも多すぎたので外縁部は放置、泉に程近い部分のみスライムが通れる程度の細道を作るように間引きをしていく。


 そんな作業を三日ほど続けると、かなり不格好ではあるが、ある程度区画のようなものが出来上がった。


 間引いた量としては全体の一割にも満たないとは思うが、スライムにとっては危険な魔枯草も刈尽くすことが出来たので、少しはスライムたちにとっても住みやすい環境になってきたのではないだろうか。


 そんな間引き作業もそろそろ大詰めというタイミングではあるが、ここで素材も大量にゲットしたということもあり、ポーションについての検証をしてみようと思う。


 道具箱に眠っていたポーション類は殆どが劣化していて、回復量も雀の涙ほどしかなかった。


 しかし、作りたての新鮮なポーションならば、回復量もそこそこあるのではないか? という考えに至ったのである。


 そこで用意した材料がこちら。


 どん。



=======================


名称:乾燥した治癒草

ランク:★

区分:素材

品質:やや高(最高)


概要:傷の治療に効果がある治癒草を乾燥させたも

   の


   ヒールポーション等の素材に用いられる


=======================



=======================


名称:魔石粉

ランク:★

区分:素材

品質:やや低


概要:魔石を粉末状に加工したもの


   様々な魔法薬、魔道具の触媒となる


=======================



=======================


名称:魔力水

ランク:★★

区分:素材

品質:高


概要:魔力が多量に含まれた水

   単体で飲んでも魔力は回復しない

   飲料水として飲んでも害はないが、短時間で

   多量に摂取すると『魔力酔い』状態になる


   多くの魔法薬の溶媒となる。


=======================



 乾燥した治癒草は云わずもがな、今現在進行中で間引いている薬草だ。


 検証用には、【採取】スキルを獲得していなかった作業初期に採取、天日干しにしていた『やや高』品質のものと、完成品の品質比較用に【採取】スキルを獲得後に採取した『最高』品質の二種類を用意した。


 これで素材の品質が【錬成】のスキルで作成した完成品の品質にどんな影響が出るのかを検証したいと思う。


 次に魔石粉。


 これは魔石という、地球には無かった不思議物質を【錬成】で砂粒状に加工したものだ。


 魔石とは魔力が結晶化した物で、魔道水袋のような魔道具への魔力供給源や匕首に嵌め込まれているようなスキルや魔術等を封じ込めることが出来る魔晶石へ加工したりと、用途は多岐に渡る。


 流石に魔道具として機能している物からひっぺがすのは躊躇われたため、木箱の中を漁ってみたり、ログハウス周辺を探してみたが、それらしき物が見当たらなかったのでグリンさんに相談したところ、何処に保管していたのか、スライム軍団が次々に運んできて、最終的には小山が二つ出来上がる位に積み上げられた。


 徐にひとつ手に取ってみると、それは魔道水袋に付いていたもの同様透き通った真っ赤な色をしていたが、形は上下に細長い八面体になっている。


 鑑定先生によると、そもそも魔石とは、地層の奥深い所で自然に魔力が集まり結晶化した物と、魔物の体内で結晶化する物の二種類があるらしい。


 前者は保有魔力が多いが形が不揃いなため、魔晶石や特化型の魔道具核への加工に適しており、後者は成長段階により大きさこそ若干異なるが、形は八面体で揃っているため、汎用魔道具の魔力供給源に適しているという。


 積み上げられた魔石をいくつか鑑定してみると、大きさによって名称が、含有魔力によって品質が異なっていて、形は全て八面体だったのでこれらは全て魔物から取れたものなのだろう。


 だけど、何故こんな物がこれ程あるのか不思議に思い尋ねてみると、どうやらここのスライムたちはある程度成長したところで、一人立ちしなくてはならないらしく、その最終試験として泉の外に徘徊している魔物を四、五体のスライムたちが徒党を組んで倒し、その倒した獲物をグリンさんに提示することで、一人前と認められて泉の外に出ていくということだった。


 その倒された魔物たちの成れの果てが、この魔石の山ということらしい。


 魔石に含まれている魔力はグリンさんたちスライムの食事にもなるが、そもそもこの場所は魔力に満ちた地であり、魔石の魔力よりも大地から溢れ出てくる魔力の方が美味らしく、また魔石は放置していても風化するということがないので、日に日に増えていき、困っているとのことだった。


 魔石は今後とも色々使い道がありそうなので、ここに積み上げられたものと、保管してあるというものを半分ほど頂きたい、ということをグリンさんに伝えると、陽が落ちる前に集めておくとのことなので、お任せする。


 どのくらい集まるのか楽しみだ。


 そして三つ目の素材である魔力水、これは泉の水だ。


 どうもこの泉の水は地面同様に魔力を多量に含んでおり、その為魔法生命体に分類されるスライムたちは気軽に、というか嬉々として飛び込んでいたりする。


 だが、たまーにぷかぷかと水面を漂っている子がいて、何をしているのかと眺めていると、どうやらその子は長い間泉に浸かっていたせいで魔力酔いを起こしたらしく、他の子たちに泉から叩き出されている光景を目にすることがある。


 とまあスライムにとっては嗜好品――人間で言えばお酒――のようなものである魔力水だが、人間側の目線で見るとこの水は様々な魔法薬の溶媒になり、長期間の常用は出来ないが、無色無味無臭なので普通に飲料水として飲んでも健康に害は無いものらしい。


 ということで、魔道水袋に限界まで補給したんだけど、そのせいで泉の水位が若干下がってしまったのはご愛嬌だ。


 ひとつ心配だったのは、生水だけど飲んでも腹下さない? ということだったけど、そこは流石スキルや魔術なんかが存在する不思議世界。


 鑑定しても問題無しという結果に加えて、試しに数回間引き作業中の水分補給に飲んでみたが、腹を下すどころか一口飲む度、身体中に力が(みなぎ)るが、残念ながらそれは数分しか続かなかったし、それが収まったときには毎度妙な脱力感に見舞われ、うんざりするハメになった。


 そんなことがあったので、魔力水を飲んだ直後にステータスを確認したみたら、状態の項目が『微興奮』となっていおり、それ以外はどの項目も変化は無かったので、どうやら極々短時間の間だけ、興奮状態にする作用があるみたいだ。


 確かに害は無いようだけど、こうもテンションが乱高下するようでは、魔力酔いの状態異常誘発が無くても、常用飲料水としての活用は難しい。


 まあ本来は飲料水ではなく、魔法薬等の溶媒なので、飲料水としては緊急用と割りきっても問題は無いだろう。


 余談ではあるが、この魔力水は蒸留水と魔石粉を素材にして【錬成】で作成出来るようなので、魔導水袋に入れた分が無くなっても、度々ポーションを作るための魔力水が湧き出ているところを探さなくていいことがわかり、ちょっと安心した。


 さて、それでは素材も揃ったことだし、早速ポーションの作成に取り掛かろう。


 先ずは、木箱の中から拝借した直径十五センチ、深さ十センチほどの手鍋に魔力水を八分目まで入れ、そこに乾燥した治癒草を全体が浸かるように入れる。


 そこへふたつまみほどの魔石粉をパラパラと落とし、よーくかき回してから【錬成】を発動っと。


 すると僅かに魔力が抜けていく感覚とともに、淡い光りが手鍋を包み、数秒ほどでその光りが収まる。


 光が収まった手鍋の中を覗いてみると、大分(かさ)が減ってはいたが、そこには透き通った緑色の上澄みと沈殿物に分かれた液体が揺らめいていた。


 上澄みの液体は少しとろみがあるようで、それを零さないよう慎重に布で濾しながら空き瓶へと注いでいく。


 大分(かさ)は減ったものの、この鍋にある量ならば小瓶十本分はありそうだ。


 さて、緑色の液体を注いだ小瓶を鑑定してみると、



=======================


名称:ヒールポーション

ランク:★★

区分:薬品

品質:中


概要:治癒草から作られる低級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを207~213回復する

消費期限:299日と23時間59分45秒


=======================



 おお! ちゃんと出来てる。


 【錬成】すげー! しかも、回復量がパねぇっす!


 木箱の中にあった『最低』品質のポーションと比べると回復量に雲泥の差だ。


 これは間違いなく、品質が『中』であることに加えて、【薬効増加】スキルがちゃんと仕事をした結果だろう。


 この回復量であれば、売り物にはなるはずだ。


 実際に人里に持ち込んでみないことには、はっきりとしたことはわからないが、取り敢えず希望は見えてきたな。


 まあ、これでも買い取れないと言われれば、それはもう仕方がないと割り切るしかない。


 さて、お次は乾燥した治癒草を『最高』品質のものに変えて試してみよう。


 手鍋に残ったポーション原液の上澄みは一旦木のお椀の方に濾して、手鍋を綺麗にしたら、『最高』品質の乾燥した治癒草と魔力水、魔石粉を先程と同じように手鍋の中にセット、そして再び【錬成】っと。


 【錬成】の光が再び手鍋を包み、それが収まると、手鍋の中には先程とほぼ全く同じものが出来上がっているのが確認出来た。


 取り敢えず一本分だけ、布で濾しながら空き瓶へと注ぎ込む。



=======================


名称:ヒールポーション

ランク:★★

区分:薬品

品質:やや高


概要:治癒草から作られる低級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを267~273回復する

消費期限:299日と23時間59分48秒


=======================



 お、品質が一段階上がっているし、回復量もかなり上がってるな。


 なるほど、どうやら素材の品質は【錬成】で出来上がるアイテムの品質にも影響が出るようだ。


 そして品質が高ければ回復量も変化する、と。


 ふーむ、もしかしたら【錬成】で作った完成品の品質は、素材品質のアベレージとなっているのかもしれない。


 となると、今のところ試行回数が少ないのでまだ断言は出来ないが、この結果から推察するに【錬成】で『高』品質以上のものを作るのはかなりハードルが高そうである。


 完成品の品質が素材の品質のアベレージで決まるのであれば、【錬成】で『高』品質以上のものを作ろうとした場合、素材の品質は全て『高』品質以上が要求されるということだからだ。


 だが、これが熟練の技術を持つ者であれば、素材全てが『高』品質でなくても、その技術力でいくらかカバーして、『高』品質のものを作るのもそれほど難易度が高いものという事ではないのかもしれない。


 とまあ、色々と考察してはみたが、今のところポーションに関しては【錬成】一択しかない僕としては、素材の品質に気をつけるくらいしか出来ないが、逆を言うと品質にさえ気をつければそこそこの物が作れることがわかった。


 ところで、効果があることはわかったけど、味はどうなんだろうか?


 一口飲んでみる……うへぇ、にげぇ、そしてえっぐい。


 なによりとろみがあるせいで、苦味とえぐみが舌の上にがっつり残って自己主張しまくっている。


 まあそりゃそうか、【錬成】したとはいえ単純に考えれば、水に磨り潰した草を溶かして煮込んだようなものだ。


 要するに、フードプロセッサーで作った青汁を煮込んで凝縮したものとほぼ同じ。


 これは味の調整をしないとまともに飲めんぞ。


 何か良い手は無いものかと、口直しに朝方もらったリンゴのような果実を齧りながら思案していると、不意に【錬成】のカンスト(カウンターストップ)特典である『錬成レシピ大全集』が反応した。


 ……えーと、もしかしてコレ?



=======================


名称:マジックアップル

ランク:★★★★★★★

区分:食物

品質:高


概要:魔力を多量に含んだリンゴの果実

    

効果:微量のMPを回復


=======================



 これはグリンさんからの差し入れである、見た目味共にまんま林檎のそれだ。


 これが『錬成レシピ大全集』に反応したってことは、素材の一つになるって事なんだけど……まあ物は試しだ、やってみるか。


 ということで、匕首を使って親指の爪ほどの大きさにカットした欠片を、先程と同じヒールポーションの素材に加えて、三度目の【錬成】を発動。


 出来上がった液体は一回目、二回目のものより若干色味は薄かったが、特に気にすることもなく、先程と同じように布で濾しながら上澄みだけを小瓶に入れ替えていく。


 んで、改めてそれを鑑定してみると、



=======================


名称:ヒールポーション改(リンゴ味)

ランク:★★

区分:薬品

品質:やや高


概要:治癒草から作られる低級回復薬

   飲んでも掛けても効果がある


   さっぱりとした爽やかな酸味と甘みが楽しめ

   る味となっております


   本品は効果が強い為、用法用量を守って正し

   くお使いください


効果:HPを267~273回復する

   MPを10~15回復する

消費期限:299日と23時間59分32秒


=======================



 ……んー、色々と突っ込みどころ満載なんだけど、一先ずそれは置いといて、取り敢えず味がどうなったか試飲してみる。


 うん、ウマイ。リンゴジュースですね。


 あの強烈な苦味とえぐみはどこいったよ?


 まあポーションなんてファンタジーアイテムに、現実的な突っ込みをいれるなんて野暮ってもんなんですかねぇ。


 問題はこれがマジックアップルだから出来たことなのか、それとも普通のリンゴでも同じ事が出来るのかということだが、それはまた普通のリンゴを入手した時に試してみるとしよう。


 とにもかくにも、ポーションの飲みやすさは格段に改善され、無理なくというか美味しく飲めるようになったし、検証自体もいくつかの結果が得られたので、諸々の成果に満足するのであった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字・矛盾点・説明不足・わかりにくい表現等のご指摘いただければ幸いでございます。

ただ、作者ガラスのハートでございますれば、柔らかい表現でお願いいたします。

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