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勇者様への贈り物。お姫様をあげましょう

「良く来たな、勇者マサムネよ」


 ファンブール王国、国王オズヴァルトのお言葉が耳に響く。

 先程まで考え事をしていたせいか、国王の言葉が「良く顔を出せたものだな、流石は異世界の勇者。礼を知らぬと見える」と自動変換されて聞こえてしまった。

 ちょっと被害妄想がパない。


 さっきから周りが冷たい反応ばかりするから、少しブルーが入っているのかもしれない。

 そう思った所で、僕は最初から面をあげたままで礼すらしていない事に気が付いた。

 王様達の瞳がギロッと睨んでいる様に見えてしまった。


「よい。堅苦しいのは抜きにしよう。エリ殿、リタ殿から一通り話は聞いておる。ぬし等は、我等が強制的に召喚した者達。本来、礼を尽くさねばならぬのは我等の方だ」


「そのような配慮……有り難う御座います」


「うむ」


 無礼講。

 聞こえは良いけど「強制的に僕達をこの世界に呼びだした罪を忘れろ、その代わり多少の無礼は許してやろう」という上から目線の言葉の様に僕の耳には聞こえた。

 いや、考えすぎだよね。

 ちょっと心を落ち着けよう。


 そもそも、最初からこの王様との間には礼などというものは存在しなかったのを思い出す。

 王様の方はいつもそれなりに威厳のある丁寧口調だけど、エリやリタの口調は普通に砕けていたし――特にリタは酷かった。よく許されていたなと思う――それに対し、この王様は不快感を示していた様子は見られなかった。

 つまり、この王様は人間が出来ている。

 だから大丈夫。

 いつものように、普通でいこう。


 今日は初めて一人での謁見だから、ちょっと緊張してるだけ。

 みんな猫の顔をしていると思えば良いんだ。

 ねーこー、ねーこー。

 しゅるん。

 あ、本当に猫の顔になった。


「エリ殿とリタ殿は旅立った様だな。すぐにまた顔を見せに帰ってくるとは思うが、寂しくはないか?」


 少し余裕が出来たので、改めて王様の姿を見た。

 猫の顔をしている。

 ……っと、王様だけ猫顔解除。

 しゅるんっと王様の顔が切り替わる。


 王にしては若く、しかし若すぎない30を少し過ぎたあたりの男性。

 威厳を持たせる為か、口髭を生やした風貌は王というよりは遣り手の伯爵といった印象が強く、それでいて顔が整っているので、女を口説けばかなりの数が釣れそうだなと僕は評価した。


 但し、その中年美男子顔には少し疲れの色が見て取れた。

 これがもしでっぷり太った王様ならば、きっと顔艶も良く仕事など一切しない愚王だと評価を下す所なんだけど、目の前にいる王様はちゃんと仕事もするそれなりには真面目な王様なのだと僕は判断した。

 こうして毎日僕達との謁見に時間を割いてくれているのがその証拠です。

 その謁見に毎回付き合わされる臣下さん達にとってはたまったものではないと思うけど。


 特に、歯に衣を着せないで毒を塗っているリタと王様の会話は、僕の心臓にも悪かった。

 今日からは別口で良かったなぁ、と心の底から思う。

 あれはあれで結構面白かったけどね。


「はい。むしろ騒がしいくらいです」


「……ああ。聞いておる。色々と好き放題してくれているみたいだな。程々にしてくれよ。勇者貯金――予算も無限では無いのだからな」


 たった数日で猫を増やしすぎだろう、と王様の目は語っていた。

 とりあえず、気が付かない振りをした。


 猫達に罪は無い。

 勝手に集めて囲った僕には罪はあるけど。

 猫達の生活費は僕のポケットマネーからではなく、国庫から出ている。

 国民の血税です。

 誰も納得する訳がない。


 それより、勇者貯金って面白いネーミング、誰が考えたんだろ。


「言いたい事は色々あるが、先にこちらの要件を済ませておくか。ライバート」


「は」


 挨拶と少しの世間話が済むと、王様は少し離れた位置で控えていた猫顔おじさん――この国の宰相であるライバートの名を呼んだ。

 貴人服に身を包んだ格好良い三毛猫顔のライバートが一度礼をした後、後ろに控えていたまだら模様の猫顔兵士から何かを受け取り、王様の元へと歩み寄る。

 王様はライバートが持ってきた物を見て、物に問題がない事を確認する。


 王様の確認を得たライバートは、その足で今度は僕の方へとやってきた。


「これは?」


 過剰なまでに装飾が施された四角い盆の上に乗っていた物――スマホサイズの薄っぺらいカードを受け取った後で、僕は首を傾げる。


「ぬしの身分を証明してくれるギルドカードだ。これをぬしに与える」


「ギルドカード!? まさか、あの伝説の!?」


 うそ、マジで?

 まさかここで手に入るとは思わなかったよ。


「ぬしもリタ殿と同じ反応を示すのだな。そんなに珍しいものなのか?」


「珍しいというか……憧れ、ですかね」


「憧れか。しかしエリ殿はあまり関心が無かった様だが」


 今日旅立つため、先に謁見を済ませていたエリとリタの二人が取った反応を思い出しているのか、王様は興味深そうに髭を弄り始めました。

 きっと自慢のお髭。

 ジョリッと片方剃ってみたら、きっと面白い事になるかも。

 即刻、打ち首にされそうだからやらないけど。


 僕も二人が謁見で取った反応を想像してみる。

 異常にテンションが上がったリタの歯に刺々しい衣を着せた言葉を我慢して聞く王様と、真っ赤なリンゴの様になっているその他大勢。

 そんなリタの隣で、特に変わった様子が見られないエリ。

 止めろよ、とみんな思っているのは間違いない。

 たぶんコレが正解。


 その様な状況だったので、きっとリタの方がいつものようにおかしくて、エリの反応の方が正しいと皆思っていたのかも。

 僕の反応を見て、ほとんどの人が眉をしかめていた。


「そうなのですか? ……まぁ、女の子ですからね。興味がなくても不思議ではありません」


 王様達の反応から、僕はエリの評価を少し上方修正する。

 エリって、実は普通の人だったんだね。

 あんなリタと平然と付き合ってるから、普通に影響受けてゲーム好きだと思ってた。

 もしくは、落ちゲーとかしかしないタイプ?


 まぁ、リタという異常人物を平然と放置している時点で、エリも盛大にどこかがずれているのは確かだけど。

 幼馴染みだから慣れているのかもしれないけど、少しぐらいはストッパーになろうよ。


「カードはプラチナランクで作っておるから大事にしてくれの」


「プラチナランクですか?」


「ぬしはまだこの国にきて浅い。知らなくとも当然であろう」


 あと、若いですからな――そんな嘲る様な呟きが周囲から聞こえてきた。


 僕達を召喚した王様は負い目があるのか丁寧に接してくれている。

 宰相のライバートさんなどは、飽く迄も事務的に。

 だけど、この謁見の間に集っている人達の中には僕の事を明らかに下に見ている人達がいた。

 最初は勇者という事で畏怖などが視線に込められていたけど、日が経つごとに――僕がしでかした事の噂が広がるにつれて、厄介者を見る目に変わっていった。

 昨日まではその感情を仮面の奥に隠していたみたいだけど、猫顔になっている今はそれがハッキリと顔に浮き出ていた。

 猫顔便利。

 たぶん心が醜い人ほど悪い猫顔になっている。


 あ、ヤクザ顔の猫がいる。

 実顔を確認して要注意人物リストに入れておこっと。


「ギルドカードですが、ギルドでは仕事を受けるごとにその者の評価が行われ、その者がどれだけギルドに貢献し、またどれほどの実力を持っているのかをギルドランクという指標で表しています。

 そのギルドランクとは異なり、カード作成時にどれだけ多くの寄付を行ったかを表すのがカードランクです。カードランクはギルドで受ける仕事の内容には影響がありませんが、ギルド側の対応は良くなります。

 プラチナカードは王族、貴族、大商人の方々など、初登録時に多額の寄付を納められた一定階級の者にしか発行されません」


 ライバートが淡々と事務的に語る。


「一種のステータスなんですね」


 つまり、これを持っているだけで威張れる、と。

 ちなみにカードランクにはブラックというランクも存在しているらしい。

 どっちの意味でのブラックかなぁ。


「ぬしがこのカードを持てるのはこれが最初で最後だからの。間違っても破損してくれるなよ」


「はい……」


「コラッ、何故そこで視線を反らす」


 王様から叱られました。

 王様はそれが冗談であるとこれまでの付き合いで察してくれているみたいだけど、僕を忌む人達にはその冗談は通じていなかった。

 でも、烏合の衆ならぬ猫合の衆の事など僕は気にしない。


「まぁよい。次の話をするとしよう。こちらが今日の本題だな」


 本題、という言葉が王様の口から出た瞬間、一斉に周囲が緊張に包まれた。

 王様から最も遠い位置で立っている兵士達の槍を持つ手に力が籠もる。


「ぬしと……我が姉、レイツェルの婚約を命じる」


 参列した一部の人が、何故か熱心に何かを祈っていた。


「……」


 事前に根回しされてたから、僕は驚かない。

 驚かないけど、ちょっと複雑な気分である事は確かだった。

 微妙に間があった事も気になる。


「……一応、理由をお聞かせください。僕は見ての通り5歳の子供です。そんな僕と34歳の(ヽヽヽヽ)王姉姫さまが婚約ですか?」


 正気ですか、と。

 この国での結婚は、12歳以上にならなければ出来ない事を僕は既に知っている。

 僕も男の子なので、そういう事には物凄く興味がある。

 現代の日本で考えると有り得ない年齢。

 でも昔はそれが普通だった事を僕は歴史から知っていたので、別にそれには驚かない。

 むしろ嬉々として調べ、そして小躍りした。


 僕の方は兎も角。

 問題は、その12歳になるまで7年も待つ事になるお姫様?の方だと思う。

 その時、お姫様の年齢は41歳。

 現時点で既に婚期が大幅に越えているというのに、更に待てというのはあまりにも酷い話だよね。

 その事は、午前中に聞こえてきたレイツェル姫の悲鳴からもよく分かった。


「これ、女性の年齢を安易に口にするでない。失礼であろう」


 王様がチラッと誰かを見る。

 その視線の先を横目で見ると、そこには必至になって何かに祈っている若い男性がいた。


「そう言えば、ぬしにはまだその話をしていなかったな。見た目が子供だからと遠慮しておったわ」


「出来れば、これまで通り子供として扱って頂ければ……」


「断る。ぬしは頭が回りすぎる。とても子供のようには扱えぬ」


 出来る限り子供を装っていたんだけど、やはり無理があったかな?

 己のこれまでの行動をちょっと振り返ってみる。


 子供らしく我が儘やんちゃっぷりを表現してみているけど、時々理性が勝って言葉使いに知性が滲んでいたり。

 好奇心の矛先が大人な内容だったり。

 女(侍女)の扱い方がどこか洗煉されていたり。

 妙に聞き分けが良かったり。


 う~ん、余程の馬鹿でもない限り、僕が普通の子供だとは誰も思わないかもしれない。

 ベックもそうだったし。


 それ以前に、異世界からやってきた存在に、この世界の常識を当て嵌めるのは間違っている。

 見た目と中身が一致しないという例は、もしかしたら過去には存在したのかもしれない。


「(見た目は子供、頭脳は大人。名探偵マサムネ!)」


 王宮殺人事件を求めて城の中を徘徊したのは昨日の夜の事だった。

 すぐに城の兵士達によって捕らえられ、侍女達の監視の下、寝かしつけられたけど。

 オイタをする絶好のチャンス。

 しかし、ナニする暇もなく一瞬にして僕は睡魔に敗北した。

 子供の身体なので、寝付きも物凄く良い。

 昨日ほどその健全な子供の身体が恨めしいと思った事は無かった。


「勇者の召喚には、犠牲が生じるのだ」


 その後の国王様達のお話を要約すると、どうやら勇者を召喚する為には純粋なままの王家の血を強く引く者が必要とのことでした。

 純粋のままの血――言い換えれば、誰とも関係を持っていない人です。

 それは男性でも女性でも同じであり、関係を持つ相手の性別についても同様だった。


 話の途中でその点について色々と質問してみたけど、概ね回答は僕の予想していた通りだった。

 戦国時代で有名な衆道はこの世界でも普通にあるらしい。

 僕が聞きたかったのは、反対側の話だったんだけど……おぇ。


 男女の繋がり以外にも食事制限だとか色々と細々した制限はあるとか。

 ただ、一番大きく影響を受けるのは男女関係の部分らしく、この条件をクリアしていない者では絶対に召喚は成功しないらしかった。


「王家の血を引いていて、未婚の者。つまり、国王様や王の血を繋げる為の後継者達には絶対に召喚をさせられない、出来ないという事ですか?」


「うむ。故に、王となる可能性の高い第一子レオンハルトと第二子シグルドには既に伴侶がおる。子も出来ておる」


「なるほど……」


 今回呼び出された人数を思い出して、僕は王様に対して殺意を抱いてしまったが、それは心の中だけに留めておいた。

 子供多すぎ!

 ついでに、自分は勇者だから王様の様なハーレム生活も夢ではないと自分に言い聞かせておく。


 既に侍女を周りに侍らせている生活を送っているので、ハーレム自体は叶っているっぽいんだけどね。

 ただ、自分で口説き集めた人達じゃないから、なんとなく女子校に迷い込んだ哀れな子羊の様な気持ちだったりする訳で。

 みんなせっせと僕の為に働いてくれるんだけど、やっぱり何か違う気がする。


「問題なのは、ぬしの年齢なのだ」


 お話はまだまだ続く。

 秘匿しないで良いのかな?


 召喚される勇者の年齢は、一般的に召喚者の年齢に左右されるという。

 条件が条件なだけにあまり検証はされていないらしく、呼び出される勇者の年齢は、ほぼ召喚者の年齢と一致するのだとか。


 ならば生まれたばかりの子供を利用して召喚を行えば良いと思うかもしれないけど、召喚を行うには長い間、力を溜め続けなければならなかった。

 最低でも10年。

 子を作っては即勇者召喚、そして都合の良い様に幼い勇者を育成して扱うという事は出来ないらしかった。


「つまり、5歳の僕が呼び出されるのは明らかにおかしいと。本当なら、レイツェル姫に釣り合う年齢の中年が呼び出される筈だと?」


「うむ、そうだな。とはいえ、絶対という保障がある訳でも無いし、我等と同じ姿をした人が呼び出されるという保障がある訳でも無い。過去にはモンスターや悪魔が呼び出されたという事例もあったらしい。ここ数十年では聞いた事は無いが」


「そうなのですか」


 例外があって僕はホッとした。

 実は自分が呼び出された理由に心当たりがあるのだが、それは自分だけの秘密である。

 今はそのカードを切るべき時ではない。

 まぁ、ほとんどの人は既に察していると思うけどね。

 リタにはすぐに見破られたし。


 こっちに来る途中で出会った女神様に、とあるお願い事を叶えて貰ったらこうなりました。

 某緑色肌の宇宙人魔王さんみたいに、アレな願いを望んでみたら意外な結果に。

 やっぱり早まったかなぁ。


「起こってしまった事を嘆いていても仕方あるまい。今は先の事を考えるべきであろう」


 丁度良くグサッと刺さるお言葉が。

 僕、成長するのかなぁ……。


「はい。ただ、この身体ではあまり役に立てないかと思いますが……」


「それは問題無い。我等がぬし達に求めるのは魔王の脅威を退ける事だ」


 あ、やっぱりそうなんだ。

 明確な言葉としてそれを伝えられたのは、これが初めてだった。

 でも王道だしね。

 勇者あるところ魔王あり。


 たぶんアレだよね~、とリタと盛り上がっていたのはいつの事だったか。

 あれは確か、情報収集の為にコッソリ町へと繰り出した日の夜だったような。

 夜這いを仕掛けてきたリタと同じベッドの上でプロレスごっこをして、洗いざらい喋らされた記憶がある。

 次の日の朝は妙にスッキリしてたのを覚えているよ。

 ……キッチリ最後には綺麗に絞め落とされたからね。

 プロレスというか、一方的な拷問だった気がする。


 きっと初日に子供を装ってリタに抱き付き、あまり無い胸に顔を埋めて至福の時を満喫したからだね。

 (嘘がばれた後に)悪はキッチリ成敗されましたとさ。


「だが、それはぬし等4人……いまでは3人になってしまったが、たったそれだけの人数で成せる事ではない。勇者召喚は何も我が国だけで行われている事ではないのだ」


「え? そうなんですか?」


 こっちは初耳だった。

 勇者が頻繁に、しかも多くの国で召喚されている事を僕は今初めて知った。

 でも、それほど驚かなかった。

 だって、僕達の知っている言葉や物や食べ物が時々出てくるからね。

 マヨネーズをたっぷりつけたエビフリャーがとても美味しかったです。


 あと、ここ数日の生活で周りの反応が思っていたよりも熱が無いな~とも感じてたし。

 勇者を召喚したならもっと盛大に沸いていても良い筈なのに、いまいち盛り上がりに欠けてました。

 僕が子供だから反応が薄いのではなく、エリやリタと一緒にいた時にも大きな反応は感じられなかった。

 また、王様達から感じる危機感がそれほど高いとも思えなかったのも一つの要因です。

 なんとなく平和だな~っと。


「強大な力を持つ魔王に対し、こちらは勇者の数で勝負する、という訳ですか」


 いつの時代も数は力。

 勇者軍団が組織され、魔王の領地に攻め込むという光景を想像する。

 勿論、集団の先頭にいるのは僕。

 ついでに、メンバーは全員女性。

 男性勇者は諸事情により、既にお亡くなりになっているという設定です。


「いや、そうではない。魔王を倒す事は不可能だ。魔王はそこまで弱くない」


 王様の言葉に、勇者軍団は魔王が振るった手の一振りでアッサリ蹴散らされました。


「えっと……倒せないんですか?」


「うむ。歴史が証明しておる。魔王の足下にすら辿り着けておらぬの」


 魔王ではなく、四天王に蹂躙される美女軍団。

 何故か触手も混じって18禁な光景が広がっていたけど、それはあくまでも僕の願望であり事実ではありません。

 この物語はフィクションであり、うんたらかんたら……。


 ちなみに、その妄想の世界では僕だけは都合良く生き残り、復習を誓いながらも新しい美女軍団を組織し始めるというストーリーだった。

 後腐れ無く新しい女を侍らせる……悪ですね。

 (= ̄∇ ̄=)v イエーイ♪。


「なら、僕達は何をすれば良いんですか?」


「平たく言えば、魔物の数を削ることだ。勇者はこの世界にいる者よりも頑丈で、成長が早く、その身に秘めた可能性も広い。この世界にも強者は多くいるが、その数は一握りにしか過ぎないし、なかなか増えるものではない」


「……ああ、なるほど。例えるなら、僕達は異世界から買い取った傭兵みたいな存在なんですね」


「勇者は人々の希望でもある。だから、傭兵というのとはちと違うと思うぞ」


 さっき、勇者によって滅ぼされた国もあるって聞いた様な気がするんだけどなぁ。

 希望によって滅ぼされる国々。

 原因はどっちにあるんだおろう。

 やっぱ国側の圧政かなぁ。


「ぬしには身体が成長するまでじっくりとその力を伸ばして欲しい」


「そういう事であれば、精一杯努力させて頂きます。不肖、この私目。与えられたこの時間を有効活用し、いつの日かこの恩を返せるようになりたいと思います」


 心の中では「ニート万歳、自堕落な生活を送るぞ!」と意気込んでいる僕だった。


「うむ。もしかすると、子供の勇者が呼び出されたというのは、ある意味幸運だったのかも知れぬな。たまに無茶をしてアッサリ死ぬ勇者もいるらしいからの」


 エリとリタという2人の勇者を送り出したばかりだというのに、物騒な事を言う国王様。

 2人が帰ってきた時、心が折れていたら優しく声を掛けてメイドとして取り込もうかな。

 猫耳尻尾はデフォです。


「ところで、何故一人だけ大人の勇者を召喚しようとしたのですか?」


 ふと疑問に思った事を聞いてみた。


 エリとリタ、そして彼女達の幼馴染みである今は亡き(笑)少年は、見るからに高校生ぐらいの年齢だった。

 つまり、召喚者は同年齢の王子様もしくは王女様。

 その年齢ならばまだ結婚していなくても不思議じゃない。

 だけど、自分を呼び出したレイツェル姫だけは、とし……ゲフンゲフン……妙齢の女性。


「まだ精神的に未熟な子供を野放しにするのは少し心配だったからな。心身共に成長した大人を付けようと思うのは悪い考えではなかろう?」


 大人の勇者に率いられた勇者パーティーで比較的早い段階で安定した成果を出してもらう、というのが今回ファンブール王国が企てた計画だった。

 定番を覆す試みだけど、暴走しやすい年齢の勇者によって国が滅ぼされたり乗っ取られたりするのを抑制する一手として、それは十分に価値があると思ったらしい。

 結果は、ご覧の通り。

 策士、策に溺れる?

 というか、国が滅ぼされたのは圧政を強いていたからじゃなくて、勇者の欲望が暴走した結果だったんだ。

 やっぱり勇者も人間なんだね。

 僕はどうしようかな~、なんてね。


「なんて可哀想な事を……」


 僕を召喚したレイツェル姫の事を思う。

 その為に彼女が支払った犠牲の事を考えると、あまり良い気分はしなかった。

 その年齢まで未婚でいる事を義務づけられた王姉姫様。

 恐らくだけど、先代国王様の判断だと思う。

 あまりにも可哀想な仕打ちです。


「いや、姉様の場合は自分でそれを望んでいただけだ」


「あ、そうなんですか」


 レイツェル姫の印象が不遇の熟女から、問題の多い我が儘行かず後家へとガラッと変わる。

 そんな人を僕は娶らないといけないのか。

 一転して心がズブブブブッと一気に沈み込んだ。


「あの、あまりにも長く待たせるのは僕としても心苦しいので……出来れば、出来ればですよ? 他の方を御紹介するという事は……」


 どこかから「ヒィッ!」という悲鳴が聞こえてきたけど聞かなかった事にする。

 きっとその人は、僕が娶らない場合のお相手なのでしょう。

 下げ渡し。

 彼が必至に祈っていた理由が分かって少しスッキリ。


「却下だ。これは王命である。いくら勇者でも、そのお願いだけは聞けぬ」


「うぐぅ」


 結婚適齢期まで成長してもフィアンセはトリプルスコアをぶっちぎるお姫様。

 勇者マサムネに、とてもとても難題な一つの試練が課せられた瞬間でした。







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