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成年後見制度申請奮闘記  作者: 貫之
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後見人候補者

 様々な書面のコピーも済ませ、申請書類に必要なことを記入し、証明書類も残すは「登記されていないことの証明」が法務局から届くのを待つばかりとなった時、待ちに待った後見人候補者の紹介の知らせが届きました。


 ここで候補者の依頼をするときに必要事項として記入を求められた内容をご紹介しておきましょう。この情報をもとに候補者の募集がかけられます。


管轄家庭裁判所   (○○家庭裁判所○○支部又は○○出張所など)

事件番号(分かる時) (平成○○年(家)第○○号)

類型         後見人・保佐・補助のいずれか

申立者        親族名・本人名・○○市長村長名等

本人情報       大まかな年齢・性別・障害の内容・介護度又は手帳種類

住所         住民票のある所

居所         実際の生活場所(親族宅、施設、病院など)

申立までの経緯

財産関係       月々の収入額と支出額、その内容・預貯金合計額・負債

           不動産・後見人への報酬の可能性の有無

親族         支援関係にある親族・推定相続人

後見人に希望する活動 資産管理・契約代行・福祉サービスの紹介、選定等


 おおむね、こんな感じでしょうか。他に希望すれば利用者との相性なども書き込みます。


 管轄は申請先です。利用者が住民登録している地域の指定されたところを書き込みます。


 事件番号はたいてい申請後に裁判所が決めるので、この時点では空欄が多いはず。特殊な事情で先に決まっている場合だけ書き込むことになります。


 類型は申請のための診断書に医師が判定して記入した類型を記入します。


 申立者は本人なら本人名を、本人に申し立てる判断能力がなく誰かが代わりに判断をしているなら(たいてい親族)、その人の名前を記入します。


 本人が申し立てるのなら、どんな人でも制度を利用する権利はあるのですが、申立ができる人の範囲は決まっています。本人とその配偶者、四親等内の親族、市長村長だけです。


 市町村長が申立人となるケースというのは、四親等内の親族が存在しない(両親、祖父母が死亡し、きょうだいやおじ、おばもなく、配偶者や子もいない)、あるいはわずかにいても全く連絡が取れなかったり、病気や障害で本人に関与できない場合、その地域の包括支援センターがこの制度の利用が適切と判断を下すと、住民登録先の市町村長を申立人とすることができます。


 本人情報も、ここでは大まかです。年齢は○○代の前半、半ば、後半と言った書き方をします。障害も後見人が必要な理由となった主な障害や疾患だけを書きます。そして目安として介護認定度や、障害者手帳の種類と程度を記入します。


 住所は住民票の住所の記入が必要ですが、候補者募集の際、詳細な番地などは省略されます。管轄地域の確認程度に使われます。居所も同じ扱いで、施設名なども省略です。公表されるのは最低限の情報に限られるようです。


 申立までの経緯は言葉の意味のままですね。これまでに起こったことを書きます。


 財産情報は特に決まった形式や表などの指定はありませんでした。単純にこれから管理してもらう収入と支出、資産と負債を正直に書くだけです。収入約○○万円と言った程度です。ただ、負債内容と不動産の内容は出来るだけ具体的に記入します。


 親族は主に二親等以内の氏名だけで良いようです。希望する活動には、実際に困っていて支援してもらいたい内容を大まかに書きます。詳しくは候補者が決まってから個別で話し合うことになります。


 前にも書きましたが、職業後見人候補者と言うのは常に不足しているのが現状です。それでも司法書士の候補者は多少人数がいるようです。逆に言えばそれ以外の候補者は数が少ない状態です。


 けれども、幸い私は依頼から二週間ちょっとで候補者のご紹介を得る事が出来ました。これは管轄地域の場所や時期、依頼内容によってかかる時間が違います。そして私の場合は事情があって、すでに父を施設の短期入所エリアに仮入所させてもらっていました。


 本契約を待ってもらっていますから、なるべく早く候補者を選ぶ必要がありました。しかし数が少ないということも知っていますから、最悪ひと月近く待っても難しいようなら司法書士団体への相談も検討していました。しかし紹介先のご尽力で何とか早々とご紹介をいただけました。


 紹介機関に協力してもらえるのはここまでです。後はこちらと候補者の個人との話し合いになります。教えていただいた最低限の情報で連絡を取り、互いに詳しい情報を交換します。そして候補者の記入書類と、添付してほしい証明書類を書いた紙を添え、お礼の言葉と共に候補者さんに郵送します。


 この時私はこれまでに用意した申請書類と添付書類のすべてのコピーを一緒に郵送しました。基本的にはこの書面を通じて今後の話を進めるためです。


 私は遠方にいたので候補者さんと事前にひざを突き合わせて事情を説明することができません。しかし面接までに互いがある程度の事情を共有しておかなければ、面接時に話が滞る恐れがあります。中途半端に説明分だけを書き送るより、確実だと考えました。


 候補者さんはまだ若い社会福祉士であり、夫の運営する福祉支援事業所の職員でもありました。後見人のお仕事は初めてで、家庭裁判所に足を運ぶのも初めてなのだとか。申請書の実物を見るのも初めてで、コピーは大変役に立ったそうです。


 そういう方のご負担になったらいけないと、自分で可能なことはできるだけやろうと結構気負っていたのですが、杞憂に終わりました。若さと言うのは熱心で積極的ですから、こちらが思う以上の仕事をこなしてくださっています。


 申請に必要な候補者記入欄の書類とその証明書類も、本当に早く届けられました。待っていた登記されていない証明書が届いた二日後にその書類が届いたので、さっそく家庭裁判所に郵送申請しました。ひと月以上覚悟していた申請が、こうして三週間ほどで終える事が出来ました。これで申立は完了です。


 そしてわずか数日後、裁判所から面接日の相談をしたいと電話がありました。全く一方的に面接日が決まるのではなく、週に二回面接できる曜日が決められていて、その日の午前と午後の中から選ぶように求められました。


 さすがにその週はすでに埋まっていて、私の飛行機移動にも厳しいものがありました。翌週で候補者のスケジュールともすり合わせ、早いほうの日付の朝の時間に決まりました。事実上確かに自分で決められる要素はほとんどありませんが、私が申請した裁判所はある程度柔軟性がある感じがしました。比較的空きのある時期だったのかもしれませんが。


 私は申立の準備からひと月ちょっとで面接までこぎつける事が出来ました。これはかなり速いペースで進行できた例です。面接日も裁判所により決め方はまちまちで、申立当日に行ったり、後日連絡が来たり、予約が必要だったり、いらなかったりします。


 やはり普通は二カ月程度、状況によってはもっとかかると考えておいた方がいいかもしれません。特に法務局からの証明書や裁判所での面接日は、時期によっては時間がかかると思っておいた方がよさそうです。


 面接前に私が上京したのは一度きり。意外と郵送や電話で何とかなるものです。


 大変なのは確かですが後見人と言うのはとても責任の重い、重要な役目です。ご自分がするにしろ、職業後見人にお任せするにしろ、こうした手続きを通してその重さを少しでも事前に知っておくことは、結構大事かもしれません。


事情によるとは思いますが、できる事なら制度に理解を深めるためにも、体験して損はないと思います。



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