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成年後見制度申請奮闘記  作者: 貫之
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事情説明書


 そのほかに「後見・補佐・補助申立書」「家族の同意書」などがありますが、これは記入例通りに申立人か家族が記入、捺印すれば問題ありません。


 ただ、氏名が正式な戸籍では旧字体で書かれていることがあります。普段使わないので意識していないと思いますが、きちんと戸籍通りに書きましょう。ただし「同意書」はそこまで求められないようです。


 家族の誰かに同意書を書いてもらえない時は、その詳しい理由を指定の欄に明記します。


 書いてもらえない理由は様々。単純に忘れられて書いてもらえなかった。郵送でお願いしたが遠方のため間に合わなかった。そもそも同意してもらえない。疎遠で居場所すらわからない。障害で意思の疎通ができない。執筆できないため代筆になる……等。同意されていないならその経緯の説明も必要です。


 それから「本人事情説明書」には、利用者本人の生活歴と職歴などが必要になります。生活歴は申立人の記憶と、戸籍などからわかる範囲で良いようです。いつどこで生まれ、どこの学校に通い、どこに転居し、いつ誰と結婚し、どこでどんな仕事に従事していたか。退職後はどんな生活だったか。記入するのはそう言うことです。


 学歴、結婚の年月が分かる物、以前書いた履歴書などがあると便利です。転居をしている場合も詳細な住所までは必要ありません。何年に○○市に在住していたと記入します。これらに証明書類の添付は不要。他は必要事項を明記してチェック欄をチェックするだけです。


 おそらく悩ましいのは「申立人事情説明書」だと思います。そもそも、どうしてこの申立を行うことになったのかの事情を説明する欄です。そして後見人を必要としていることを、こちらが具体的に訴える事が出来る唯一の記入欄でもあります。


 これは事情が込み入るほど説明が必要でしょう。用紙のサイズで書ききれるか不安な時もあるでしょう。だからこそ面接があるのでしょうし。ですがここは簡潔にまとめながらもできるだけ内容の濃いものを心掛けた方がいいと思います。


 別用紙に追加記入が認められる場合もありますから、必要なら問い合わせてください。


 確かに面接で口頭での説明は出来ます。しかし時間に限りがありますし、面接を行うのは裁判所の職員です。しかし実際に審議し、審判を下し結審するのは裁判官なのです。


 裁判官はあなたの書いた申請書類を参考に審議します。もちろん面接した職員から報告もされますし、面接中に申請書の訂正や追加の記入もあります。しかしベースはあなたの書いた書面です。後見人の必要性をしっかり訴えかけましょう。


 基本はこれまでの簡単な経緯、現在の環境、本人の主な症状とそれによる不利益。それによってどういった事態が予想され、家族と本人がどんな解決を望んでいるか。できれば家庭環境に及ぼす影響なども書き入れましょう。


 現実的な現在の問題点と、後見人制度の利用によってどれだけの解決が見込めるのかを、説明しましょう。


 この審議を行うのは「家庭裁判所」です。ここは国民の健全で円滑な家庭生活を推進することを理念としています。あなたが心から家庭の円満を望んでいるのなら、その思いを伝えましょう。


 実際に行ってみると家庭裁判所は決して杓子定規なばかりのところではありませんでした。理念に基づき、その家庭の幸せを考慮したうえで判断が下されるようです。


 現実に少子高齢化が進む現状の中、高齢者の後見人制度の利用について、裁判所はたいてい前向きに検討し、できるだけ円滑な決定を下しているようです。


 状況によって申請した後見人が認められなくても、ふさわしい別の後見人が選定されますし、必要に応じて複数の後見人が選定されることもあります。


 後見人は財産管理や契約代行支援の権利のほかに、適切な福祉や介護を受けさせる支援をする「身上監護」や、法律行為やその取り消しを本人に代わって行う「同意権」「取消権」という権利があります。状況によってこれらを適切に行える人を、それぞれ複数の後見人によって賄う場合もあるのです。


 例えば多数の複雑な財産や負債がある場合、財産管理は司法書士などの職業後見人が行い、身上監護、福祉サービスの同意、取消は同居の介護人が後見する。それも難しければ身上監護などは社会福祉士の職業後見人とするなどがあります。


 きちんと事情を説明すれば、家庭裁判所はプロとして最も適切な解決策を導き出してくれます。「身内の恥」「底辺生活を見下されそう」「自分の無能ぶりをさらしてしまう」等のつまらない虚勢や意地はこの際捨てましょう。困っているから国の制度に頼るのです。


 もちろん個人情報も家庭のプライバシーも厳重に秘守されます。電話での質問も丁寧に答えてくれますし、面接した職員もノーネクタイのカジュアルなセーター姿です。緊張や不安を感じさせないように十分配慮してくれます。きっと裁判官も同じ姿勢でしょう。


 できるだけ詳細に、素直な気持ちで書くことをお勧めします。


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