自主申請? 代行?
私のように「認知症の老親を施設に入所させるため」といった理由で後見人を申請する人は近年増えているそうです。
もともと多いのは契約内容が理解できなかったり、詐欺やセールスに乗せられる、クーリングオフも自分でできなくなるなど、金銭管理、資産管理能力を持たなくなった高齢者(あるいは障害者)の代理として後見人が必要なケース。
後見人の申請は基本誰でも行えるのですが、介護をしている同居(あるいは近隣に住む)家族が本人に代わってそうした管理を行えるように、介護者を後見人にするための申請をするのです。これは高齢者や障害者の財産を守るために大変有益な手段です。
中には家族関係が複雑で、しかも多くの資産を有する高齢者が認知症などで判断力を失い、家族間で資産の管理方法、介護方針に大きな対立、あるいは借金などの問題から隔たりを持った場合などに、公正な第三者に管理を任せるために申請する場合もあるようです。
そんな申請内容ですから、成年後見人制度の申請は弁護士や税理士、司法書士などが家族に代わって煩雑な手続きのすべてを行ってくれるようです。もちろん有料ですが。
これも特別なことではなく一般的で、庶民は司法書士事務所にお任せする場合が多いようです。要は申請の手続きの代行なので、資産の法的問題や後の相続問題などの懸念がなければ、司法書士が適切なのでしょう。
私も最初の話では、遠方なら司法書士事務所への依頼を検討した方がいいかもしれないと聞かされました。成年後見人の申請というのは、本人が居住する地域の最寄りの家庭裁判所で行います。
そして、ケースによりますがだいたい六カ月程度はかかると考えた方がよいようです。私が遠方に住んでいることの配慮からそう言ったのでしょう。
六カ月……これに私は迷いました。私は自宅から遠く離れたところに、六カ月居続けるわけにはいきませんでした。となると、必要に応じて上京しなくてはなりません。
普通に考えて事務所に依頼するときに一度はそこへ足を運びたい。後見人の候補人とも挨拶を交わしたい。家族の全財産を預けるのです。顔も見ずに進められる話ではありません。
そして、申請時に重要なのは申請書類をそろえる事と、裁判所に足を運んで行われる面接だと聞きました。そして裁判所の面接日は向こうから指示されるとも。つまりこちらの都合で日にちを決められないのです。
これで最低三回以上は上京する必要があります。しかも面接日は向こうに合わせなくてはならない。素人仕事が手間取ればさらに回数は増えます。
一回の上京でかかる飛行機の往復チケットは、時期や時間にもよりますが、安いところを狙ってだいたい四万円。三回で十二万円。司法書士事務所の申請代行手続きは、必要経費をのぞくと十万円から十五万円くらいするようです。これは微妙……。
しかし私には別件で上京の必要が生じました。父と同居していた障害を持つ家族の体調が悪化し、福祉就業していた職場を休業する事態となりました。家族と父との別居の各種手続きもある中で、他にも手続きが増えていきます。
こういう施設入所は機会を得たら速やかに行動しなくてはなりません。普通は入所したくてもできるものではないのです。
施設は増えているようですが介護者などの数は足りず、認知症患者などでも入れるような所は何百人という人が機会を待っています。私の場合は緊急性の高さと、同居していた障害者の状況を判断して配慮してもらえたのでしょう。
そうまでして作っていただいた機会です。お金をかけてプロに頼んででも円滑に事を運びたい、早く後見人を決めてしまいたい思いはありましたが、病人がいるのに交通費のほかにお金をかけていられません。
後見人がいなければ入所契約できませんから焦りはありましたが、自分で手続きを踏む覚悟をしました。各市町村にあるという「日本社会福祉士会・成年後見人センター」というところへ足を運びました。
行ってみると役所関係の建物の中にある部屋で、こちらのこれまでの経緯と詳細な事情を、時間をかけて聞いてくださいました。対応は役所の職員と同じく丁寧なもので、市民の相談所といった感じでした。
家庭裁判所まで行かずとも、そこで申請書類を渡されました。他に必要な証明書類も一覧に書かれていましたが、職員の人が丁寧に各種証明書の入手方法を教えてくれたり、検討してくれたりしました。
裁判所は個々の事情にも配慮してくれるとのことで、ちょっと肩の荷が楽になりました。
さらに、質問があれば電話をしてよい事、申請書類は各地方家庭裁判所のホームページからダウンロードできるので、書き損じても大丈夫な事、ここから裁判所に問い合わせることもできると告げられ、頼もしく思えました。
とにかく必要なのは後見人候補者の依頼と各種証明書類をそろえることで、それが済めば後はかなり楽になるそう。まずは候補者探しに奮闘します。