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成年後見制度申請奮闘記  作者: 貫之
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血縁者の現実

当然ですが、個人の事情はかなり伏せてありますので、ご了承ください。

 今年の初め、私は実の父親の施設入所にあたって、成年後見人が必要になりました。

これはその制度を利用するための申請を行った時の、大まかな記録です。自分の覚書のような物ですが、どなたかの参考にでもなれば幸いです。


 成年後見制度とは『広義にはその意思能力にある継続的な衰えが認められる場合に、その衰えを補い、その者を法律的に支援するための制度』

 ウィキペディアによると、基本はこう言うことだそうです。つまり、


「一般的な意味では自分の意思や判断力が一時的ではなく、長く今後も衰えている……あるいは、そうしたことに著しく不自由を強いられる人(認知症や知的、精神的障害を持つ人)のために、そうした不足部分を法律によって補い、支援する制度」


 ということです。『広義には』と頭についているのは、後見には民法に定められた『法定後見』と、当事者自らが事前に将来の後見人を決めておく『任意後見』があり、さらに『法定後見』には補助的な役割となる『補佐』と『補助』があるからです。これからお話しするのは『法定後見』についてです。一般的にはこれを成年後見と呼んでいるようです。


 私の場合は実父が認知症で自己の意思を第三者にきちんと示すことが難しくなっている、そして判断力が最低限の日常生活に支障を生じるほど低下しているために、その意思の伝達、判断の決定を代理人にゆだねる必要が生じたために、この制度を利用したいということです。


 もっと具体的に言えば、父を施設に入所させるには本人の同意の意思が欠かせませんし、正式な契約には本人の承諾による署名捺印が必要です。でも、本人の理解力が低下していて入所について正しく理解できず、契約書の内容も理解できずに自分で判断ができなければ、誰かがそれをする必要があります。


 しかし、個人の自由な生活をやめてまで入所するということは、その人の人権に大きくかかわります。もちろん嫌がる人を無理やり入所させるなど基本的にはあってはならないことです。


 けれど自分で食事ができない、薬を正確に服用できない、歩行、立位が不自由、排せつ、入浴などの衛生が明らかに保てないなど、安全や健康に間違いなく問題がある場合……そのすべてを補うだけの介護が自宅では見込めない場合には、十分な説得を試みたうえで入所させる必要があります。


 そうした時に本人に代わって「施設入所したい、したくない」という単純なその場の判断を仰ぐのではなく、「安全で安心のできる生活を送りたい」「きちんとした介護を受けたい」という本人に本当に必要な要望と意思を尊重しながら、本人に代わってその意向を示し、契約を行うのが成年後見人なのです。


 私の父の場合、本人がいずれ施設に入所することを承諾していました。ですから初めは第三者に頼らずとも肉親である私が署名捺印し、本人の同意を確認できれば入所は可能との話だったのですが、私は結婚して籍が抜けていて苗字も違ってしまっています。


 さらに父たちは東京近郊に暮らしていますが、私は北海道に住んでいます。あまりにも住所が離れていて、身近な存在とは言えません。


 もちろん自分の肉親ですから人の情としても普通に様子が気になりますし、家族としての責任を取ることに迷いはありません。けれどそれ以上に、こういうことでは戸籍や書面の証明よりも「血縁者である」ことが重要視されるようです。何かがあれば連絡も来ますし、上京して承諾も求められます。


 けれども「銀行手続き」「買物」「カードの契約、解約」「役所での手続き」……他にもいろいろ、本人でなければ「苗字が同じ血縁者」「同居家族」の承諾が必要になる時、「血縁」が事実上重要視されているにもかかわらず、戸籍も苗字も違っていて住所も極端に遠い私は、現実にすぐには手続きできないことが多いのです。


 そんなわけで施設の事業者は私に代わって血縁者と同等……あるいはそれに近いだけの責任を負える人、成年後見人を父につけることを求めてきました。当然です。このままでは基本的な生活さえ困りかねません。


 でも私のようなケース、意外に多いのではないでしょうか? 娘が遠くに嫁ぎ、配偶者も亡くなり、一人暮らしとなった老人が認知症になる……。核家族、少子高齢化が進む現代ではこれから増えていくと思います。


 いつかこの辺りをきっかけに、再び夫婦別姓論議が過熱するかもしれません。


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