閑古鳥飛ばず
「ご存知でしたか。では、一族の者が、鬼に味方したという話も事実なのですね。」
「ああ、山姥という人食いの鬼婆だった。」
「やはり、そうですか、お恥ずかしい限りです。現当主として深くお詫び申し上げます。決して償いきれるもなのではありませんが。私に出来る事でしたら何でも仰って下さい。」
彼女はまたも深く頭を下げた。
「止めてくれ、あなた方に責任はない。それより、オロチという男の事は伝わっていないのか?彼は大巳一族だったはずだが。」
「彼の事は、旅立ち、そして帰って来なかった。と、だけ伝えられてきました。」
「彼は、身内の始末をつける為にと命をかけて共に戦ったんだ。そして、俺たちと、この世を救うために死んだ。謝罪なんか必要ない、彼は責任を果たした、彼こそ英雄だ。讃えてやってくれ。」
「そうでしたか。詳しく聞かせて頂けますか?」
宗士郎は語りだした。彼と出会った時の事や共に戦った事、そして彼の最後を。
彼女は礼を言って、これからは必ず彼の事を英雄として代々伝えていくと約束した。
「ところで、宗士郎様はなぜこの村に?」
「いやぁそれが、たまには野菜や米の飯が食べたいと思っていたらたまたまたどり着いたのがこの村だったんだ。手土産にと熊を獲って来のだが、このザマだ。」
宗士郎は苦笑いをした。
「そういう事でしたか。重ねてお詫び致します。もし宜しければ村外れに一軒、空き家がございます。しばらくそこに住まわれてはいかがでしょう?」
「それはありがたい。しかし詫びはもうやめてくれ、それに“様”とか敬語も無しにしてくれないかな?」
「分かりました。宗士郎さん。誰かに案内していただきましょう。」
「ありがとう。助かるよ。」