閑古鳥が鳴いていた。
宗士郎は、重圧と殺気を感じて目覚めた。
(くっ!なにがどうなってるんだ!?)
体が重くて起き上がるコトができない。
どの位気を失っていたのか……、十人程の村人が集まっていた。
武器を手に、警戒してはいるが、彼らに殺気はない。
状況を理解できず、対処に困っているようだ。
距離をおいて、こっちを指差しては何かを相談している。
宗士郎はひとまずホッとした。
どうやら問答無用で殺されるコトはなさそうだ。
問題は殺気を放っているモノだ。
ソレは宗士郎の背にいた。
百キロは有ろうかという熊が、四つ足と口を縛られもがいている。
「ぐるるるる……。」
「ぁあ、お前か。どうりで重いハズだよな。」
手ぶらではなんなので、手土産にと仕留めてきた獲物だった。
明らかに宗士郎より大きい。それに、だいぶお怒りのようだ。
新鮮な肉を、と殺さずに失神させるという、気遣いまでしたのだ。
村人達が困惑するのも無理は無い、宗士郎は、狩人の格好をしていたが、見た目は十代の少年だった。
熊を背負って来るには少し若過ぎるだろう。
しかし困った、力が出ない。全く動けないではないが、熊をどかすのは無理だった。
どうしたものかとこちらも悩んでいると、勢い良く向かって来る者が現れた。
村人の制止を振り切ったそいつは、ジャラジャラとわっかのついた派手な装飾の槍をかまえて、飛び掛かってきた。
(はぁ?女の子!?)
「はぁぁぁぁあ!!!化け物め、成敗します!!」
「おい、ちょっ……ぐえ、あが!?」
止めようとしたが、殺気に反応した熊が暴れて喋れない。
「えぇぇい!!」
「うわぁぁあ………、」ゴチーン!「……あ?」
槍は熊の鼻先から眉間を叩き付けていた。血が出てはいるが、致命傷には程遠い……。
ところが、
「消え失せなさい。」
などと決め台詞を吐いて勝ち誇っている。まるで触れただけで熊が蒸発するとでも思っているようだ。
一瞬その場は静けさに包まれた。
全員が固まり言葉を失うなか、初めて宗士郎に気付いた様子の少女と目が合った。