桃子とさくら
目の前に立ちはだかったのは忍装束の女の子。腰の短刀は抜かず、両手を広げて後ろの仲間……或いは主人かもしれないが……を庇っている。
激昂した大人にも怯まず大した度胸だ。
武器に手を掛けなかったのも賢明だが、ただその装束は全身桃色、自分の趣味かはともかく、あまり忍ぶ気はなさそうだった。
しかしそれよりも問題は後ろの女の子。吹雪の前に立ち、両手を軽く広げている。
庇っているというよりは掌をさらすことで敵意が無いことを示しているようだ。
そんな事をしなくともその格好を見れば、敵でない事はわかる。経験者として、敵にしてはいけない事も知っている。
……アイツに初めて会った時は心底呆れたモノだが、まさかあの一族ではこれが正装なのか?……だとすれば頭ごなしに否定したのは悪かったかなどと考えながら、やはり懐かしさを覚えるその女の子を眺めた。
軽量の防具は動きやすさを重視した物だが、派手で大きめの陣羽織と、背に差した日本一と書かれた二本の旗はソレを完全に無視していた。腰に差した二本の太刀に至っては子供が抜ける長さではない。
普通の子供ならば、の話だが、その可能性はとても低い。
ハチマキをはじめ、陣羽織や旗にもいれられた桃の印から、二人が何者なのかは間違えようがなかった。
だからこそ、宗士郎は顔をひきつらせて固まっているのだが。
「初めまして……」
それにかまわず勝手に自己紹介を始める二人。
……いや、誰だ?と聞いたのは自分だったか……。




