閑古鳥の卵
「それじゃぁっ!その槍を捨てれば、シロは化け物じゃなくなるのね!?」
今まで黙って聴いていた葵が、急に割り込んできた。そしてサラッと化け物呼ばわり。
「おいおい、いくらなんでも、そんなに簡単じゃないだろ。」
と、彼女の失言には触れず、宗士郎は苦笑い。
「いえ、可能性はあると思います。その槍さえ無ければ、達人、いや超人、或いはビックリ人間ぐらいにはなれるかも知れません。そして、人並みに歳を取るかと。ですが………、」
と言うとひろみはそっと槍に触れた。
「お、おいっ!」
気を付けろ、と言う宗士郎に大丈夫だから…、と、ひろみは続けた。
「問題は、槍には意志が有り、あなたを未だに認めていない事。恐らくは主人があなたを認めた事に対する嫉妬ですね。そして、主人の命令を拡大解釈して嫌がらせで化け物に……、あなたの意志がどうあれ、その方が迎えに来るまで解放するつもりは無いでしょう。簡単に捨てられるとは思えません。」
「解放……か。囚われているのは、どっちなんだかな……。どの道コイツは借り物なんだ、借りた物を勝手に捨てるワケにはいかないさ。」
「律儀なんですね。まぁ、手放さなくてもあなたを認めさせるか、せめて交渉する方法を考えましょう。……或いは脅す…、へし折ってやるぞー……とか言って。」
なんてね!と、軽く言うひろみ。
しかし宗士郎は真面目に答えた。
「ソレは無理だな。……以前、いろいろ試したんだが、折れるどころか刃こぼれ一つしなかった。」
「え?…えーと試したんですか?……何故?」
「余りに強力で頑丈な槍だからな。どこまで耐えられるか気になるだろ?そのうちムキになって、本気で破壊しようとした事があるんだ。」
さっき“借り物”だとか言わなかったかしら?と、ひろみは呆れて苦笑い。しかし納得した、槍に嫌われて当然だ。
……その時、葵がゆらりと立ち上がった。
「なぁぁんだ、簡単な話じゃないですか。葵がその槍をへし折って、シロを解放してあげます!」
いつの間にか自分の白い槍を握り締めて、……少し様子がおかしい。
「……この娘は槍を持つと人格変わるのか?」
「恥ずかしながら、まだまだ未熟者で、槍に精神を持って行かれやすいんです。代々伝わる家宝ですので、心配はいりませんが。少し強気になるだけ……、酔っ払っていると思って下さい。」
軽いな!?それでいいのか…。などと、とりあえず葵の事を無視する二人。
しかし葵は気にしていない様子。
それどころか……
「勝負!シロ!その槍へし折ってあなたに打ち勝てば、どっちもまとめて、私に服従よ!」
変な方向に話がズレている。




