閑古鳥の巣
ひとしきり笑った後、涙を拭いて三人は座りなおした。
「ところで、頼みがあるんだ……。」
と、宗士郎はきりだす。
「聞きましょう。」
ピクリと眉を上げ、彼女は一見冷ややかに応えた。
やはり責任のある身、安請け合いは出来ないのだろう。
「オレの素性についてなのだが、他の者には伏せておいて貰いたい。歳の事とか、いろいろ……つまり、その…、化け物だとは、知られたくないんだ。」
「シ、シロは化け物じゃないよ!」
葵は身を乗り出してそれを否定したが、ひろみは浅いため息混じりにそれを制した。
「そんな事でしたか……、分かりました。では、他言しない事を約束しましょう。ですが、葵の言う通りです。あなたはこの世を救った英雄。自分を貶めないで。」
彼女は優しく笑った。
「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ。しかし、“そんな事”とは、オレが何を頼むと思ったんだ?」
「あなたの状況から考えられる頼み事は二つです。…一つは“結界を解いてくれ”…かと思いました。まだお辛いのでしょう?残念ながらソレは出来ないのですけれど。」
「気付いていたか、だがソレを頼む気はないよ。この中でなら暫くは人として暮らせそうだからな。因みにもう一つは?」
「考えうるもう一つの頼みは…“結婚してくれ”じゃないかしら。コレはお断りしませんが、私にも心の準備というものが……。キャーっどうしましょう!?」
と言って勝手に赤くなった頬を押さえてもじもじする。
どこまで本気なんだか…、と、葵と顔を見合わせ、呆れてため息をつく。
「放っておこう。」
二人は苦笑いで頷きあった。
「さっきは有り難うな、葵。化け物じゃない…、って嬉しかったよ。」
「ううん、本当の事だから……。」
「オレなんかさっき“細い目”だなんて言ってしまったのに……、ごめんな、気を悪くしなかったか?」
「ううん、本当の事だもの。」
「うちの一族は皆こういう目なんですよ。」
と、帰って来たひろみ。
「確かに、オロチの奴もそうだった。……そう言えば山姥の目は気持ち悪かったなぁ。」
宗士郎の言葉に二人はピクリと反応した。
「「気持ち悪い!?」」
「あ、あぁ。身内を悪く言ってすまない。」
二人の勢いに宗士郎はたじろいだ。
「いえ、身内だなんて思ってませんから。それより気持ち悪い…とは?」
「あぁ、山姥にはな…、目玉がなかったんだ。まぶたもなくて、ぽっかりと黒い穴が二つあるだけなんだよ。」
心なしか声のトーンが下がる宗士郎。
驚くだろうと思っていたのに、この二人は“なーんだ”って顔をして何故かホッとした様子。
「驚かないんだな?まさか大巳一族では珍しくないのか!?」
「い…いえ、そういうワケでは……、私も初めて聞きました。…では山姥は目が見えなかったと?」
「ところが異常に見えているんだ。何処にいても、ずっと視られていた…。それが余計に不気味だった。」
三人は共に背筋がゾッとするのを感じた。




